SS4-7 赤薔薇隊隊長~婚約報告兼説得するまでの軌跡~副隊長とカズトが決闘をする
ユニがレストラン〝カズト〟に帰って来てから翌日、昨日飲み過ぎで記憶が曖昧なライラが太陽が登り、窓から日の光が射し込み始めた時間帯に起き上がった。
隣には愛しきライラがまた寝ている。ここは何処なのか直ぐに思い出せなかったが、昨日の酒盛りで寝てしまったのだと思い出した。
寝てはいたけども、運ばれる際のライラの背中の感触が自分の体に残ってる。それは嬉しい限りであるが、もしも起きていたらライラにあんな事やこんな事を出来ていたのではと思うと心底残念な気持ちになる。
「うぅーん……………ライラ、もう起きてたのか」
「お姉様、おはようございます。昨日はご迷惑掛けてすみませんでした。私、重くなかったでしょうか?」
「ライラは軽いからな。背負うのに楽なのよ。さて、着替えて朝飯に行くよ」
他の店は解らないが、レストラン〝カズト〟の朝は早い。時計は存在しないが地球時間でいうところの4時頃に起き宿泊客の朝食を作り、宿泊客が起きて来るまで用意して置く。
メニュー構成は、フワフワのパン数種類の主食とベーコンや目玉焼き等のオカズを提供してる。
「お姉様!何ですか!このフワフワの柔らかいパンは!こんな美味しいパンを食べるの初めてです」
「だよなぁ、大抵クソ硬い黒パンだからな。こんなに柔らかいパンになると一部の貴族か王族しか口に出来ないからな。その感想良く分かるわ」
ユニも初めてカズトが作ったパンを食べると同じような事を口にしたもんだ。しかも、その王族らが食すパンと比べてもこちらの方が断然美味しいと来てる。
だからなのか?グフィーラ王と王妃もお忍びで身分を隠して来る事がある。他国の王族も秘密裏に来店してるって噂も度々聞くが証拠がある訳ではない。
「隊長達、早いですね。みんなは、まだ昨日のお酒が抜けてないらしく……………起こそうとしても起きないですね」
「まぁ、今日は久々の休日だと思ってゆっくりとすれば良いさ。ライラはカズトに用事あるんだろ?」
そうライラは"剣の勇者"カズトに決闘を申し込むため、ユニと一緒に来た次第だ。噂で度々聞くカズトの活躍は否応にもライラの耳にも入って来る。
だけども、それは単なる噂だ。実際に自分の目で見た訳ではない。自分の目で見たり体験した事でないと納得しない質だ。
「勇者カズト様、決闘してくれませんか?これで私が勝ったなら、お姉様から手を引くと」
「受けてたとう。ただし、もう少し待っていてくれ。宿泊客の朝食を用意するから。場所はここの地下に鍛練場がある。そこでやろう」
レストラン〝カズト〟の地下には鍛練場がある。宿泊すると無料で使え、それ以外の客は少しばかり手数料を取るシステムとなっている。
鍛練場には、ミミが魔法で障壁を張っておりケガをしても障壁から出れば何も無かった事に出来、内側と外側の攻撃を通さない。ただし、経験値や疲労等は無くならない。
「準備は良いか?」
「何時でもどうぞ。それにしても、何でこんなに観客が多いんですか?!」
俺は腰に聖剣エクスカリバーを携えてる以外はレストラン〝カズト〟の男性の制服だ。エプロンは外してある。
ライラに関しては来店した時のワンピースではなく、赤薔薇隊の象徴とも言うべき赤いビキニアーマーだ。武器は左腕に小円盾と右側の腰に剣を一本携わっている。
安全のために障壁内には、カズトとユニ以外は入っていない。だけども障壁外を見渡すと、10や20ではきかない程に観客で溢れている。
ユニは兎も角、いつの間に起きたのか部下五人も揃っており、それに加えレイラやドロシーにミミまでも見に来てる。
どれも見知った顔ぶればかりで、何処から嗅ぎ付けたのか?中には冒険者ギルドと商人ギルドのギルマスまでも見に来てる始末だ。
「そりゃぁ、勇者と赤薔薇隊隊長の決闘となれば見たいヤツは五万といるだろう」
五万は言い過ぎかもしれないが、もしも俺が勇者でなく普通の一般人なら心の底から見たいと思うに違いない。
観客に紛れてユニが俺に向かって、声援と手を思いっきり振ってる。
「カぁぁぁぁズぅぅぅぅぅトぉぉぉぉぉぉ、負けたら承知しないからな。負けたら罰ゲームだからなぁぁぁぁ」
ヤバい、これは絶対に負けられない。
「うっふふふふふ、お姉様からの声援羨ましいです。本気でアナタを殺る気でお相手致します」
ユニの声援が火に油を注いだ結果となっている。声援を受けた俺よりもライラの方がメラメラとテンションが上昇している。




