67食目、レイラの兄
レイラを除くドロシー達ウェイトレスに片付けをしてる中、カズトとレイラは王様が話があると客がいない個室の扉に使用中と看板を掛けて、部屋の中には王様の他に王妃様と護衛の騎士隊隊長がいる。
「うむ、揃ったな。ゴホン、先にお礼を言おう。先ずはこの度のご馳走誠に美味であった」
城の謁見みたくカズトは膝をつき頭を垂れ、王様のお礼の言葉を聞く。態々、個室でやらなくてもとカズトは思うが王族の意地があるらしい。
「有り難き幸せ」
決まった文言を言うと━━━
「次にユニを貰ってくれて有難いと思う。アイツは強すぎたのだ。強すぎたせいで嫁ぐ先も見付からず、あわよくば婚期を逃し一生独身であっただろう。
そこで現れたのが、そなた勇者カズト殿だ。自分より強き者が現れた事で一緒にと歩いて行ける、そう思っただろうな。ユニを貰ってくれて本当にありがとう」
この国のトップがカズトに頭を下げる。ここにいる者達は、まさか王様が頭を下げると思っていなかったらしく慌てふためく。
「お、王様頭を上げてください」
カズトも王様が頭を垂れた事に慌てる。親しく話す事は合っても頭を下げられた事は皆無に等しい。今この一瞬だけ王様は王族という立場よりも親(親ではないが)の立場を取ったということか。
「そう申されて感謝する。次が本題なのだが、カズト殿に依頼を頼みたい」
普段ならC級冒険者から受けられる普通の"指名依頼"に聞こえるが、王族それも王様直接に依頼を指名される事はそうそうある事ではない。
光栄の事であるし、この依頼を成功すれば冒険者としての箔がつき一気に有名になる程だ。一般冒険者なら100%受諾するが、カズトには自分の城である店があるのだ。勇者として世間に知れ渡ってるし受ける旨味がほとんどない。
「それを断る事は出来ますか?」
旨味がないのに、受けるバカはいないと判断し断ろうとする。
「うっふぉふぉ、面白い事を申すのぉ。レイラとユニを嫁に差し出したのに、断ると申すのか。あんっ」
実の娘と部下を折り合いに出し、カズトが拒否出来ないよう仕向ける。
「お父様、カズトに迷惑を━━━」
「いや、良いんだ。レイラありがとう」
レイラが本気で怒るのを止める。いくら、ミミの防御魔法が店に掛かっていてもただでは済まないだろう。それ故に止めた。
それに騎士隊隊長がレイラの怒気にビクビクと震えていた。後でレイラに聞いたが騎士隊隊長の名前はビィト・レビューンソン━━━━青龍隊隊長で風魔法の使い手だそうだ。
「お受け致します。それで、依頼の内容がまだですが?」
「慌てるな。なに、簡単な依頼じゃよ。ただ、期間がちと長いがな」
依頼の内容について王様が自ら説明する。
魔法大国マーリンへの行き帰りの護衛兼料理人を任せたいと王様は言う。ただ、グフィーラ王国から魔法大国マーリンまで一週間掛かり最低でも往復二週間、最高でおそらく一ヶ月掛かる依頼となる。
依頼内容を聞いたカズトは『何処がちと長いだ。めちゃくちゃ長いではないか』とツッコミたいが、そこは抑える。
「そうなると………一ヶ月近く店を空ける事になるのか。ところで、どうしてレイラもいる?」
「レイラも一緒に行くのじゃよ。何故なら、レイラの兄がいるのじゃからな」
レイラは第二王女だと聞いてたが、兄までいるとは知らなかった。そうすると、レイラの兄は魔法大国マーリンに婿入りしたか研究者なのだろう。
魔法大国マーリンは、文字通りに魔法大国であるが研究大国でもある。主に魔法が研究されてるが魔法だけではなく、様々なものが研究されている。
例えば、未知な食材兼その調理方法。例えば、魔道具と付与方法。例えば、勇者と聖武器等々がある。まぁ研究者にとって、これ程設備が整ったところは無いとされている。
そして、魔法大国マーリンは人間の国ではない。人間とは似て非なる種族、魔術族が統べる国だ。
魔術族は、容姿は然程人間と変わらぬが桁外れの魔力をその身に宿し様々な魔法を得意としてる。研究好きというのも特徴の一つだ。
「ほぉ、どんな奴なんだ?レイラの兄ってのは?」
超気になるんですけど!やっぱり、あれか?レイラの兄だからイケメンなのか?
「兄様は二人います。一番上の兄、イグニス兄様は見聞を広めるため、世界の各地を旅してます」
悪く言えば、放浪癖があるのね。たまに王族にいるよな、そんなヤツは決まって吟遊詩人の真似事でもしながら廻ってるもんだ。
「そして、二番目の兄がマーリンにいます。グフタフ兄様、プリン第一王女様と結婚されました」
後者だったか。まぁ予想はしていたけど、それにしても見事にここの王子様と王女様は各地に散らばってんな。次期国王になるのは、まぁ順番からいって第一王子であるイグニス王子だろうが大丈夫だろうか?
「うぉっふぉふぉ、カズト殿の懸念を理解出来ますがのぉ。あの子、イグニスは約束は守る子じゃ。見聞を広め必ず良い国王になってくださるじゃろう」
そうなれば、良いんだけどね。こっちに何らかの形で飛び火しなければ、オールOKだ。




