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第225話 幸せの実とは

私の目から水滴が溢れ出し、頬を伝って顎からボタボタと机の上に落ちていく。


胃の底に沈んだ金色の錠剤が多幸感と明晰な理性を強制的に引き出しているにもかかわらず、生理的な涙の流出を止めることができない。


私は両手で顔を覆い、指の隙間からこぼれる水滴をただ見つめていた。


ナミスは数歩進み出て、机の端に置かれた羊皮紙を取り上げた。


彼の栗色の瞳が、ロキナの筆跡が並ぶ文面を上から下へとゆっくりと移動する。


読み終えた彼の顔から表情が抜け落ち、手にした羊皮紙の端を握る指先に強い力がこもった。


私が生き延びるために練り上げた冷酷な換金計画が、遠く離れた王都にいる侍女の純粋で無垢な善意によって、見事に粉砕された事実。


彼はその羊皮紙を静かに机へ戻し、私の前で片膝をついた。


「リリス様」


ナミスの声は低く、そして重い決意を帯びていた。


「僕の親衛隊長としての地位、所有する武具、そして与えられた名馬。それらをすべて売り払います。さらに、僕の身分を担保に金貸しから最大限の現金を借り入れます」


彼は私の膝元に視線を落としたまま、言葉を続ける。


「そうすれば、三百金貨には届くはずです。僕のすべてを、どうかお使いください」


彼の言葉は、主君の窮地を救うための絶対的な忠誠と自己犠牲の表れであった。


私のために、彼自身の未来と誇りをすべて金貨に換えて差し出すという提案。


「駄目よ、ナミス。そんなことをすれば、私は完全に終わりだわ」


「なぜです。僕のすべてを差し出せば、この一ヶ月は確実に……」


「金額の問題ではないの」


私は机に落ちた水滴を指先で拭い、言葉を紡ぐ。


「闇組織は、私がタロシア公爵令嬢であることを知っている。公爵家にとって三百金貨は即座に用意できる端金。それなのに、護衛の騎士が全財産を投げ打ってまで支払いをしようとする姿を見せれば、彼らは確信するわ」


私は息を深く吐き出し、彼の顔を見た。


「私が、『公爵家には絶対にこの事実を知られたくない』という最大の弱点を抱えていることを。彼らはそれにつけ込み、次は一錠百金貨、一千金貨と要求を釣り上げてくる。ましては政治的な要求もやってくる。一度でもその弱みを見せれば、私は一生、彼らの底なしの搾取に付き合わされる操り人形になる」


ナミスは膝をついたまま沈黙し、両手を固く握りしめた。


論理の前に、彼の献身は行き場を失っていた。


静寂が室内に降り積もる中、私の視線は自然と机の引き出しへと向かった。


あの中に、あの男が置いていった三十錠の金色の薬が入っている。


極彩色の視界の中で、一つの巨大な疑問が私の脳裏に浮かび上がった。


「……ナミス」


「はい」


「あの薬。一錠十金貨という異常な価格で取引される『幸せの実』。あれは本当に、私の鬱症状を抑えるためだけのものなのかしら」


私の声は平坦だが、鋭い刃を含んでいた。

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