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由美の正体。そして母の言葉。




「やっと見つけましたよ。ユミル様」


ユミル?一体誰のことだ。明らかに由美に話しかけているようだが、俺の聞き間違いか?

そして男はゆっくりと由美に近づいていく。

が、何か嫌な予感がした俺は、さっと立ち上がり庇うように由美の前に立ちその男を睨みつけた。


「お前ら、何者だ」


俺は睨み続けながら男に問う。

すると男は、はっと何かに気づいたように一歩下がって、右手を胸に当てながら俺達に一礼した。


「これは失礼致しました。私はユーディル・グレイロード。アルヴァロン王国の副騎士団長兼執事をしております。そしてそちらの者は見習い騎士のジェイネール・ブラッドファングでございます」


そしてジェイネールと呼ばれる男も俺たちに一礼した。


アルヴァロン?聞いたことない国名だな。

地球のどこにあるんだろうか。いや、そもそも地球に存在する国なのか?

変な扉からいきなり出てきたし、2人とも牙が生えていて耳が長い。

とても人間とは思えない。

ユーディルの方はコスプレした人間だと言われてたら納得出来そうだが、ジェイネールの方は体が明らかに人間じゃない。


まぁその話は置いといて、最初は怖い奴らかと思ったけどこの人たち意外に礼儀正しいぞ?

やっぱり人は見た目で判断しちゃだめだな。

まぁ、たぶん人間じゃないけど。

これは失礼な態度を取ったかもしれないな。


「俺もいきなり睨みつけて悪かった。俺は剣 広夢。そしてこいつは妹の由美だ」


「おや、そちらの方はユミル様のはずですが」


聞き間違いじゃなかった。やはりこの男は由美のことをユミルと呼んでいる。


「いや、こいつは由美だ。人違いじゃないのか?」


「そんなはずはありません。確かユミル様は腹部に王家の紋章が刻まれていたはず。それを確認して頂ければ私が言ったことを信じていただけるでしょう」


「・・・・・・あっ」


由美が何かに気づいたように突然自分のお腹の右下を抑えた。

そういえば小さい頃、由美と一緒に風呂に入っていた時に見たことがある。

へその右下に丸い不思議な痣があったのを。


「由美、もしかして・・・・・・。」


「紋章があるようですね。やはり私の推測は正しかった!あぁ!アルヴァロン陛下!遂に私は、ユミル様を見つけ出したのです!これで我が国は救われる!」


「ち、ちょっと待ってくれ!確かに紋章はあるみたいだけど、お前ら異世界人だろ?由美がお前らと同じ異世界人で、そのユミルってやつだとして、どうして地球にいるんだよ。それに俺と由美は兄妹だ。由美が異世界人なら俺も異世界人ってことか?それに母さんだって・・・・・・。」


「それについては今から説明致します。

長くなりますが、よろしいですか?」


「・・・・・・あぁ、問題ない。話してくれ」


ユーディルの話はこうだった。

16年前、由美、いやユミルがまだ母であるエレナ女王のお腹にいた頃、エレナ女王が突然謎の病にかかった。

多くの医療系魔術師に診てもらったが、それがどのような病気なのか、どうすれば治るのか分からなかった。

唯一分かっていたのは、女王は弱りきっていて命はもうそんなに長くないということ。

女王は、お腹の子だけでも助けたいと頼んだが、女王に子供を産める程の体力は残っていなかった。

それでもどうにかしてお腹の子を助けたいと、女王は夫である国王レオ・アルヴァロンに相談した。

そして王は、国一番の魔術師にどうにかならないかと依頼し、魔術師はある方法を提案する。

それは、お腹の子を別の女性のお腹に移すというものだった。

それを聞いた王と女王は少し悩んだが、子供を生かすためならと承諾した。

そしてここからが重要だ。

その赤ちゃん、ユミルの移り先が母さんのお腹だったんだ。

初めは女王の妹であるフィーナのお腹に映るはずだったらしい。

ではなぜ別の世界にいる母さんのお腹に移ってしまったのか。

それは、母さんが王族と同じくらいの魔力を保有していたからだそうだ。

でも、王族と同じくらいと言っても本物の王族よりは魔力は少ない。

通常、王族の子を産むためには膨大な魔力を使うため、王族と結婚できるのは魔力が多い女性だけだった。

その魔力が多い女性達でさえ、子供を産む時にほとんどの魔力を使いきってしまう。

そして、魔力が足りない場合は生命力を代わりに使うらしい。

だから普通の王族よりも魔力が少ない母さんは、ユミルを産む時に生命力まで使い果たしてしまい、死んだ。ということだった。


「・・・・・・そんな。私を産んだせいで、お母さんがっ!」


ユーディルの話を聞いた由美は、泣き崩れた。


「ユミル様のせいではありません。全ては我々の責任。ユミル様が悔やまれることなど・・・・・・。」


ユーディルは由美を慰めるが、由美は母さんが死んだのは自分のせいだと泣き続ける。


(だけど、それは違うぞ由美。母さんは。)


「母さんは、由美のことを愛してたんだ」


「・・・・・・えっ」


俺の言葉に由美は泣き止む。


「母さんは、お前を愛していたからこそ産んだんだ。あの時、俺はまだ小さかったけど覚えてる。母さんは死ぬ前に言った」


『由美、貴方が成長する所をこの目で見たかった。けど出来ないの。でも、天国からいつまでも見守っているからね。愛してるわ』


「うわぁああああああああぁぁぁん!!」


母さんの言葉を聞くと同時に由美は再び泣き出した。

(母さん。母さんの言葉、ちゃんと由美に伝えたぞ。)


『ありがとう』


頭を撫でられながら、突然誰かにそう囁かれた気がした。


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