あきよしどう 祖父母の思い出
山口県の秋芳洞に行った子供の頃の断片的な記憶
近いと思っていたが、インターネットの路線検索で見ると意外にたどり着くのに時間がかかるという
記憶と現在のギャップ
思い出の記録
今にして思えば、祖父は乗り鉄もしくは時刻表鉄?
山陽線だったかしら
祖父母に連れられて
在来線に乗って
秋芳洞に行った
祖父母は国鉄を汽車と呼んだり
各駅停車を鈍行と呼んだり
言葉に風情があった
駅弁のプラスチックの緑茶セットがかわいくて
ペットボトルがはやる前の時代ね
大昔だけど日帰りだったような
国鉄の鈍行に乗ったような
急行か特急にも乗ったかしら
夏だというのに中はエアコン効きすぎのデパートみたいに涼しくて
秋芳洞の中は驚くほど広くて
帰りに眺めた一塊の岩山全体が空洞だったと聞かされて二度驚いた
お気に入りは
「とおせんぼう」
順路のど真ん中に
こつ然と立ちふさがる数十センチの下から延びるつらら
窓からフグのかわいいぼんぼりが
土産物屋さんにたくさんぶら下がっていたのは
どこだったかしら
今、インターネットの路線情報で検索すると
JRやバスを乗り継ぐ長旅で
やっとのことで秋芳洞の入り口
昔は在来線の接続が
もう少しスムーズだったのかしら
今のほうが便利になっていると先入観があるけれど
ちょっときつねにつままれた気分
あの頃の時刻表を調べてみたらわかるかな
祖父はいつもカバンにでっかい時刻表を2冊持ち歩いていたっけ
尾道に連れられて行ったこともある
足利尊氏のゆかりのお寺は浄土寺ですか
草鞋の形のお財布にくっつける飾りをお土産にした
関西へ向かうときに
12:06網干
始発に乗れば座れるといって
時刻表を調べてにっこにこ
じゅうにじろっぷん あぼし
今でも呪文のように耳の奥に残ってる
祖父は
帰るときには庭に咲いてるムクゲの花を一輪ずつ
孫に切って渡してくれた
お盆の送りの夜には
わざわざたいまつをつけて
お菓子を乗せた藁の船のお飾りを公民館に預けに行ったこともある
昔はこれを川に流したんだけどねって
教えてくれた
庭先で七輪の上で
鉄のやっとこの先に平たい丸っこいのがついたやつで
自家製せんべいを焼いてくれたり
お風呂は五右衛門ぶろで
下から薪と新聞紙で炊いていた時期もあった
井戸もあった
すいかをまるっと一個ぶら下げて冷やした
掘りごたつ
柱時計
豆炭練炭換気に注意
田舎の祖父母の家は
本当の夏休み
本当のお正月
本当のお彼岸があった
しずかに
記憶の底に
いつまでも
あの頃の時刻表を調べてみたらわかるかな
祖父はいつもカバンにでっかい時刻表を2冊持ち歩いていたっけ