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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

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56食目、刀の勇者と酒盛り

「何故これがこの世界にあるのだ。これは我が日本が誇る酒の一つではないか!」


 日本人で酒好きなら誰だって、この酒は飲みたいと思う。

 酒ビンのラベルにはこう書いてあった。"純米大吟醸"と。純米大吟醸は米・米麹・水のみで作られた日本酒で、精米歩合を50%以下に抑え最も手間が掛かり、高価な物が多く存在する。日本酒好きな者にとっては憧れな酒といえよう。


 チャリーン

「ほれ、グラスを二つ用意した。折角だし飲んでみないか?」


「良いのか!儂は酒に目がなくてなぁ。昔、仕事柄なのか利き酒は得意での。どれ、飲んでみるか」


 チャプチャプトプトプと純米大吟醸と呼ばれる酒を獅子之助のグラスにカズトが注ぎ、カズトのグラスには獅子之助が注ぎ二人揃って腕を上に掲げ乾杯をした。


 グビッ

「これは!正しく"純米大吟醸"!精米歩合は………40%ってところか。これ程のものをこの世界では作れまい。これを何処で手に入れたのだ?」


 獅子之助の言う通りエールみたく味が悪いビールもどきなら、この世界の技術なら作れるだろう。

「儂はそこまで言ってないのじゃが」と何やら獅子之助は言ってはいるがスルーして純米大吟醸を含む日本酒のような繊細過ぎる酒は到底作れるものではなく、むしろ古代物質アーティファクトと並ぶ代物だ。

 まぁ獅子之助のように利き酒に精通してないと、一般人や一般冒険者が飲んでも、ただ美味しいと感じるだけだ。


「詳しく話せないが、俺のスキルとだけと言っておこう」


「それはもう答えじゃないか?ゴクゴク」


 この世界の人達で無理なら、外から来た人に限るだろう。例えば勇者とか勇者とか………しか思い付かないな。

 例外はあるかもしれないが、この世界に来るには常識的に勇者として召還されるしかないとされている。なので、カズトには勇者しか思い付かない。


「ところで、ウチで働かないか?ゴクン」


「カズト殿のところで?カズト殿のところとは………?」


 ゴクゴクと純米大吟醸を飲み、カズトは間を開け口を開く。カズトが言った言葉は全国各地にはもう有名過ぎる店の名前で、この世界の情報に疎い獅子之助でも耳にした事がある。


「見たところ獅子之助さんは、昔料理人でしたでしょう。それも和食に精通してる」


「………な、何で分かった?それも和食だって」


「合ってましたか?俺も料理の端くれです。大抵は見ただけで、その人が料理に携わって来たかどうか分かります。獅子之助さんも分かりますよね?」


 獅子之助は『イヤイヤ、分からねぇよ』と内心で全否定し、手を横に振っても全否定し、それをできるのは一種の達人だけだと内心でツッコミを入れた。


「それでですね、獅子之助さんにもウチで雇いたいと思いまして。これ程の〝利き酒〟の遣り手なら即戦力間違いないですし、どうですか?ウチで働きませんか?和食をこの世界に拡げませんか?」


 俺の提案に獅子之助は━━━


「和食をか………くくくくわっははははは、ゴクゴクぷはぁ………ぷっくくくわっはははは」


 涙が出る程、思いっきり笑い純米大吟醸を飲み、また笑いを向後に何度か繰り返した後、答えが出たのは一時間後であった。『遅せぇよ』とツッコミたくなる気持ちをカズトはグッと抑えた。


「良いぜ、その話乗っ━━━」


「ちょーーーっと待ーーーーったぁぁぁぁ!ハァハァ、異議ありよ」


 息を切らして急に出て来て誰だコイツ?魔力の質からして【絶対感知】で捉えてた獅子之助のもう片割れか。赤髪のツインテールで、下着か水着か分からんが、後者と思いたい。が、露出がかなりある。ロリ女が出て来た。

 恐らくだが、今まで出て来なかった事を考えるとコイツが例の〝あの方〟なのか?でも、まさか黒幕がここにいる訳ないか。と思っていたのだが………


「そうよ、私が〝あの方〟と呼ばれているわよ」


 カズトはブホっと吹き出しそうになった。自分からばらすなんてバカなのか、アホなのか?それにしても………何処かで会ったような?ないような?思い出せん。

 まぁいずれにしても、ちょうど〝あの方〟とやらがあっちから来てくれたんだ。素直に言ってくれるか分からんが聞いてみるか。


「どうして、俺を狙う?」


「剣の勇者カズトよね。もしかして私の事忘れたの?」


 えっ?!初対面のはずだけど、こんな露出狂は知らないはずだ。今までの記憶を辿ると………やべぇ、やっぱり思い出せん。こんな第一印象が強いヤツと会ったら忘れないと思うのだが………


「ごめん、思い出せん。一体どちら様で?」


 情けないような気持ちで頭をカキカキと掻きながらカズトは聞く。

 そんなカズトにワナワナと怒り沸騰の露出狂の女は地団駄を踏み、とある魔法を解除した。自分の姿をある程度まで誤魔化す魔法、つまり変装魔法だ。この魔法が解けると頭に二本の角、お尻に細く先っぽが尖ってる尻尾、背中にコウモリを思わせる羽が現れる。


「さぁこれで分かるでしょう」


 ボブカットの髪を掻き分け両足を横に開き、左手を腰に添え、右手の人差し指でカズトを指すと今度こそ自信満々にそうカズトに問い質す。








 

誤字脱字を訂正してくださり、どうもありがとうございます。


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