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9話 崖下洞窟のボス

 とうとう洞窟の奥に辿り着くと、そこは海水が流れ込んでくる場所だった。

 海水の中に所々岩がのぞいている大変歩きにくい場所で、飛んで岩を移動しなければ海に落ちてしまう。

 そこに居座っていたモンスターは大きなタコだった。

 大きなタコは海の中に潜りながら、頭と触手だけを出してこちらを睨んでいる。

 中々戦い辛いモンスターが出てきた。


 私は久しぶりに剣を抜いて構えた。

 片手に剣を、もう一方の手に銛を構えて戦う。

 タコは触手を伸ばして、私に攻撃を仕掛けてくる。

 私は海に落ちないように岩を飛んで触手を回避する。

 いくつもの触手に追いかけられて、常に岩を飛びつつ触手に剣を振るった。


「っ!!?? ――――――っ!!」


 剣に斬られて触手が一本飛んでいった。

 タコは痛みか怒りなのか、赤くなって触手をうねうねとくねらせた。

 タコは怒りが収まらないのか、次は口からスミを吐き出した。

 私がスミを避けると、周りの岩と海水が黒く染まっていく。

 スミで染まった岩は滑って動きにくい。

 私がスミを被ってしまうと、視界を防がれて途端にタコの触手に捕まってしまうだろう。

 更に動きが増した触手が私を襲って来た。

 

 私は触手を剣で斬って、数を減らしつつタコに近づけるようにタイミングを図っていた。

 スミと数本の触手を躱しつつ触手の数を減らして消耗を図り、触手の数が減って隙が出来た時に飛び上がってタコの脳天に銛を突き刺した。


「っっ!!! ――――――っっ!!!!!」


 タコは悶え苦しんで触手を暴れさせると、私の身体に絡み付いてきて海に引きずり込もうとしてくる。

 流石に海に引きずり込まれるのはまずいと、銛を手放して剣で触手を斬りつけるが、いくつもの触手が絡み付いていて容易に引き離すことは出来ず、海に引きずり込まれてしまった。


 海の中で息が出来ない状況に焦りが募る。

 海の中はタコの方が有利だ。

 タコの脳天に銛を突き刺した攻撃は致命傷だったと思う。

 動かない身体でタコの脳天に突き刺したままの銛を再度掴み直すと、力を入れて更に銛を脳天に押し込んだ。

 タコは触手を暴れさせながら、それでも私を離さずに海の底へと引きずり込んでいった。

 私もタコの触手から外れようと奮闘したが、次第に息が苦しくなって意識を失った。






 動かない身体が水の中でゆらゆらと揺れている。

 

 意識は希薄で、今にも眠りそうだった。

 

 誰かが私の頬に触れて口に何かを入れた。

 

 丸いそれは私の口に入り、喉に到達すると弾けて消えた。




 すると今まで動かなかった身体が動き、意識がはっきりしてきた。

 海の中にいると言うのに息が苦しくない。

 気が付けば海底に沈んで倒れていた。 


 海流の流れに揺られながら上を見ると、遠くの水面から太陽の光が射しこんでいる。

 周りには魚が泳ぎ、岩に張り付くワカメが揺れている。

 海底は静かで、波に揺られて穏やかだった。 


 すぐそばの海底に大きなタコが脳天を銛に突き刺されて息絶えていた。

 そして私の目の前に心配そうにこちらを見てめている人魚がいた。


 ……そう、人魚である。

 上半身が人間で、下半身が魚の尾になっている女性の人魚がこちらを見ていた。

 

「アァァ――――アァ――――ァ」


 彼女は何か喋っているようだったが、私には波の音のような反響しているような音にしか分からなかった。

 言葉が分からないと首を振ると、彼女は私の首を触れながら身振り手振りで死んでいるタコや私を指差して説明してきた。


 人魚の彼女は良くこの洞窟を使っていたようだ。

 しかし大きなタコとモンスターたちが住み着き始めて使えなくなった。

 困っていた所に私がモンスターと大きなタコを倒しながら海底に沈んでいくのを見た。

 彼女は急いで私に人魚の力を使って、水の中でも息が出来るように助けてくれたようだ。


 彼女が一生懸命説明した大まかな内容はそんなところだった。

 説明が終わると彼女は私の手を引いて泳ぐと海底から水面に連れて行ってくれた。


「ゴホッゴホッ」


 海の中から出るとそこは先程まで大きなタコと戦っていた洞窟の奥だった。

 岩に乗り上げて空気を吸うと息苦しさを感じてせき込むと、口から丸い透明な物が出て来た。



〈人魚の泡〉

 水中での呼吸可能、行動向上



 これのお蔭で水の中でも息が出来たようだ。

 私は水面から顔を覗かせている人魚の返そうとすると、人魚はそのアイテムを私にくれた。

 タコを倒した報酬なのだろうか。

 

 私は全身びしょ濡れでタコと戦った後で疲れていた。

 さっさとこの洞窟から出て村に戻ろうと、人魚に別れの挨拶をすると彼女は手を振って海に戻って行った。

 疲労でフラフラとする身体を奮い立たせて、洞窟を出て砂浜を通り漁村に戻ると空き家に直行して服を脱いで裸になるとベットに倒れ込んで意識を失うように眠った。

  

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