10話
午前7時すぎ。
校門を飛び抜け、保健室へ向かう。
まだ開いていない。
職員室に飛び込む。
勢いよくドアを開けると朝早くから来ている先生たちがこちらを向いた。
「天海?」
霜田先生、なのはが!
「花咲、どうした。何だこの傷…。」
他の先生たちも続々やってくる。
先生、この写真が送られてきて…。
今までの状況を説明する。
「この写真、咳止め薬か?どれだけ飲んだのかが問題だな。」
「先生、保健室の準備できました。」
「病院連れていきますか?」
職員室はどんちゃん騒ぎ。
朝練の音が響く中、なのはは一向に起きない。
なんでこんなことになっているんだろう。
いつも近くに。ずっと居たのは私なのに。
なんで気付かなかったんだろう。
職員室に担任が入ってきた。
汗で濡れたおじさん。とてもじゃないがなのはに近寄らせたくない。
「何の騒ぎです?」
先生、なのはに近寄らないでください。汚いです。
「え?知る権利はあるでしょ、近寄らないからさ…」
ドタバタしながらなのはを担架に乗せ保健室へ連れ込む。
運の悪いことに保健室の先生は出張らしい。
「天海、お前も病み上がりなんだから無理すんなよ?」
完全に忘れていた。熱中症になったことを。
大丈夫です、背負って来れたし。
「持久力だけはあるんだな。」
顧問は話しながらなのはの腕を診る。
「しかし…。これは酷いな。」
かなり深い傷だ。
脂肪も少し見えている。
「とりあえず包帯巻いておこうか。」
不慣れな手付きで包帯を巻いていく。
「天海も大会前だから無理しがちだけどさ。花咲も演奏会前だからかなり無理してたんだろうね。」
昨日のプールの時、傷なかった。なかったよね、先生。
突然こんな傷だらけになるなんて、
「確かになかったな。新しい傷しかない。」
「ゆうき。」
なのは?なんでこんな…!
言葉が出てこない。
「ふーん、学校かぁ。夕希、私のこと心配してくれた?したのに学校連れ込むの?」
「花咲。後で病院行きだから。」
「構われたかっただけなのに。」
張り詰めた空気はまるでトゲのよう。
構われたくて傷だらけになった私の宝物。
心のガラスは今にも砕け散ってしまいそうだ。




