63食目、ユニが嫁兼従業員になりました
ユニとあれこれ話す事は尽きないが、他の赤薔薇隊の隊員が来てるようなので、一応厨房からホールに顔を出すと、そこには隊員の他に王様と王妃様までいたから驚いた。
王様と王妃の護衛は………赤薔薇隊がいるから問題ないか。ユニが抜けて赤薔薇隊の戦力ダウンは免れないが、他の隊員も強いのは確かでユニが今まで育てあげた部隊だ。
これより安心に護衛を任さられるところはなかなか無い事だろう。それに次の隊長であるライラも結構強い。決闘したカズトが言うのだから間違いない。
「王様と王妃様もようこそ、お越し下さいましてありがとうございます」
「おぉカズト殿、どうかユニをどうかよろしくお願いします。くれぐれも泣かさないようにな」
握手を求められたので、手を差し出すと想いっきりに王様がギシギシと握ってきて手が痛い。口元は笑ってるが目元が笑っていない。
王様は実の娘であるレイラと同じくらいにユニを可愛いがってたらしく、部下なのでいつもは表面上出せないが他に出すとなると感情が制御利かず出ちゃうみたいだ。
「王様、おまかせ下さい。それにここなら何処よりも安心です。それからですね、ここで食べるという口実でレイラやユニに会えます」
第一王女アテナと来た時に渡した魔道具で、いつでもレストラン"カズト"の扉と王城の扉を介して来る事が出来るのだ。そうすれば、ワザワザ護衛も必要ない。まぁ急にいなくなれば大騒ぎになるかもしれないが。
「おぉ、そうだな。その手が合ったな。うむ、そうしよう」
「あなた公務が貯まってますのよ。帰ったらお仕事です」
「うぅ、しかしな。ここの珍しい料理はどれも美味しく━━━」
「あ・な・た」
王妃様が怒気がこもった声で王様を威圧する。王様は畏縮しきって存在が小さくなってしまっている。
俺の嫁も最強揃いで将来的に目の前の王様みたいに尻に敷かれるのかと、つい近くにいるレイラとドロシーを見てしまった。ドロシーとレイラは首を傾げており、カズトの心中がバレてないようで安堵する。
「た、大変でしょうけど、今日は宴としてご馳走をご用意致しますので、元気を出して下さい」
「うむ、そうだな。今日は目出度い日だ。どんどん持ってこい」
その目出度いところには俺も入ってるはずなんだが、それはしょうがないか。ちょうど他に客はいないし、今からここは貸し切りにするか。そうした方が邪魔が入らず、祝れるってもんだ。
宿泊客には、悪いヤツはいないし、そのまんま参加させよう。宴は大勢で賑やかの方が華やかで楽しいはずだ。
「という事で、これからまた忙しくなるから。よろしく頼む」
ピーク過ぎたばかりなので、休憩を入れたいと思ってたがそうも言ってられない。この国のトップが来てるのだから、待たせたりは出来ないし、粗相を犯そうものなら俺の首が飛ぶかもしれない。
でもまぁ、俺と王様の仲だしそうそう下手な事をしなければ大丈夫だと信じたい。実の娘であるレイラと実の娘みたく可愛がってたユニが俺のところに嫁いでしまったのだ。王様という立場より親の立場を取るだろう。
俺は内心ビクビクとビクつきながら調理に取り掛かる。
「儂は何を作ればよろしいかな?」
そうだな、獅子之助にはパエリアを頼もう。魚貝類を鱈腹使ったパエリアなら朝飯前だろう。それにパエリア鍋は結構大きく複数人分を一気に作る事が出来るのも魅力的だ。
「ふむ、パエリアか。和食ではないが、確かに魚貝が豊富で儂にピッタリかもしれんな」
「ミミは何を作る?」
おっ!珍しくミミが自らヤル気を出してる。相変わらず無表情だが、キラキラとオーラが出てる風に見える。ていうか、本当に見える。
ミミ程の魔法使いになると感情が昂ると魔力が視覚化出来るようになる。魔力の色によって喜怒哀楽が判別可能らしい。今のミミから出ている魔力は"赤"なんでヤル気満々に満ち溢れハイテンションになってる証だ。
「ミミにはそうだな。〝ローストビーフ〟をお願いしよう」
ローストビーフは肉料理でパーティーに適した料理の一つだ。それにお客様の好みによって味が色々変えられ人気メニューなのだが、2~3時間程掛かるため本来なら期間限定としている。
だだし、まだ庶民の間に広がってるだけで貴族には広がっていない。
その理由として牛肉なのが大きい。不評被害ではないが、この世界の常識から考えて牛肉は固くて不味いのが通例だ。王様や王妃様も例外ではない。
だが、ここは敢えて牛肉を使う"ローストビーフ"を選んだ。王様が旨いと褒め称えれば、他の貴族へ広まるだろうし、味の常識を壊す一歩となるだろう。カズトはそんな味の革命をやり遂げたいと思っている。
「了解なのぉ。それで、カズトは何を作るつもりなの?」
「俺か?そうだな、何にしようかな?」
何にしようかと頭の中で思い描き、地球にいた頃大好物であったとある料理が思い浮かんだ。
それは大抵の人が好きであろう料理で様々な味付け・具材があり、嫌いな人なんておるのかと疑問に思う程カズトの大好物だ。だだし、作るのにとある施設が必要なのだが、その問題も万事解決だ。ここにはミミという天才魔法使い様がいる。建物を増設するなんて朝飯前である。




