SS14-13、銃の勇者=《塔》~銃vs《力》その4~
「これは雷の上位精霊!」
ケンゴが撃った弾から出現したのは雷の上位精霊。上位精霊の1種で物質体ではなく、精神体であり、【物理攻撃完全無効】を持つ存在であり、とある地方では天使や神と崇められている。
「切り札は隠し持っているものだぜ。まだ、2体が限界だが、そっちが2人だから文句はねぇよな」
「確かに、これは厄介じゃが…………「必ず倒せぬ訳ではない」」
「お前ら、いけ。必ず倒せ」
『『ギャァァ』』
ケンゴの命令で、雷の上位精霊2体は動き出した。各々のアンリに向かい大剣を振り下ろす。
本来ならこれで終わりだ。上位精霊に物理攻撃は効かない。魔法耐性も高い。アンリが放った魔法では打ち破れない。
それに俺が出せる上位精霊の中では、1番の速度を持つ。いくらアンリが速度を強化しようとも追い越す事は不可能だ。
ガキン
「なにっ!防いだだと!」
「なに驚く事がある?切り札が、お主だけと思うたか【拳気:双龍の盾】」
『『ギャオ?』』
アンリの両腕と両足に赤黒い流動する何かに覆われている。両腕を頭上でクロスさせ、雷の上位精霊の大剣を受け止めた。
ギギギギギギギギ
まるで金属同士で押し合っているかのような金属音ぽい音が鳴り響く。
「これは『拳気』という。我々、女狂戦士族の中でも選ばれた者にしか扱えん。お主の世界にも『気』の使う者が居ったと聞く」
いやいや、確かに地球でも『気』の達人とか聞いたりするけど、それは呼吸法だったり内蔵や筋肉の使い方が上手い者達だ。
実際に目で見えて分かるものではない。この世界みたいにファンタジーではないのだから。
「おらっ」
大剣を押し返し、雷の上位精霊が後ろへよろけた。その隙を超武闘派であるアンリが見逃すはずがない。
「うふっ、やはり戦いは良いものよのぉ。こんな化け物と戦えるとは嬉しい限りじゃ」
うわぁ、アンリが満面な笑顔を浮かべている。普通なら上位精霊と出会ったら絶望するしかない。今は見方として雷属性の弾を媒体に呼び出しただけ。
俺でさえ敵に回したく無い魔物や種族とも分類されてない精神体。
そんな化け物を召喚した代償として、召喚した本人…………俺は、その間動けない。
顕現してる間、俺から常にエネルギーを食っている。それ故に、動けない
「どっちが化け物なのか分からん」
「化け物とは酷いのぉ。上位精霊は物理以外は普通に効くのじゃよ。余の拳気も通るしの【拳気:百裂拳】」
目に見えぬ程の拳の連打が、雷の上位精霊の懐に怒涛の如くめり込んでいる。
「「ほあっちゃ」」
最後の一撃を喰らわしたところで、雷の上位精霊2体共吹き飛び、観客席の壁へ激突した。
「途中で分かっていたけど、それでも今起きてる事が理解出来ないな」
ポリポリとケンゴは頭を掻き、吹き飛ばされた雷の上位精霊を見詰めていた。
「たくぅ、さっさと起きろ。エサを与えてやるから」
ケンゴが、いつの間にか両手に銃が構えており、面倒臭そうに電撃を雷の上位精霊へ発射した。
『『ギャォォォォォ』』
何も無かったかのように立ち上がった。むしろ、パワーアップしたかのように、一回り大きくなって立ち上がった。
「くすっ、面白いのぉ。何回倒したら消滅するんじゃ?」
「そうだなぁ。俺の魔力が尽きるまで?まぁ俺の魔力を食えば食う程、強くなっていくから。俺を倒した方が早いぞ」
「そんな詰まらん事はせん」
そうだった。こいつは戦闘狂だった。こんな美人でエロい女が、戦闘中でも戦闘狂だと、つい忘れてしまう。
「「さぁ来い」」
『『ギャオギャル』』
ナメられたと感じた雷の上位精霊は『『ふざけんな』』と言っている。上位精霊は主と認めた者には意思疎通が出来るようになる。
上位精霊にも騎士や魔法使いなどの役割を持った存在がいる。それが、俺が呼び出した2匹の雷の上位精霊である雷の騎士精霊だ。
『ギャルルル』
「【拳気:双龍の盾】さっきよりも重く、早い」
ガキンガキンガキンガキン
赤黒い両腕に雷の刃が、また防がれたが、今度は連撃に切り替えた。目に止まらぬ測度で振り上げ振り下ろすを繰り返す。
「うぉぉぉぉぉ」
『ギャルルルルルル』
徐々にアンリの身体が沈み、両腕の防御が維持出来なくなり容赦ない雷の一撃を喰らい地面に叩き付けられた。




