SS14-14、銃の勇者=《塔》~銃vs《力》その5~
一体、何回ほど雷の上位精霊を回復させた事だろう。もう20回過ぎた当たりから数えてない。
「ハァハァ、いい加減に倒れてくれないか?」
「フゥフゥ、まだまだじゃ。お主こそ息が挙がっておるぞ?」
「ハァハァ、人の事を言えるか」
いくら、魔力無尽蔵といえる勇者でも体力や精神は消耗していく。
RPGやアクションゲームで、薬草や薬品でHPは回復する。アレは現実ではおかしい話だ。ケガや病気は薬で治っても体力や流れた血までは戻りはしない。
「次で最後だ。回復しろ、そして倒せ」
「それ何回目じゃ?」
「う、うるせい」
間髪入れず、雷の上位精霊に雷を放つ。いい加減吐きそうだ。感覚的に魔力は、まだあるはずなのに魔力酔いみたいな感覚に陥る。
「ハァハァ、さっさと行け」
『畏まりました。マイロード』
「なにっ?!」
2体いたはずの雷の上位精霊が、それぞれ吸い込まれるように融合した。
今まで、こんな事が起こった事は無かった。いや、今までは多くても3回復活させたところで勝負はついていた。
上位精霊で、こんなに長引く事なんて無かった。何回復活させた?くそ!覚えてない。
だが、驚くところはそこではない。言葉を発してる事だ。精霊は最上位になると、言葉を話す事を聞いた事あるが、俺のは上位精霊だ。
言葉を発する事は有り得ないと言いたいが、融合した事で最上位に進化したのか?分からない事だらけだ。
「これは面白い事になったのぉ。まさか最上位精霊に進化するとは!」
「ハァハァ、最上位なのか?」
「何じゃ?お主知らぬのか?上位精霊をも退ける程の圧倒的な圧と魔力が最上位精霊の証拠じゃ」
そう言われても分からない。何となく圧は感じなくもないが、魔力についてはからっきしだ。感じる事は出来ないから分からない。
「ハァハァ、初めての事だからな。俺も分からん」
「何と!初めてとな?それじゃぁ、その初めては余という事じゃな」
おいおい、勘違いされそうな発言をするな!観客席には声なんて届いてないと思うがな。それでも、知り合いがいたら、どうするんだ!
『恨みはないが、マイロードの命令でゆえ』
「いいよいいよ、やっと余よりも格上な相手と殺り合える時が来たんだ。こんな昂る事は、そうそうない。でも、2対1だと、卑怯かな?」
『いえ、もう斬りました』
再生で分裂した片方のアンリが胴体が上と下に別れている。胴体の切断面からブクブクと細胞分列する様に再生する。
何回見ても気持ち悪い。アレは夢に出て来そうなグロさである。一生慣れない。
「クッカカカ、これで3人目じゃぞ?」
『ならば、再生出来ぬ程に細切れにするまで【雷鳴無尽斬】』
俺の目には、雷の最上位精霊が一振りしか振ってないように見えた。だが、結果は先ほど再生した2人のアンリを細切れに、それが元々肉片なのかどうか分からない程に細かく切り刻んだ。
「余の目にも止まらぬ速さ………やるのぉ」
アンリは、【動体視力特化】の上位である【動体視力超特化】を駆使しても全部は見切れなかった。
『これで再生出来まい』
「強くてワクワクするのぉ。だから、勝てる訳じゃな」
『グハッ』
「なにっ!」
雷の最上位精霊はよろめき片膝をついた。一体何が起こったのか理解出来なかったが、顔を上げた瞬間にケンゴと共に驚愕な表情となった。
なんと目の前に広がる光景に対して理解が追い付けないでいる。一体何人いるというのか!アンリの人数が100人は雄に超えて佇んでいる。
「余もここまで増えた事は今まで無かったよのぉ」
『何とも生に貪欲な者よ』
「生物なら誰だって生に貪欲となるもの。余もその例外ではない」
最早、ケンゴは蚊帳の外状態となっている。雷の最上位精霊が動くための魔力タンクと化しており、勝利の祈りしかやる事がない。
『ならば、死よりも残酷にしてしんぜよう』
雷の最上位精霊が剣を上段近くで平行に構えた瞬間に全ては終わっていた。
『奥義【無限帯電並列斬り】これに斬られた者には、常に雷が帯電する』
アンリ1人を残し、全てのアンリが常に感電してる状態で動く度に激痛を伴う。
「これはエグいな」
再生しても意味をなさない。感電によって壊死した細胞が再生しても直ぐに感電して壊死に至る。永遠と続く破壊と再生に絶望しかない。




