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1話 ゲームの始まりは何でも楽しいものでしょ?

 私がそのゲームを始めたきっかけは些細な事だった。

 何かの広告のCMに惹かれて、久しぶりにゲームをしようとダウンロードしたのだ。

 ほんわかした雰囲気と如何にもファンタジーという世界観が入り込みやすくて気に入っていた。

 子供や女性にも気軽にプレーし易い作りをしているゲームだった。

 

 私はあまりゲームに詳しくないし上手でもない。

 難しいゲームは途中で止めてしまうこともよくあった。

 それでも現実にはない世界観に惹かれて、新しいゲームに手を出してしまう。

 今回のゲームもどこか途中で行き詰って止めてしまうだろうと予感しながらも、所詮暇つぶしだと軽い気持ちで始めた。


 


 そのゲームはよくあるファンタジーの世界観でモンスターを倒す冒険者や生産者になれる自由度の高いゲームだった。

 ゲームは始まりの街からスタートする。

 好きなように容姿を作ってからゲームを始めた。


 始まりの街は西洋のようなレンガ作りの建物が立ち並ぶ街並みは、珍しくて散歩するだけでも楽しい。

 大きな広場の噴水に降り立つと、周りには様々な人々が賑やかに喋りながら歩いている。

 皆始めたばかりのゲームを楽しもうと、ワクワクとしているのが雰囲気でわかる。

 友達と一緒に始めた人は、すでにパーティーを組んで話し込んでいた。


 私は勿論一人で始めたので、一人ぼっちで冒険を始めた。

 私の恰好は荒い生地のワイシャツとズボンと靴に、腰に付いた小さな袋に入っている所持金100Gだけだ。

 このお金で武器やポーションを買って、外でモンスターを倒しに行こうか。

 先にギルドに行って冒険者になってから依頼を受けるのもいいだろう。

 最初の冒険の始まりと言うのは、いつもやっていて楽しい。

 ワクワクとする気持ちが溢れてくる。


 逸る気持ちを抑えながら街中を通り過ぎて門から街の外に出ると、街周辺に麦畑が広がり、更に先に草原と森と山が見えた。

 麦畑には農夫の人々が仕事に精を出している。

 草原にはモンスターと戦っているプレイヤーと思われる冒険者の人々がいた。

 彼らはパーティーを組んだり、一人でモンスターと対峙して剣や槍や杖を持って戦っていた。


 私は武器になる物を買わずに街の外に出てきてしまったので、地面に落ちている物を手当たり次第拾って集めた。

 アイテムとして拾えたのは小石、木の実、小枝、木の棒、小麦、藁などだった。


 アイテムを拾い集めていると、スライムが出現して私に襲って来た。

 私は拾ったアイテムから唯一武器として装備出来た木の棒を持ってスライムに対峙する。

 スライムはポンッと飛んで私にぶつかる。

 私は衝撃を受けたが痛みを感じるようなことは無かった。


 次に私は木の棒を構えて、スライムに殴り掛かった。

 スライムは碌に逃げもせずにポコポコと5、6回殴られるとスゥーと消えてしまった。

 スライムが消えて現れた3Gのお金とスライムの玉というアイテムを手に入れた。


 木の棒でもスライムを倒すことが出来たので、アイテムを拾い集めながらスライム退治を5、6回続けると簡単にレベルが2に上がった。


 お金がちょっと溜まった事と戦闘の感触も確かめられたので、満足して街に一度戻ることにした。

 街に戻ると何やら周りの人々が騒がしいが、気にせずに武器屋を探して見つけると棚に並べられていた商品の武器を見て回る。

 鉄の剣100G、青銅の剣50G、魔法の杖70G、鉄の鎧100G、革の鎧50G、弓矢30G、青銅の盾30G ……等々。


 その中で私は一番安い訓練用の木刀10Gを買った。

 理由は特にない。単純にお金をケチっただけだ。

 次に道具屋に行くとスライムの玉が売れたので買い取ってもらって、ポーション1個5Gを5個買った。

 

 再び街を出て草原に戻り、訓練用の木刀を装備してスライムに戦いを挑むと2撃で簡単にスライムを倒せた。

 調子に乗って、もっと強い魔物と戦おうと草原を歩き回るとラビットが出現した。

 ぴょんぴょんと跳ねながら私の振るう木刀を躱し、後ろ足や頭突きで攻撃を仕掛けてくる。

 私はラビットの攻撃を受けるごとに衝撃で身体がよろめいて、動きが鈍くなって体力が減っていった。

 私は苦戦しながら何とかラビットを倒すと5Gとラビットのお肉が現れた。

 その後飛び跳ねるラビットに慣れるために数回戦いを挑み、体力が減るとポーションで回復した。

 



 夢中でモンスターと戦っていると、時間を忘れて熱中してしまった。

 ラビットを数匹倒せるようになると、既に数時間もプレーしていた。

 そろそろ一旦止めようと、ステータスを開くがホームボタンがない。

 ホームが無ければセーブも出来ないし、このゲームを止めることも出来ない。

 運営への問い合わせや外部への連絡も全部ホーム欄から繋がっていた。

 これは強制的に起きるまで待つしかないのかと考えながら街に戻ると、そこには混乱したプレイヤー達がいた。

 

 やはり皆ホームボタンが無くなっているようで、ゲームから出る手段がないらしい。

 どうにかしようと冷静に話し合っている集団や広場で困惑している人、怒っている人、不安そうにしている少女、広場から立ち去る人々とプレイヤー達が不測の事態に混乱しているのが分かった。

 イベントやドッキリでもないようだし、運営にも連絡がつかないようだった。


 さて、私はどうしようか?


 ここに居ても出来ることはなさそうだった。とるべき行動も分からない。

 もう一度モンスターを倒しに外に出る気も起きずに、一度宿屋で寝ることにした。

 宿屋で寝て起きたら、不具合によるトラブルだったと連絡が来ることを願ったのだ。


 近くの宿屋に入ると、一泊5Gで宿泊出来たので泊まった。

 ビジネスホテルのように狭い部屋で、ベットと机と椅子しかない場所だったが寝るだけなら十分だ。


 出来れば翌日にはゲームから出れることを願って眠りについた。

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