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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

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SS5-1、猫又の行商

「にゃふふふふ、今日も儲けたにゃ」


 彼女は獣人族の中で行商を請け負ってる一族である猫又族で、名をライファン・トイヴァーン。猫又族の中でも、ズバ抜けて金好きで商品の目利きが群を抜いてる。


「姐さん、商品詰め込み終わりやした」

「姐さん、馬車の準備完了でさ。何時でも、出発出来まっせ」


 ライファンの部下である五郎丸と太郎が主のライファンに声を掛ける。馬車には多くの食品や日用品から武器・防具に魔物の素材等々ふんだんに乗せている。


「よし、お前達出発するにゃ」

「「イエッサァ~」」


 乗馬技術(スキル)を持つ五郎丸が馬を操り馬車が動き出した。普通、行商を行う場合専属の傭兵や冒険者ハンター冒険者ハンターギルドに依頼し、旅の道中の安全を護るものだ。

 だが、ライファンの率いる行商はライファンを含め部下三人だけだ。それはライファン達三人が獣人族の上位種族である獣妖族であるからして、その戦闘力は盗賊やそこら辺の魔物なんかなら赤子の手を捻るみたいに返り討ちなんて朝飯前だ。


「姐さん、今度は何処に行くんでしょ?」

「うにゃ?気になるにゃか?」


 ふぅ~と煙管を吹きながら疑問を疑問で返す。いつもはしないような質問だけに疑問で返してしまう。普段は良く言うと直感、悪く言うと行き当たりばったりで行く場所を決め売り仕入れをする。

 ほぼ100%の確率でライファンの直感は良く当たり、それでここまでの財と信頼を得て来た。


「ちょっと気になりまして。この近くって、まさかアソコに行くので」

「お察しの通りにゃ。たまには戻らねぇと怒られるにゃよ」

「それはしょうがないでありますね。姐さんの直感は良く当たるから、こちらも助かりまっせ」


 行者の五郎丸も何処に行くのか勘づき相づちを叩く。本当は行きたくないが、後から怒られるよりはマシだ。

 その直感も当たり、これから行く場所で怒られずに済んでしまう。あの者達が怒り出したら、いくらライファンでも止められない。


「ぐっへへへ、そこの馬車止まって貰おうか」


 馬車の前へ突然傭兵崩れだろうか?筋肉ムキムキの男達数人が馬車の通路を塞ぐ。仕方なく、五郎丸は馬を止め馬車が停止する。


「金目の物と女を置いて行け。言う事を聞けば命までは取らん」

「一応念のために聞きまっせ。あんたらは盗賊で間違いないんだな」

「盗賊でないなら俺達は何に見えるって言うんだ?ぐっわはははは」

「「そうだそうだ」」

「姐さん、聞きました?」


 ちゃんと聞こえていたらしく馬車の扉が開き煙管を吸うライファンが地面に足を着く。ライファンを見た傭兵崩れの盗賊達は唇を舌で舐め回し、ライファンの体を下から上まで観察する。


「おぉ、相当な上玉じゃないか。たくさん可愛がってやるから俺の女になれ」


 盗賊のお頭らしい常套句に何の興味もないままプカプカと煙管を吹かし続ける。


「お前達、我に言わにゃくても倒しにゃさいよ。そして、あんたにゃらもいい加減にしにゃさいよ。どうせ、初心者の盗賊の寄せ集めにゃから死ににゃくにゃかったら…………退け」


 怒気を含ませた声により、大気や木々は揺れ大地が地震みたく振動する。ライファンの雰囲気も変化した。二又の尻尾と髪は白く変色し、瞳は人間みたいな真ん丸な瞳から細長く変化し本物の猫が威嚇してるようだ。


「お頭、これヤバくねぇか?!」

「だ、大丈夫だ。俺達の方が圧倒的に多い。物量で押し潰せば━━━」

「ほう、そうかね。にゃら、殺ってみにゃさいにゃ」


 盗賊の誰もが気づきやしなかった。いつの間にか盗賊の懐━━━陣形の中央にライファンは入り込んでいた。

 盗賊達はまるで蛇に睨まれた蛙ならぬライファンに睨まれた盗賊と言ったところだろう。


「あぐっ」

「貴様ら、素人の盗賊にゃのか?子供の頃教わらにゃかったのにゃ?獣妖族を見た時には闘わずに逃げろとにゃ」

「そ、そそそその尻尾は!」


 盗賊の頭は自分の目を信じられず、驚愕した。ライファンの尾が一本ではなく二本ある事に。

 盗賊の頭が驚くのは無理はない。獣妖族の伝説は幼少の頃から伝えられてはいるが、その姿を見た事あるのは極限られた者か知らずに会っていたかのどちらかだ。その中で有名なのが猫又族なのだ。

 獣人族と獣妖族を容姿で判断する事は無知だと極めて難しい。容姿以外に違いがあるとすれば、使用出来る技術スキルと魔法位だ。


「知らずとはいえ、無礼を働いてしまいすみませんでした」

「命まで取らないにゃ。ただし、罰を受けてもらうにゃ」


 こいつらを殺すのは容易い。数秒しか掛からない。それなら死ぬよりも恐ろしい罰をあたえた方が自分がどんだけ愚かだったのか理解する事だろう。


「ふむ、此れくらいかにゃ?【おそれ:恐怖の種植え(トラウマ化)】」


 盗賊達には認識出来ないが、ライファンの掌にはドス黒い火ノ玉に似た何かが浮かんでいる。これを盗賊達全員の胸辺りに叩き込む。特にダメージはない。

 だが、今後同じ事をすれば今日味わった以上の恐怖心が襲い精神的ダメージをくらう。一生解ける事はない一種の呪いを与えてやった訳だ。

 盗賊達は逃げるよう立ち去り、ライファン達は馬車を進め目的地に向かうのだ。

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