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53食目、刀の勇者登場

 残りは50人から三人に減った訳だが、その一人が目の前にいる暗殺族アサシンのリーダー、もう二人は今のところ姿を現さず動く様子もない。

 それなら、絶望の淵にいるリーダーに俺を狙った理由と"あの方"について聞こう。今なら素直に聞けるかもしれない。もちろん、他の二人にも注意を払いながら。


「おい、今から質問をする。正直に答えた方が身のためだぞ。何で俺を狙ったんだ?」


 質問しながらカツカツと近付きタケノミカヅチの刃をリーダーの首筋に止めた。いつでも殺せるぞと印象付けをするために。


「………"あの方"の命令だ。それ以外に何もないし、お前を殺る理由なんて俺達に知る由もない。本当だ、信じてくれ」


「次の質問だ。"あの方"とは誰だ?」


「名前は知らない。知らないが、俺達とは別次元の強さを持ったヤツだ。人間ではないと思うが、その素性は俺達も知らねぇ」


 それじゃぁ、俺が狙われる理由も"あの方"と呼ばれる者の正体も不明のままじゃねぇか。コイツはウソをついてる様子ではないし本当の事なのだろう。

 折角、コイツだけを残した事意味無かったじゃないか。大技まで使ったのに、まるで骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。それなら一人一人殺して装備品を奪えば良かったな。

 やってしまったもんはしょうがないけど、何かもったいない事したな。真っ黒黒助で装備品も消滅しちゃったし、暗殺者なら騎士団に引き渡せばそこそこ良い報酬が貰えたかもしれなかったのに、失敗したな。


「何も知らないのか、じゃぁ死ね」


 カズトがタケノミカヅチを暗殺者リーダーの首筋に目掛けて何の躊躇もなく一目散に振り下ろした。だが、首筋にタケノミカヅチが到達する前にガキーンと何かが間に入り込んできた。

 それは一本の刀で刃と刃が交差し火花を散らし大気が振動してる。その刀を持ってる者は侍風の男で衣装は浴衣で髪はチョンマゲに結ってあり、足は草履と侍と言ったら侍だがカズトから見たら何処か胡散臭く感じる。

 カズトは後方へ下がり、二人の様子見をする。侍は胡散臭いがカズトから見ても相当な手練れだと肌で感じていた。力一杯に振り下ろしたカズトの一撃を抑え込む力があるのは確かだ。


「だ、旦那ぁぁぁ!助かりました」


「良いってことよ。それよりも下がってな。コイツはお前じゃ太刀打ち出来ねぇぞ」


 暗殺者リーダーは侍風な男の言う通りにその場から離れ戦いの邪魔にならないよう姿を眩ました。それでもカズトの【絶対感知】によって丸分かりなのだけれど。

 本当は残りの二人を誘き寄せるための演技だったが、本当に出て来るとは思わず賭けであった。もし、出て来なくても殺す積もりは毛頭なく、剣筋を反らす腹積もりであったのだ。


「相当強いな。その格好は侍か?」


 侍という職業や種族は聞いた事ないが、何度見ても侍その者である。浴衣だし、チョンマゲだし、それに武器が日本刀だ。


「それを言うならお前だろ?50人もの人数をあっという間に殺ってしまってよ。儂は"あの方"の護衛だから動く気無かったが、リーダーまで殺られちゃ全滅だからよ。

 仕方なく出るしかなかった訳だ。"あの方"の許しを得たし、ここからは儂がお相手をする」


 カズトも男の本能からか強いヤツと戦える事に対して内心ワクワクしてしょうがない。恐怖どころか笑みが━━━口角が上がってしまう。

 そのワクワクしてたところに突然、瞳に痛みが走った。普段発動するも叶わない技術スキルが発動する。

【勇者の目】:勇者が半径3m以内に数分間いると自動発動し、相手が勇者だと知らせてくれる。隠蔽は不可能、何の勇者かも知らせてくれる。

 このスキルが発動したって事は目の前にいるコイツが勇者ってことか。そして、相手にも俺が勇者ってバレた事を意味する。


「へぇ、お前勇者なのか。それに"刀の勇者"ってそのまんまか。何で勇者が暗殺者と一緒にいるんだ?」


「儂も驚きじゃよ。暗殺する相手がまさか勇者だとはな。ふむ、"剣の勇者"なのか。羨ましいの、儂は格好までも指定じゃからの。この格好じゃなきゃ力が発揮出来ん」


 うわぉ、何とも不便な勇者なんだ。俺は"剣の勇者"で良かったと"侍の勇者"を見ると思ってくる。容姿までも指定ってどんなバツゲームなんだと感じる。


「御愁傷様です」


 俺は哀れみの表情でそう言った。お約束としてそう言わざる得ないと頭の中で瞬時に思ってしまった。そのせいか自然に心内で女神様に『ありがとうございます』とお礼をした。

 そうしたら『なら、マシュマロに饅頭をご所望します。待ってますので、お忘れずに』とシロから返事が帰って来た。これは帰宅した後、即座に送らないとマズイヤツだと忘れない様に心に決めた。


「笑いたければ笑えば良いじゃろう。こんな不恰好で、こんな頭で可笑しければ………こんな風に笑えば良かろう。あーはははははは………ハァ、グスン」


 "侍の勇者"は笑ったり泣いたりと意外に喜怒哀楽が激しい人だな。俺なら多分、そんな格好する位なら女神を呪って即座に死を選ぶと思う。










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