表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/552

57食目、濡れ衣

 そう言われてと分からんものは分からん。

 何処で会ったか今一度記憶を探るが、どうしても思い出せない。仲良くなった者や杯を交わした者なら覚えてはいる。

 なら、それ以外の者━━━つまり、敵側だった者だ。敵なら一々覚えても無駄だというカズトは考えており、例外はあるが大抵は覚えていない。


「う~ん、すまん。思い出せん。人違いという件━━」


「それは無いわ。あなたの顔しっかりと覚えてますもの。それに散々弄ばれたんですもの」


 そう断言されては、こちらも言い訳しようがない。ロリ女の容姿からすると、魔族の一種族だと思うんだが………

 単に魔族と言っても多義に渡る。例えば、吸血鬼族ヴァンパイア悪魔族デビル等々、カズトが知らないものも含めて数十種は存在してるされている。


「カズト殿、それはないぜ。したならちゃんと責任取らないと」


 何故か獅子之助がロリ女に助け舟を出して来た。

 何を?!と敢えて聞かない。聞いたら負けな気がするから。くそぉ~、一体誰なんだ?思い出せ思い出せ、記憶の隅まで探して。


「ハァハァ、やっと思い出したぜ。お前、あの〝泣き虫ジブリール〟だな?」


「………もぅ~もぅ~、そこは思い出さなくてよろしいのよ。そうよ、あの〝泣き虫〟のジブリールですわよ!」


 ジブリールは憤慨しながら地団駄を踏む。

 カズトはずっと忘れていた。ジブリールは魔王の部下であり、その唯一の生き残りである。

 ジブリールは魔族の一種である〝女婬夢族サキュバスという種族だ。特徴として戦闘能力は皆無に等しいが、甘い誘惑で男を誘い操る【魅了】というスキルを使用出来る。使用された男は、使用されたと気づかずあたかも自分の意志で行動してる風に錯覚する。そこが厄介なところだ。

 ただし、使用条件があり男と女の仲にならなくてはならない。これが【魅了】の唯一の使用条件である。

 ジブリールは何度もカズトに【魅了】を掛けようしたが、その都度軽くあしらわれ、その度にジブリールは泣いて帰って行く事からカズトには〝泣き虫ジブリール〟と覚えられてしまった訳である。

 

「その〝泣き虫〟が今頃何の用なんだ?」


 魔王の部下だから魔王を殺した俺(正確には違うが)の復讐か?


「泣き虫は余計なのよ。あなたに聞きたい事があるのよ。魔王様の核は何処にやったの?何処にあろうと感知出来るのに、感知出来なくなったわ。さぁ正直に白状しなさい」


 グイグイとジブリールがキスが出来そうな程、近寄って大声で叫ぶので取り敢えず、落ち着かせた。

 良く話が分からなかったので、詳しく聞くとこういう事のようだ。

 魔王の核、つまり王国の城の地下室へ封印を施した巨大な角は本来なら魔族なら誰でも居場所が分かるよう電波みたいなものを常に流してる状態なんだそうだ。

 魔王が死んだ後も核から電波は流れ続け、その核を最初に手に入れた魔族が次の魔王になる予定だった。だったのだが、カズト達に回収され封印されたため電波が流れなくなり核の場所が特定出来ず仕舞いらしい。

 そのため、大半の魔族は諦めムードになり、散り散りになったそうだ。まぁ中には諦め切れずに探してる者はいるにはいる。ジブリールがその一人という訳だ。


「知らんな。知っていても、あんな危険物をわざわざ渡す訳あるまい。それに、お前のスキルは俺に通用しないのだし、諦めたらどうだ?」


 もう面倒臭く適当にあしらっていたら………


「なによなによ、我をバカにして!良いわよ、絶対に後悔させてあげるんだから」


 一見挑発するような言葉の裏腹にジブリールの目頭には涙が浮かんでいる。

 端から見たらカズトが幼い子を虐めてる構図に見えてしまう。勇者時代のカズトなら、まだ魔王を倒すという使命の元で魔王の部下と分かっていたから平気であった。

 だがしかし、今現在は魔族とも仲良くやっていこうと内心決意を固めなるべく争わない方向でやりたいと思っている次第だ。


「まぁまぁ、これでも飲んで。落ち着いたらどうだ」


 もう一つグラスを用意し、純米大吟醸を注いでジブリールに渡そうとする。一方のジブリールはカズトが手に持ったまま匂いを嗅ぎ見詰め毒でも入っているのではないかと警戒してる。


「別に毒は入ってないよ。獅子之助と俺が飲んでるところ見てたでしょうよ」


「お嬢、飲んでくだせい。こんな美味な酒には、なかなかお目見え出来ねぇぜ」


 獅子之助にも勧められ、グラスを持つ。そして、口をつけ一気に流し込む。ゴクンと喉が鳴り、下に俯いたまま動かない。

 口に合わなかったと思い、カズトが声を掛けようとした瞬間━━━


「う」


「う?」


「うまぁーーーい!何よ、これが人間が作ったものなの!あのエールというクソ不味い酒を美味しそうに飲む姿を見ると滑稽に思えてしょうがなかったけど、これは違うわ。シ・ア・ワ・セ」


 女婬夢族サキュバスの実力は三流だが、舌に関しては相当な実力があると見た。


「ジブリール、俺の店に獅子之助と一緒に働いてみないかい?」


 獅子之助に加えジブリールも雇う事が出来れば、大分仕事が楽になり、サービス向上に繋がるし、魔族であるジブリールを監視下に置けば魔王の核を狙われないように出来るっていう作戦だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ