SS4-4、赤薔薇隊隊長~婚約報告兼説得するまでの軌跡~オススメを注文をする
馬車に乗る組み合わせは、ユニとライラの二人と部下五人となった。普通なら三人と四人になるのだが、ライラがユニと二人で乗ると主張したから、こんな組み合わせとなった。
部下五人は荷台が狭くなる事に文句を言わず乗っている。というか言えない。ライラのユニLoveは赤薔薇隊内なら誰でも知ってる事実で、ライラの手綱を持てるのはユニしかいない。
馬車に揺られる間は、ライラのたっての希望でユニは膝枕をしてあげていた。ジーンズの短パンとハイソックスの間に輝く太腿に頭を乗せている。
「これがお姉様の膝枕……………うっへへへへへ」
興奮の余りライラの表情は誰にも見せられない程、ニヤケ顔となっている。まるで何処かのオヤジみたいだ。寝返りを打つ度に触って来るのが、擽られてるみたいで笑いを抑えるのに必死だ。
「お姉様、前から聞きたい事がありまして聞いても良いですか?」
「何だ?藪から棒に?お前から何か聞いて来るなんて珍しいな」
「勇者カズト様の何処が好きなのかなぁと思いまして…………」
私は、お姉様の全てが知りたい。幼少の頃、お姉様に魔物から助けて頂いた時は昨日のように思い出せる。
その当時、お姉様は赤薔薇隊の新人で私を救出した後に優しい微笑みで話し掛けてくれた。
その時から私はお姉様の全てを知りたい欲望と常に側に居たいという独裁心が芽生えたのだ。私は、お姉様と同じ赤薔薇隊に入隊するため、血が滲むような訓練と知識を蓄えた。
その努力の結果、数年に一回あるという赤薔薇隊の入隊試験に無事パスし入隊する事が出来た。
入隊する事が出来た直後、お姉様をその目に入れる事が出来たが…………お姉様は隊長となっていた。更に遠い存在になっていた事に嬉しい反面、悲しくもあった。やっと隣に歩けると思っていたのに、遠い場所へと行っていたのだから。
お姉様の隣を一緒に歩くため、私は凄い速度で成果を上げていった。その際の戦い方から『赤い悪魔』や『血染めの薔薇』に『ブラッディーローズ』とか色々言われてる。
「お姉様お姉様……………むっふふふふ」
「ライラ、どさくさに何処を触ってる!そんなに死にたいのか?」
「ぴっぎぁぁぁぁぁぁ!ごめんなさいごめんなさい。もうしません」
ライラが膝枕の最中にお尻やピーーー音が入る箇所を触ってしまった。その結果、ライラはユニの力一杯のアイアンクローをこめかみに喰らった。ミシッと骨にヒビが入るような音が聞こえた。
「膝枕は、もう金輪際しないからな」
「うぅ~、頭が痛いです。でも、お姉様にやられるなら…………あぁん、何か興奮します」
今だに痛そうに頭を押さえてるが、その表情は何処か嬉しそうで、体をクネクネとくねらせる。そんなライラに若干ユニは引いてる。
ライラがユニとあれやこれやしてる妄想をしてる間に馬車が停止し、荷台の扉が開いた。どうやら、目的地に着いたようだ。
「やっと着いたか」
「ここが噂のレストラン〝カズト〟ですか?普通の一軒家に見えます」
所見では誰だってそう思ってしまう。看板が無ければ、普通の家だと思ってしまうのは無理はない。ただし、内装を見れば凝り固まった考えが一気に吹き飛ぶ。
「隊長早く入りましょう」
「ここに来るとお腹が減って」
「しょうがないです」
「今日は何を食べましょう」
「唐揚げで良いじゃないですか?」
ユニとライラを置いて先に部下五人が入ろうとする。店の外にいるだけで、匂いが漂って鼻に付く。来店した事のないライラでも、この匂いだけで食欲が溢れて来る。
一体どんな料理が出て来るんだとワクワク感が止まらない。我先にと入ろうとする部下を押し退け、ライラは初めて入店する。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「ひ、姫様!」
レイラが接客しているとは思わず、頭の中は混乱してしまう。グフィーラ王国の王女が、こんな大衆食堂的な場所で働いている。それも接客とは思いもしなかった。
一般市民がやるような仕事を姫様にやらせるとは、勇者カズト様━━━━いえ、カズト許すまじ!
「あら?ライラじゃない!久し振りね。今日はどうしたの?」
「姫、ただいま帰りました。ちょうどライラも居たので、御一緒に参った次第です。久し振りにライラに姫を会わせたいと思いまして」
「ユニ、お帰りなさい。立ち話もなんだから好きな席に着いちゃって」
「姫のお許しが出た。お前ら、中に入るぞ」
最大六人までの席しかないので、三人と四人で席に座る。お昼前に到着出来た事もあり、好きな席に座る事が出来た。
「お姉様、私は早く勇者カズト様とお会いしたいのですが……………」
「まぁまぁ、そう慌てなさんな。ちゃんと会わせてやるからよ。今は鱈腹飯を食え。カズトの飯は天下逸品だからよ」
ユニからメニューを渡されると、そこには見た事も聞いた事もない料理の数々が書かれている。頼もうにも、どんな料理が出て来るか解らない。
「メニューを見ても解らないので、お姉様のオススメを教えてください」
「そうだな?それじゃぁ、これにするか?」
ユニが指すメニューをライラは頼んだ。