バレンタインSP2020
バレンタインに間に合いました。
主人公を含めた男性キャラは出て来ません。女同士でチョコレートを作ります。
ほぼ本編には関係ありませんので、時系列が変かもしれませんが気にしないでください。
ここはレストラン〝カズト〟にあるとある一室。ミミの魔法により女性従業員しか入れないようにしてる。
その部屋に女性従業員一同全員揃ってる。カズトにバレないよう仕事の終了後や休憩中に集合してる訳だ。
「皆さん、集まってますね」
「ふぁ~、眠いから帰って良い?」
椅子に器用に座り今にでも寝てしまうそうなミミ。どうやってバランスを取ってるのか疑問に思う程に座ってる。
「ダメです。ミミがいなくなったら、この部屋が使えないのですから」
「ねぇ、レイラ。こう魔法でばぱっと作らない」
「こういうのは手作りの方が心がこもるって言うわ。まぁ、あなたが魔法で作れるって言うのならそれでも良いけど?」
レイラもそうだが、ドロシーはレイラ以上に料理が苦手だ。ドロシーが料理をすると高確率で爆発する。
「うぅっ……………それはそうだけど…………」
「という訳でミミ先生お願いします」
「わーい、パチパチ」
「何で妾まで…………姉さんがやるなら妾もやるしかないかのぉ」
子犬みたくはしゃぐルーシーと反対に気だるそうにしてるルーシア。この二人は一見リリーシアの方が姉に見えるがルーシーが姉だ。
とある事情でルーシーは種族を魔族に変えられ犬人族と魔族の姉妹となっている。
「ルーシーもカズトに手作りチョコレート作りたいわよね」
「うん、勇者様に作ってあげたい。リリーシアも作ってあげたいわよね」
「うっ…………姉さんが言うのであれば…………作ってあげても良いのじゃ。せ、世話になっておるしのぉ」
魔族の本能からか勇者には感謝を述べたくない。だけど、愛しのルーシーの側にいる時は勇者に悪口は禁句に暗黙の了解となっている。
もし、悪口を言った時にはルーシーから怒りの言葉が降りかかる。それがリリーシアにとってトラウマになってる。だけど、カズトから見たらルーシーの怒り方は可愛いと思ってる。まるで魔族であるリリーシアの手綱をルーシーが握ってると内心微笑んで見守ってる。
「それで〝チョコレート〟とは何じゃ?知らないはずなのじゃが、なんか甘美な響きがするのじゃが………」
魔族と言ってもリリーシアも女の子だ。女の子の本能からか無意識に〝チョコレート〟という言葉に過敏に反応している。
「甘い物は女の子全員好きですから」
「リリーシア、チョコレート知らないの?チョコレートはこれだよ」
流石は犬人族と言うべきか!匂いでチョコレートが部屋の何処かにあるか当ててしまった。
冷蔵庫が部屋隅に設置してあり、人間からしたら冷蔵庫に入ってる状態だとチョコレートの甘い匂いを感じる事は出来ない。犬の嗅覚は人間の嗅覚の何千倍あるらしい。ただし、高レベルの鑑定を犬人族にしないと表示されない。
「スゥはいないのか?」
「スゥは…………はぁ~、興味ないってさ」
残念そうにルーシーがため息を吐いて答える。
スゥは粘妖族で魔物のスライムと違い人間形態を取れる。雌雄同体でもあり、男性と女性どちらにも瞬時になれる。
今現在は常に何故か女性形態で、たまにカズトが目のやり場に困る事がしばしば起こる。
「わ、私にも出来るであろうか?」
「ユニ隊長、私も料理下手ですからミミ先生に一緒に習いましょう」
「姫!私は、もう城の騎士ではありません。ユニと呼んでください」
ユニは赤薔薇隊という女性だけの騎士隊の元隊長だ。騎士隊の花形である赤薔薇隊隊長を辞職願いを出したが、周囲からめちゃくちゃ反対され説得された。
それ故にレストラン〝カズト〟に戻ってくるまで時間が掛かってしまった訳で、このメンバーの中では一番の若手だ。
それに今まで騎士として剣を極めてきたせいか、料理はてんで苦手でレイラの誘いに乗ったのだ。
「ふぁ~、眠いから早く始めないなら帰る」
「あぁ~、ミミ先生待ってください。皆さん、さっそくやりますよ」
レイラに止められ面倒くさそうにチョコレート作りをレクチャーするミミ。
今日教えるのは、チョコレートを湯煎で溶かし型に流して固める簡単なものだ。ただし、それでもレイラ・ドロシー・ユニの三人に作れるのかミミには不安しかない。
その逆にルーシーとリリーシアの子供タッグは、ミミの言う事を聞き順調に失敗もせず進めていく。一口サイズとして小さな型をいくつか選び、溶かしたチョコレートを流し込み冷蔵庫へ入れ固まるのを待つばかりだ。
「はぁ~、子供二人には出来て何であなた達には出来ないのですか?!いい加減帰りたくなってきました」
「ま、待ってください」
「うぅ~、こんなはずでは」
「ぐっ…………子供二人に負けるとは情けない」
レイラ達三人が作業してた場所を見ると悲惨な一言しかない。それでも最終的に不恰好であるが、味は兎も角として形には出来た。
バレンタインデーの日、仕事が終わった頃にカズトを呼び出して全員で渡した。因みにミミ一人だけ本格的なフォンダンショコラを予め作っておいたのだ。
その場で感想を言う事になり、ミミは美味しいの一言に尽き絶賛だった。ルーシーとリリーシアのチョコレートは可愛く、頑張ったご褒美に二人の頭を撫でまくった。
残りの三人のチョコレートを見ると、カズトは苦笑いを浮かべる。折角作ってもらった物だからと、それぞれ三人のチョコレートを手に持ち意を決して食べる。
無言のまま部屋を退出し、そのままトイレへと直行した。後々、カズトから"もっと頑張りま賞"として"猿でも判る料理"という料理本を手渡したらしい。
次は一ヶ月後のホワイトデーも書く予定です。




