いつもと変わらぬ日常
円卓の騎士王アーサー。
ブリテンの王として民をまとめ、全世界の三分の一を支配しブリテンを世界一の国にまで繁栄させたという歴代の王の中でももっとも素晴らしい王。
そして、かつてブリタニアを攻めてきた100万もの魔物の軍勢の大半をたった1人で駆逐し、誰にも倒せないと思われていた魔王を、仲間と共に見事倒したという伝説の英雄。
誰でも一度は憧れる最強の称号。彼ほどその称号に相応しい者など他にいないだろう。
そして、アーサーが所持していたエクスカリバー。
神が造りし聖剣にして、どんな魔物でもいとも簡単に斬ることができるほどの斬れ味をもつ伝説の剣。
持ち主のアーサーと共に成長し、アーサーが死んだ直後に力を失い消滅した。
武器と言うよりもアーサーの分身という表現の方がこの剣には相応しいだろう。
「アーサーにエクスカリバーかぁ・・・・・・、かっこいいな!俺もチートみたいな力を手に入れて魔物をなぎ倒したいぜ!」
・・・・・・っていい歳して俺は一体何を考えているんだ・・・・・・。
いい歳・・・・・・と言ってもまだ17歳だが、流石にこの年でこんな厨二病みたいな思考はやめた方がいいだろう。
そうは思っているんだけど、やっぱり男の子ってこういう英雄とかに憧れちゃうんだよね! てへっ!
「・・・・・・」
何やら背後から冷たい視線を感じる。
その視線が気になり、恐る恐る後ろを向くと・・・・・・。
そこには制服を着た黒髪ツインテールの美少女が!
なんということでしょう!黒髪に黒目というまさに日本人を代表したかのような見た目にも関わらず!ツインテール!だがしかしそのツインテールがありえないほど似合っているっ!
そう!本来、日本人の髪型はツインテールなのだと言わんばかりに!
この美少女は一体誰なんだ!?
まぁ、俺の妹の剣 由美なんだけどね!
こんな美少女が妹だなんてお兄ちゃん感激!
「・・・・・・広にぃ。ニヤニヤしながら何を読んでるのかな?まさか、またいかがわしい本を読んでるんじゃないよね?」
由美は俺の方へずんずんと近づき、俺が読んでいた本を取り上げた。
「ゆ、由美!それは決していかがわしい本じゃ!」
「黙ってて!」
「あ、はい・・・・・・」
普段は優しいくて可愛らしい妹なんだけどな・・・・・・
昨日、部屋でこっそり全男子の聖書を読んでいたらいきなり由美が部屋に入ってきて、俺が全男子の聖書を読んでいるのがバレてしまって・・・・・・。
それから由美はその本達を全て捨てて、自分の部屋に閉じこもってしまった。
その後、俺は由美の部屋の前でもうあんな本は読まないと必死に謝ったのだが、昨日はあれから一切口を聞いてくれなかった。
そして今日、やっと由美が話しかけてくれたと思ったらまた疑われると・・・・・・。最悪だ。
「どれどれ、題名は・・・・・・アーサー王物語?
中身は・・・・・・普通じゃない」
そう言いながら由美は本をぽいと俺のベッドに投げた。
「昨日由美の部屋の前で誓ったろ?俺はもうあんなの読まないって。聞こえなかったか?」
「ううん、聞こえてた。・・・・・・でもやっぱり不安で・・・・・・。ごめんね、広にぃ。」
由美は悲しそうな顔で俺に謝った。
「気にすんなって!兄ちゃんは由美に分かってもらえただけで嬉しいよ!」
「あたし広にぃのことを信じてあげられなかった!あんなに必死に誓ってたら嘘じゃないって分かるはずなのに、あたし最低だ・・・・・・」
今にも泣きだしそうな顔の由美。
そんな顔しないでくれよ。兄ちゃんまで悲しくなってくるだろ。
「あれは兄ちゃんが悪かったし由美が気にすることじゃないぞ!それに、兄ちゃんは由美が笑ってる顔が好きだからさ、元気出してくれよ!」
こんないい妹を泣かせたら罰が当たっちまう。
これからはもっと由美のことを大切にしようと俺は心の中で誓った。
「・・・・・・お兄ちゃん。うん!やっぱりお兄ちゃんは優しいね!」
いつもの明るい由美に戻ったみたいだ。
良かった。やっぱり由美は笑ってる顔が一番だな。
「皆に優しいってわけじゃないぞ。俺は由美にだけ優しくなれるんだ。」
実際、俺は今まで由美以外の女に優しくしたことなんてない。
そもそも現在学校で孤独生活満喫中の俺は、優しくするも何もまず親しい女子がいないんだよな。
「広にぃったらまたそんなこと言って。
ほら!早く支度しないと学校遅れちゃうよ!」
「そうだな。さっさと支度を終わらせて学校に行こう!」