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【36万PV感謝】罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~  作者: 水無瀬 霧乃
オレは、君の薬になる

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第295話 知らなかった痛み、知らなかった悦び

厚手のカーテンの隙間から、薄い金色の朝日が療養室の床に差し込んでいる。


私はシーツの温もりと、隣から伝わる規則的な寝息で目を覚ました。


ゆっくりと目を開けると、すぐ目の前にカシリア殿下の顔があった。


彼の目が、すでに開かれた状態で私をじっと見つめている。


「おはよう、リリス。今日、体の調子はどうだ」


彼の声は低く、そして驚くほど穏やかな響きを持っていた。


「……はい、今日は……」


私はどうにか声を出して、普通に答えようとした。


しかし、寝ぼけていた意識が一気にハッキリし始める。


肌に直接触れるシーツの感触。


私が今、何も着ていないということ。


そして、昨夜の暗がりの中で交わされた、彼との激しく甘やかな情事の記憶が、頭の奥から熱を帯びて蘇ってきた。


「きゃっ!?」


思わず甲高い悲鳴が漏れる。


私は反射的に両腕を伸ばし、厚い布団を頭の先まで引き上げた。


視界が暗闇に覆われるが、顔がカッと熱くなり、血が上っていく感覚を抑えることはできない。


布団の中で、私の心臓がドクドクと激しく鳴り始める。


ただの逢瀬ではない。


私が、初めてすべてを彼に委ねた夜。


触れられるたびに、自分の内側が壊れていくような感覚と、同時に満たされていく奇妙な幸福。


知らなかった痛みと、知らなかった悦び。


そのすべてを、彼は一つ残らず刻み込んできた。


「ご、ごめんなさい、わ、わ、わ、私は……っ」


公爵令嬢として、そして婚約者として、これほど恥ずかしくて醜態を晒すようなことはない。


私が彼におねだりしたこと、そして彼から与えられた圧倒的な快楽。


それらの記憶が頭の中を埋め尽くし、言葉がまったく出てこなくなる。


恥ずかしさのあまり頭の中が真っ白になり、舌がもつれてまともに言葉を紡げない。


「ぷっ……ハハハッ」


布団の外から、カシリア殿下の朗らかな笑い声が聞こえた。


彼がお腹の底から、これほど無防備に笑うのを聞いたのは、今までで初めてだった。


布団の端が外側からゆっくりと引かれ、私の視界に再びカシリア殿下の顔が見えた。


彼の口角は大きく上がり、瞳には深い愛情とほんの少しの悪戯っぽさが混ざっている。


「リリスは、昨日も今日も、すごく可愛いな」


彼の発した『可愛い』という言葉が、耳の奥から脳まで直接揺さぶってくる。


私は両手で顔を覆い、指の隙間から彼を見返した。


「で、殿下……からかわないでください……っ」


カシリア殿下は私の首の横に両腕をつき、その顔を私の顔へと近づけた。


「からかってなどいない。オレは事実を口にしただけだ」


彼の高い体温が、布団越しに私の体へと伝わってくる。


殿下は片手を伸ばし、私の顔を覆っていた両手を優しくどけた。


彼の長い指が、私の熱を持った頬を撫でる。


「体は痛まないか。昨夜は、オレも少し……余裕がなかったからな」


彼の言葉に、顔がまた熱くなる。


「い、痛みは……少しあります。それと少し……体が重い、ですわ」


私は視線を彼の胸元へと逸らし、掠れた声で答えた。


薬が切れたときのあの恐ろしい苦痛と恐怖は、今の私にはすっかり消え去っている。


彼と過ごしたことによる心地よい疲れと、絶対的な安心感だけがする。


カシリア殿下は私の桜色の髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。


「そうか。なら、今日は一日、この寝台の上で休んでいなさい」


「ですが、書類の整理が……」


「オレがやる。リリスは、ただオレの腕の中で息をしていればいい」


彼の腕が私の腰に回り、私を彼自身の体へと引き寄せる。


引き締まった筋肉とがっしりとした骨格の感触が、私に彼の存在を強く感じさせる。


「……殿下は、本当に……甘やかしてばかりです」


私は彼の胸板に額を押し当て、小さな声で呟いた。


「当然だ。君はオレのものだ。」


カシリア殿下の言葉には、揺るぎない独占欲が込められている。


私は彼に全てを委ね、彼の与える熱と愛情に包まれて生きている。


「はい……私は、殿下のものです」


私の両腕が彼の背中へと回り、その服の生地を軽く握りしめた。


カシリア殿下は私の後頭部を撫で、静かに頷く。


「ああ。ずっと、ここにいてくれ」


窓の外の光が徐々に強さを増し、療養室内の空気を暖めていく。

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― 新着の感想 ―
どんな噂が流れているかを知っていてそれを事実にするの…正気ですか殿下~! 本人が噂を聞いたときどうなるか怖いんですが。
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