5話 群れるモンスター
森を抜けると草原が広がり、大きな川が流れる先に町が見えた。
街道沿いに進んでいると、モンスターが出現した。
モンスターはウルフの群れだ。
奴らは2、3匹で徒党を組んで私に襲って来た。
実は森でモンスターを倒している内にレベルが7になっていた。
幸運の尻尾を手に入れてから、レベルが上がるのが速い。
装備してもいないのに、入手しただけでアイテムの恩恵を受けていることに驚いている。
ウルフは連携を取って速さで攪乱して襲って来たが、すでに私のスピードの方が速くなっていた。
ウルフのスピードにも十分追いつける速さで、的確に攻撃すると一撃でウルフは両断されて倒れた。
ウルフが消滅すると7Gのお金とウルフの牙、毛皮が手に入った。
他にもホークやプレーリードックなど複数の集団で襲って来るモンスターが多くなった。
ホークからは鉤爪と尾羽が、プレーリードックからは前歯とお肉が手に入った。
モンスターを倒し続けてお金と素材は潤沢になったが、武器防具が心許なくなってきた。
武器は青銅の剣を使っていたが、刃毀れが見られるようになって性能が落ちた。
革の鎧もモンスターによる攻撃で、傷や破損が目立つようになった。
他にもホークなどの空を飛んでいるモンスターがいちいち空から降りて来るのを待ったり、勝てないと見ると逃げて行くモンスターに対して遠距離攻撃する手段が欲しくなっていた。
次の町に辿り着いて門を通って町に入ると、街中はそこそこ賑わっていた。
この町にも少ないながらもプレイヤーの何割かが、始まりの街から辿り着いているようだった。
群れで襲って来るモンスターが出始めたことで、一人でモンスターたちと戦うことに限界を感じているプレイヤーもいるかもしれない。
この町でパーティーを見つけようと、きょろきょろと周りを見ている冒険者が何人か見られた。
私はマントのフードを深く被って人に見られないように俯きながら町中を歩いた。
頬の印が何なのか分かるまでは、不要に人に見せるべきではないと考えている。
道具屋で消費したポーションや毒消し薬を買うと、ついでに布を買って顔下半分を覆うように巻いた。
これで不審人物ではあるが、印を見られなくなった。
その後、ギルドに行ってモンスターの素材を売ってお金を換金すると近くの宿屋に泊まった。
相変わらず宿は安宿で食事は安い物を頼んだ。
お金は大分溜まったが武器防具を新調するなら、すぐになくなりそうだったからだ。
部屋も食事も始まりの街と変わり映えしないものだった。
翌日宿屋のベットから起きると、朝食を食べた後に町中に出た。
この町は始まりの街ほど広くはないが、ギルドや武器屋、道具屋と店が並んでいる。
早速武器屋に行くと、商品の武器を物色する。
ナックル40G、両手斧120G、槍90G、鉄の盾70G、短剣20G……等々。
始まりの街より品数が増えていた。
しかし防具類の商品が見られない。
「この店は防具は売っていないのか?」
「あ? この町には防具屋と服飾店がちゃんとあるぞ。買うならそっちに行きな」
「なるほど、分かった。それと使っていた武器が刃毀れしてしまったんだが、これを修理することは出来るか?」
「見せて見な。あーー、これはもうだめだな。新しく買い替えた方がいいぐらいだ。青銅の剣でこの有様なら無難に鉄の剣をお勧めするぞ」
「ならそれを一つ貰おう」
「毎度あり。青銅の剣はどうする? 二束三文だが、こっちで買い取れるぞ」
「じゃあ、そっちもお願いする。それと遠距離武器を探しているんだが、その店のお勧めは何だ?」
「お前さん魔法は使えないのか? 使えないならうちの店には弓矢ぐらいしかないぞ」
「魔法は使えないな。なら弓矢も買おう」
青銅の剣を5Gで売って、鉄の剣を100G、弓矢30Gで買った。
武器屋を出た後は防具屋を探して町を歩いた。
しばらく町中を歩いて防具屋を見つけると、隣の店は服飾店だった。
防具屋で商品の防具類を物色する。
魔法のマント120G、部分鎧70G、道着30G、忍び装束60G……等々。
防具は無難に革の鎧を修理してもらった。
修理代に20Gかかっているから買い替えた方がいいか悩んだが、革の鎧に不満はなかったので買い替えることは止めた。
修理期間に1日かかるそうなので、防具を預けて隣の服飾店にも行った。
服飾店は靴や帽子、防御機能のないただの服などの商品が並んでいた。
中には仮面などもあったが明らかに舞踏会や催し物用の派手に装飾された仮面で、これを顔に付ければ逆に悪目立ちすること間違いなしだった。
無難に布を巻いていた方がいいかと、頬の印の対応はそのままにした。
その日は買い物をするだけで終わった。
武器防具で散財してしまったので、また切り詰めて生活しないといけない。
宿屋に帰って食事を済ませると、部屋に戻って寝た。
翌日も変わり映えしない日々だ。
防具を修理に出しているので、モンスターを倒しに行けない。
物珍しい食べ物や品がないだろうかと、暇つぶしがてら市場へ向かった。
市場に向かうと野菜や肉の塊が無造作に並んで売っていた。
全然知らない野菜や知っているような野菜を見かけた。
肉は解体された状態でどれも同じような肉の塊に見えたが、色が赤肉の他にピンクや紫の色の肉を見つけた時は食べる気がしなかった。
今後野宿することもあるだろう。
野宿するなら焚火で自分で料理をしなければならない。
しかし料理をするには鍋やプライパン、調味料、包丁などを最低限買わないといけないが、更なる消費は今はきつかった。
結局野宿用の料理の練習としてパンと干し肉と塩を買って、今度町の外に出る時に試してみようと思う。
屋台でプレーリードックの焼肉を売っていたので、買って食べると弾力があって不思議な味がした。
その後町を歩いて回り町はずれの人気のない空き地を見つけると、木が立っている場所から数メートル離れて買ったばかりの弓矢の練習をした。
最初は構えも飛ばし方も分からず、矢を木に届かせることも出来なかった。
弓道の構えやアーチェリーの構えをうろ覚えに思い出して、真似して練習を続けると次第に何とか形にはなっていった。
その日はやっと矢が木に刺さるようになる頃には夕暮れになっていた。
弓矢の練習を終えて宿屋に戻ると、食事を済ませて眠りについた。