51、食材の調達後に刺客に襲われる
たまに勇者を暗殺しようと刺客を送り込むバカ者か愚か者がいる。でも、レストラン"カズト"を開業してからは一度もなかったもんで本当に狙われるのは久し振りだ。
「おら、出てこいよ。出て来ないとこっちから行くぞ」
いい加減我慢の限界でこちらから行くか?と思ってたら両手を挙げ木陰から五人程出てきた。服装から暗殺者か?でも、探知した人数はこの数倍はいたはずだ。俺の隙を伺ってるな。
「降参です。命だけは助けて頂けませんか」
「それなら魔道具を解いてくれ。それにまだ他に仲間がいるのだろう?」
刺客は「ちっ!」と舌打ちをし、半分程腕を挙げたのが合図で隠れている他の刺客がカズトの死角から弓矢を発射した。一般人か低ランク冒険者なら殺られていただろう。それほど練度が高い。
だが、カズトは勇者だ。そんなもので殺られはしない。死角から放たれた矢はそのまま避けずに鷲掴みし、矢を握り折った。これで正当防衛成立かな。まぁ暗殺者だし、殺しても文句言われないよね。
「ちっ!だが、こっちにはこれがある」
暗殺者リーダーらしき男が水晶玉とランタンを取り出す。
水晶玉は、"魔封じの宝玉"と呼ばれ文字通りに効果範囲にいる限り魔法使用不可能になる。
ランタンは、"スキル封じのランタン"と呼ばれこちらも文字通りスキル使用不可能になる。
どちらも希少価値の高い魔道具でなかなかお目にかかれない代物だ。暗殺者無勢がそんな高価な魔道具を所持してるとは到底思えない。バックに誰かいるに違いない。
「………良いこと教えてやろう。その魔道具は確かに厄介だが、俺には無意味だ(それでも転移は使えないけどね)」
「戯れ言を!勇者なんか魔法とスキルを使えなきゃただの人間だ。恨みはないがあの方のため死んで頂く」
あの方?やはり黒幕いるのか。その魔道具を所持してる時点で予測はしてたけど、暗殺者なのに案外口軽いな。バカなのか?バカじゃねぇのか。
「口では理解出来ないだろう。なら、実演してやろう」
カズトは空間に手を入れアイテムボックスから料理の聖剣"エックス"を取り出した。その様子に暗殺者軍団は驚きを隠せない。こっちに魔道具があるのだぞと言いたげな感じで口をパクパクしてる。
「ふむ、これでは心許ない。少し本気を出してやろう(ウソだけどな)」
こんな奴らに本気を出したら海の街ニィブルヘイベンが壊滅的被害を出してしまう。まぁでもコイツらを倒さない限り帰れそうにないし、そこそこ本気で相手するか。
「よし、決めた。形態変化、雷の聖剣"タケノミカヅチ"」
バチバチと空気中に電気が流れ刃を形成していく。その刃は黄色く輝き常に電気が迸る。触れただけで感電してしまう程に。
常に電気が流れてるため少し切り刻むだけで相手は状態異常・麻痺になる。ただし、ゴーレムや絶縁加工された防具だと効き目が薄い。でも、そこは力押しなり他の聖剣に帰るまでだ。
「チキショー、安物を掴まされたか!」
奴らは誤解してる。その魔道具は効いている。だが、相手が悪過ぎただけだ。
"魔封じの宝玉"と"スキル封じのランタン"は、鑑定すると次の風に鑑定結果が出る。
・魔封じの宝玉
効果:効果範囲100㎡の範囲の中でB級までの魔法の無効化
・スキル封じのランタン
効果:効果範囲100㎡の範囲の中でB級までのスキルの無効化
鑑定スキルを所持してないと誤解しやすい魔道具の代名詞の二つなのだ。カズトが魔法やスキルを使用出来たのもA級を使用したにすぎない。
暗殺者やその黒幕の誰かが鑑定スキルを所持してたなら絶対に使用しなかったであろう魔道具だ。一時期流行り一般な冒険者や魔術師は苦戦したもんだ。
でも、B級しか効果無い事が知れても今だに使用する者は出てくる。大抵の者はB級止まりで効果抜群なのである。それか効果内容を詳しく知らない者が使用してるかどちらかである。
A級魔法やスキルになると所持してる者は、勇者とその仲間やA級やS級と名を馳せる冒険者に騎士団長クラスに限られる。
「殺してしまえば同じだ。あの方のために、野郎共やっちまえ」
暗殺者軍団のリーダーが叫んだ。それが合図になり、一斉に襲い掛かって来た。
魔道具が効かないのが分かっても逃げずに挑んでくるか。よっぽど主人の忠誠心があるのか失敗すると殺されるかどちらかだろうな。
「ここは様子見で。【雷玉連弾】」
雷玉を複数出現させ発射した。一見魔法に見えるが魔法ではない。漁師達に蟹をご馳走するため焼く際に使用した【少火炎】と同じく全属性全部、低級しか使えない。まぁ例外としてアイテムボックス(S級)は使用出来るが。
なら、魔法じゃないとしたら答えは一つしかない。スキルなのだ。聖剣のスキルの一部を応用してるにすぎない。それもスキル封じのランタンを上回るS級だ。よって、魔法に見えるがスキルが正確だ。