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8食目、お冷やとお刺身定食

あらすじにも付け足しましたが、更新はおよそ3~4日の範囲でやっていきます。

仕事の都合上や何かしらイベント間近になりましたら遅くなるかもしれませんが、その時はごめんなさい。

 水炊きの締めとしてご飯を用意し、持って行ったらもう一人角が生えた女性が水炊きを食してる客と何か言い争ってるみたいに見え急ぎ駆けつけた。


「どうしましたか?お客様」


「妾の身内が来ただけだ。気にするな」


「姫様、気にするなとは何ですか。こっちはどれ程心配したことか」


 姫様?やはり何処かの貴族か何かだろうか。そして、今怒ってる方が従者みたいな上下関係か。そうすると姫様と呼ばれた方が逃げ出したという感じになるな。


「それはスマンと思ってるゆえの。そう怒らんでくれ。それに………ここの料理は絶品ゆえな。食べて機嫌を直しておくれ」


「むぅ、また許した訳ではありませんからね」


 従者らしい客はまだ目尻が上がっておりながらも席に着いた。怒りは収まってはいないが、一応命令に従った感じに見える。


「こちらにも何か出して貰えんかの」


「いえ、私は―――――」

 きゅるるるる~~


「プックククク、ほれ腹の虫が鳴ってるでないか」


「お恥ずかしい限りです」


 従者は腹が鳴った事で怒りよりも羞恥心の方が勝ちシュンと顔を伏せてる。しかも可愛い腹の虫だなとカズトは微笑ましくけして口には出さないが思っていた。


「ご用意致しますので、少々お待ち下さい」


「その手に持ってるのはなんぞや?」


「これは水炊きの締めとしてご用意致しましたご飯でございます。鍋に残ったスープに入れ雑炊を作ります。鶏と野菜の旨味がご飯に染み込んで美味しいです」


「なぬ!ご飯だぞ!この国にもお米が存在するのか?」


「姫様、数は少ないですが存在している様です。その代わりに高価です」


「私の独自ルートで仕入れてますので、ご安心を」


 鍋にご飯を投入しグツグツと煮込む。

 やっぱり鍋の締めは雑炊かうどんと相場が決まっている。鱈腹食ったはずなのに締めを見ると、デザートみたいに食えてしまうものだ。


「じゅる、まさかこんな食し方があったとはのぅ」


 グツグツと煮えスープが凝縮され匂いが濃くなり食欲があんなに食ったはずなのにむしろ増していく。


「はむはぐモグモグ………こんなの食したら………モグモグ………余計に腹が減るではないか」


 あんなに食べたはずなのだが巫女服のお客様から盛大な腹の虫が可愛く鳴り響く。側にいるカズトは笑いを堪えるのに必死であった。

 もし、ここにドロシーやレイラがいたら笑っていたかもしれない。お客様の気分を害しなくてカズトは安堵する。周囲も食事や雑談で聞こえてはいないようだ。


「お待たせしました。こちらおしぼりとお冷やでございます」


「えっ!頼んでいないのですが?」


「こちらはサービスでございますので、お金はお取りしません」


「えっ!水がタダですと!それも冷えてるし、これがタダなんて………それにグラスが均等で綺麗です」


 ドロシーが持ってきたお冷やに驚く従者の客は一気に飲み干しお代わりを要求する。アギトには無い冷凍技術と浄水技術を使用してるから、そりゃぁ美味しいはずである。

 グラスに関しては只単に通販ショッピングで大量生産品を買っただけだが、アギトでは一つ一つ職人が手作りで作製してるからばらつきがあり、同じ物を作る事は今現在の技術では難しい。

 

「この水がそんなに驚く事なのかや」


「えぇ、凄いです。普通はお金を取りますし、こんなに冷えてる水なんて貴重です。それにグラスは見たところ全部同じ大きさで歪みもない完璧な作りです。それから―――――」


「おっおぉ、凄いのじゃな(何処が凄いのか分からん)」


「姫様分かって下さいましたか。それからですね━━━」


 まだ話が続きそうだったところに料理が運ばれ従者のお客様の前へドロシーが配膳した。

 運ばれて来たのは、お椀にいっぱいに盛り付けられた一粒一粒が輝いてるご飯、味噌の匂いが食欲をそそる具材たくさんの味噌汁、そして宝石のように切り口が綺麗な刺し身だ。日本人ならこれを見ただけで腹の虫が鳴る事必須だろう。


「お待たせ致しました。お刺身定食で御座います」


「オサシミテイショク?オサシミ………テイショク………ぶつぶつ」


 シェール出身の二人ならお刺身という単語だけだったなら直ぐに理解出来たかもしれないが、そこに定食みたいに他の単語が合体すれば分からなくても仕方ないかもしれない。例えば、トンカツに丼を加えカツ丼という具合だ。


「………オサシミ………オサシミですか!」


 従者はブツブツと呟く事数分間………やっと言葉の意味を理解出来たのか驚愕する。

 古都は最低でも海魚が届くには4日掛かるのだ。冷凍・冷蔵技術がないアギトでは4日もあれば、魚介類は腐ってしまう。

 干物という手もあるが、その技術も知らないとカズトは見ている。勇者として冒険してる間、一度も聞いた事すらない。

 古都に腐らず持ってくる方法は氷魔法で冷凍させる事なのだが、常に維持しなければならないため莫大な金が掛かってしまう。よって、王都と古都ではほとんど魚介類は食さないのだ。

 だから、従者は驚愕したのだ。まさか勇者がやってるとはいえ一介の飲食店で魚料理が出るとは思えないだろう。普通ならお客に関して死ねって言ってるものだからだ。



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