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64食目、石窯

 ミミ先生にお願いしたのは、厨房の凡そ中間地点に石窯を設置するという事だ。俺の記憶を読み、どんな物体か理解出来たのか早速杖をトントンと床を数回叩くと目の前に変化が現れた。

 床が動くよりは伸びてると言った方が正確か。床が伸びカズトとミミの作業場の間にスペースが出来る。そして、空いたスペースの壁がボコッと何かが這い出るかのように俺のイメージした通りに石窯が完成する。

 これでカズトが大好物である美味しいピザが作れる。その他に白身魚の塩釜焼きや香草焼きが有名だ。 それに石窯でパンやケーキを焼くと石窯特有の遠赤外線で美味しく焼けるのが石窯の魅力なポイントである。

 その代わりに火加減が難しく、焼き加減の見極めは料理人の腕に掛かってる訳だ。これだけは経験を積み上げるしかない。


「カズト、これでどう?」


「良いんじゃないか。ありがとな」


 ポンポンとミミの頭を軽く叩くと、いつも無表情だから分かり難いが、頬が赤く染まって照れてるみたいだ。


「いやはや、こんな立派な石窯がこんな短時間で出来るとは………魔法とは凄まじいですな」


「まぁ、ミミが規格外なだけだと思うけどな」


 ミミが作製した石窯を色んな角度から見て獅子之助は感心してる。刀一筋で来た獅子之助は魔法は一切使えず、一回カズトが鑑定で獅子之助のステータスを覗き見たら、一応魔力はあるようだが初級魔法を一回使ったらゼロになってしまう位に少ない。

 だからか、獅子之助は自ら魔法が使えないと分かってるからこそ、ミミの魔法を目の当たりにし興奮してしまったのだ。

 カズトもだが、勇者ってもんはもしかしたら魔法がてんでダメかもしれない。でも、カズトが今まで会ったのが獅子之助のみだからどうにも言えないのも事実である。


「さてと、それじぁ調理開始しようか」


「腕が鳴るわい」


「ミミに任せとけば良いの」


 料理人の格好に整え、それぞれの調理場に戻る。そして、自らの包丁を手に持ち調理を開始する。


 カズトが作るピザは種類が多く、ピザ生地の形や生地に乗せる食材によって味や食感が変わるところが面白い。それに加え複数人で分け合えるところが特徴的だ。

 まず作ろうとしてるのが最もポピュラーなピザであるマルガリータだ。まぁそれはカズトが勝手に思ってるだけだ。

 マルガリータはイタリアの王妃の名が由来となっている。そしてトマトの赤、モッツァレラチーズの白、フレッシュバジリコの緑がイタリアの国旗を表しており、代表的なピザと言っても過言はない。


 カズトはピザ生地伸ばしに取り掛かる。最近はピザ生地を伸ばす専用器具が販売してる。丸く伸ばせる様に丸く線引きしてあるマットや丸く成型するプレス器があるらしい。が、カズトはそんな器具に頼らないで作るのをポリシーにしてる。

 まぁ絶対にとある器具を使用しないと作れないというなら割り切って使う。

 失敗しない様にマットの上に置き丸く成型していく。良く空中で遠心力を使い格好良く演出する人がいるが、基本的に下に置いた方が作りやすい。

 ピザ専門店でも空中に投げる作り方は誰もやっていない。それは失敗するリスクが高いからだ。


 カズトは丸く広げた生地にカズト特製トマトソースを全体に塗り、その上からモッツァレラチーズを適当に乗せ、大きなヘラで石窯に投入し焼き上げる。

 石窯はオーブンとは違い、タイマーは存在せず自分の目と経験で培った勘で焼き上げ具合を判断する。むしろ、タイマーは邪魔でしかない。

 何故なら、その日の気温や湿度によって生地や具材の水分量が違ってくるので、毎回焼く時間を微妙に調整するしかない。それで毎日同じ味を出すのが一流の料理人だ。


「よし、そろそろか」


 ヘラを石窯に突っ込み熱々にチーズが溶け焼き上がったピザを取り出し皿の上にヘラから滑り落とし、最後にバジリコを盛り付ければ完成だ。


「ユニ出来たぞ。王様のところへ持って行ってくれ」


「な、なぁ?ほ、本当にこれでやるのか」


 ユニが着用してるチャイナ服は他の三名と何処かが違う。そう上下と別れており、腹を出してる状態で勿論谷間部分も開放され露出が多目となっている。

 この世界の女性は普段ビキニアーマーなりを着てるのに、こういうチャイナ服を恥ずかしがるなんて、毎回言うがカズトには理解不能だ。


「普段ビキニアーマーを着てるから平気ではないか」


「そうは言うが恥ずかしものは恥ずかしのだ」


 ユニは頬をカズトが分かる位朱色に染まっている。だが、ユニは元青薔薇隊隊長だ。観衆の前に出るのは慣れてる。

 場は違えど元プロ意識で羞恥心を忘れる訳ではないが、瞬時に笑顔になりカズトが調理したピザを持ち王様のところへサーブする。


「だが、こんな事で恥ずかしがっては仕事にならぬ。接客ウェイターは笑顔が基本だったな。なら、私もそれを倣おう」


「お、おぉ頑張ってくれ」


 ユニの笑顔は見た目的にはパーフェクトな笑顔だ。誰しもが幸せになれるような笑顔だと感じた。

 だが、内面はその逆だ。羞恥心を隠そうと威圧的で何時爆発してもおかしくない時限爆弾に見えた。時折、ガス抜きが必要かもしれない。その見極めを外さないよう常に監視というかレイラ達にも注意するよう言っておこう。


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