表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/552

49食目、海の幸~カニを発見~

 リリーシアが新たな仲間に加わり、昼のピークを過ぎた頃カズトはお店をレイラとミミにお任せして、俺は海の街ニィブルヘイベンへと食材を入手に転移した。

 カズトの転移は細かく場所指定が出来ず目印として街や都又は国にしか飛べない。途中の街道に行くは逆に走った方が速い場合がある。それに王都周辺の広さしか飛べない制限もある。何気に転移と言っても不便なのだ。ミミなら全国一回行った事あるなら行けるらしく、羨ましいと思う。


「ふぅ、ここはニィブルヘイベンの………海辺か。取り敢えず、着いて良かった」


 海水浴という習慣はないらしく、ガランと海辺には誰もいない。その代わりに漁をやってる船がちらほら見える。

 その船の一隻がちょうど帰って来たようだ。良く見るとカズトとして良く知った船で、いつも海産物を直接買ってる漁師の船だと一目で分かった。特徴的な大漁旗に船体に同じマークを堂々大きく描かれている。俺は大きく手を振り合図を送った。

 因みに海産物と言ったが、この国だけではなく全国で地球と違い魚類しか取らないし、食さない。もし、魚類以外が網に引っ掛かると海に放り投げるか後程穴を掘って埋めるの二択だ。


「勇者のあんちゃんじゃねぇか」


「どうも、今日は獲れましたか?」


 カズトが尋ねると漁師のおっちゃんは渋い顔をする。これはもしや不漁だったか。運がない時に来てしまったか。


「あんちゃんの予想通りに不漁だよ。オマケに網が千切れて踏んだり蹴ったりだ」


 船を覗き見ると漁師のおっちゃんの言う通り網が無残な姿と成り果てていた。これでは、当分漁には行けないだろう。


「その代わりに海蜘蛛を駆除するために捕りまくったぜ」


 海蜘蛛?異世界召喚されて五年半以上になるが初めて聞く言葉だ。名前からして海に住む蜘蛛なんだろうけど、巨大蜘蛛型モンスターを討伐した事あるがあれは最悪だった。とても気持ち悪くもう出会いたくないモンスターの一つだ。生理的にあれは無理だと断言出来る。

 それに噂程度で一度も出会った事はないが出会いたくないモンスターがいる。それはビックコッコローチという超巨大Gである。もし出会ったなら俺は全速力で逃げると宣言しておく。



 漁師のおっちゃんが指した方向には"海蜘蛛"と呼ばれた物が大量に積まれており、これが網を切った犯人だと言う。しかし、カズトには見覚えがありありで、驚きで目玉が飛び出るところだった。

 何故なら日本では高級食材であり、嫌いな者は少数だろう食材でもちろん俺も大好物だ。それは蟹だ、蟹が大量に山のように積まれている。確かに蜘蛛っぽいと言ったら蜘蛛みたいな外見だが、これを食べないなんて勿体無い。


「すみません。これをぜひ全て頂きたい━━━いや、買い取りたい」


「あんちゃん、これをかい?でも、こんなの食えるのかい?そんなの聞いた事ないぜ」


 日本では、蟹を食べる物と定着してるから美味しそうに見えるが本当に知らない人が見たらグロテスクに見えけして食べないだろう。

 良く俺らの御先祖様は食べる気になったと思う。最初は初めてで始めないと先に行けない。そこで俺は簡易的だが調理して、ご馳走してあげよう。それで美味かどうか分かるはずだ。


「簡単にですけど、俺が調理しちゃいます。それで美味しいか判断してもらえばと」


「あんちゃんがそこまで言うなら騙されようじゃないか」


 俺は山となってる蟹を一つ手に取り驚いた。雑に積んでるのに足がもげてるどころか傷一つもない。正に新鮮そのものだ。

 鑑定したら海蜘蛛(蟹)と出た。どうやらどちらでも、間違ってはいないらしい。それに状態異常にも新鮮と表記されており腐ってはいない。それにしても状態異常で新鮮って何か違うような気がする。

 まぁこれなら生でもいけそうだが、念のため火には通そうと思う。カズトはアイテムボックスから七輪と網を取り出す。七輪の中に木炭を設置し、その上に網を乗せれば準備完了だ。

 火はどうすのかって?火なんかファンタジーなんだから魔法でね、ちょいちょいと着火すれば良いんだ。この時に魔法って便利だよね。


「火よ、灯れ【少火炎ファイア】」


 カズトは低級炎属性魔法である【少火炎ファイア】を唱え、木炭に引火させた。だが、実はというとカズトは勇者なのに魔法全般で低級しか扱えない。例外でアイテムボックスと転移は除く。


「さすがだべ。あんちゃん勇者だけのことはある。魔法が扱えるとはスゴい」


 人間が魔法を使用出来るのは、一般的に貴族や王族のみとされているので、こう魔法を使うと尊敬される事がしばしばある。


「そんな事ありませんよ。俺は必要だから覚えただけさ(低級だけって知られたらガッカリされるだろうな)」


 そんな事を考えるも、木炭が充分に燃え火が大きくなる。そこに蟹を足と胴体に切り分け網に乗せる。

 純粋な蟹の味を知るには、焼くに限るだろう。他にも食仕方はあるが、ここには道具がないし屋外だ。冒険途中でなければ基本的に自分の家か食堂や冒険者ギルドに隣接してる居酒屋で食べるのが普通だ。


「ほら、焼けたぞ」


 食べやすいように殻を取り除き中の身だけを与えた。カズトも久し振りに嗅ぐ蟹の匂いにヨダレが口の中に貯まってきた。あぁ~、早く食いたい。


「これが海蜘蛛━━━いや、カニだったな。では………」


 漁師のおっちゃんは蟹を口に入れた瞬間、石になったみたいに硬直して動かない。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ