52食目、刺客を返り討ちにしました
【雷玉連弾】はそこそこスピードがあり、目の前にいる暗殺者共だけでも一掃出来るかと思っていたが目論見は甘かったようだ。
暗殺者共はナイフを器用に投げ、まるでピストルの弾同士が当たるかの如く全弾打ち落としたのである。これは暗殺者という職業が所持してる固有スキル【命中率上昇・高】や【クリティカル上昇・高】が働いたとされる。
カズトは知ってるが、実は暗殺者という職業は存在しない。職業ではなく、種族なのだ。暗殺族という種族で、先ほど述べたスキルを所持してる点と身軽さが優れてる点を除けば人間と見分けが付かない。
それともう一つ、暗殺族が熟練者になると【隠蔽】という魔法を覚える。これは姿だけではなく、匂いや気配に上位になると音も消せるという。
ただし、大抵みんなが種族ではなく職業だと勘違いしてる。それは暗殺族が、どこの出身なのか不明なのが大きい。
因みにモンスターでの"アサシン"はイタチ型モンスターらしい。速すぎてその姿を見た者は少ない。気づいた時には首と胴体が別れている。A級モンスターだ。
「野郎共、一斉に畳み掛けろ」
リーダーがそう言うと前からだけではなく、カズトの死角からも遠慮なく襲い掛かって来る。何か暗殺者よりは盗賊みたいに思えてきた。でも、盗賊よりは身体能力や練度は遥かに上だ。
油断してるとあっという間に自分の首が下に落ちてる可能性がある。誰かがこう言った、暗殺族は誰かを殺すために産まれた種族だと。まさにカズトもそう思う。
コイツらの動きはモンスターや動物を殺す動きではなく、種族を殺すため対人戦に特化してる。
だけど、カズトには関係ない。何処から襲い掛かろうと対応出来る。勇者のスキルに【絶対感知】があり、何処に隠れていようとも丸分かりで相手がどう攻撃するのかと大雑把に予知出来る。
「まぁこれがあるけどね。全方位電撃【雷鳴流し】」
タケノミカヅチを地面に刺すとカズトを中心とした半径30mのドーム状に電気が流れ、電気のドームが完成する。勢いが止まらない暗殺族は、そのまま餌食になった。
だけど、普通なら状態異常:麻痺になり当分は動けないはずなのだが多少ダメージを与えただけで動けている。
まぁそのはずで、暗殺族には様々な状態異常耐性を所持している。珍しい状態異常耐性はないが、麻痺ならお茶の子さいさいである。
「うーん?普通なら麻痺で動けないはずなんだけど、流石は暗殺族ってとこかな」
「ハァハァ、我等の事知ってるのですか?我等の事知ってるのは限られる」
「そりゃぁ、勇者やってるといろんな情報入ってくるよ」
でも、流石に人数が多すぎる気がする。【絶対感知】で数えてみた結果、ざっと50人はいると結果が出た。
うーん、何か面倒くさいな。俺一人を殺るために良くもまぁ集めたものだ。そして【絶対感知】によって分かった事だが、50人の中に圧倒的にステータスが高い者が二人いる。
おそらく、目の前にいる暗殺族リーダーよりも強いな。この二人のどちらかが"あの方"なのだろう。
「流石に多すぎる。ふぅ、減らすか。先ずは【絶対感知】」
【絶対感知】によるロックオンをリーダー以外に仕掛けた。これでリーダー以外はどんな攻撃でも当たる事が確定した。リーダーには後で"あの方"の情報を聞き出すために敢えて残しとく。
そしてカズトはタケノミカヅチを天空へと空高く掲げ一本の雷を上空へと放つ。そうすると、空は晴々してるのに光り出した。後は少し誘導してやれば━━━━
「落ちろ、そして轟け【落雷:落竜】」
タケノミカヅチを振り下ろすと何本もの(正確には49本)の竜を模した雷がロックオンした49人の暗殺者達に降り注ぐ。
端から見たら地獄絵図で、どんなに回避や防御を試みようとしてもロックオンされては逃げ切れず、雷の温度は三万度まで達する。受けた者の身は黒焦げおろかチリとなる。
「ふぅ、人数が多かったから疲れたな」
普通はこんな大魔法を放てば、一般の魔法使いなら魔力はすっからかんになり一歩も動けないどころか命に関わる。魔力切れは即ち"死"を意味する。
でも、カズトの場合は魔法ではなく聖剣の能力により、魔法に見えるが技術になっており魔力はほぼ使用しない。なので、どちらかというと集中し過ぎの精神的疲れの方が大半だ。
「な、なななななな、俺が選んだ精鋭達が跡形もく消されるだと!」
目の前の光景が信じられず、地面に膝をつき絶望の表情で固まってしまっている。
絶望する気持ちは良く分かる。それも狙ってわざとやったのだから。しかし、【絶対感知】で確認した二人の強者は残ってるようだ。回避したのか防御したのかは不明だが、そうでなければ面白くない。




