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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

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SS3-3、魔王の娘の軌跡~剣の勇者に辿り着くまで~VS黒騎士隊隊長

 リリーシアが魔剣グラムを構えるのを見たベアードは魔槍をバトントワリングのようにクルクルと回し槍の先端をリリーシアへ向け、何時でも戦闘に入れるよう構える。


「リリーシア様、ケガをしても知らないぜ。今なら大人しく捕まってくれるなら━━━」

「五月蝿いのぉ。大人しくしたところで死ぬのは変わらないのじゃろう?お主が言った事ではないか。なら、戦う事しか選択肢がないと思うかのぉ。それにお主の魔槍ゲイ・ボルグは粗悪品じゃて、そんな物を大事にしてる輩に負ける積もりは更々ないのぉ」


 わざとらしく挑発してみる。

 黒騎士隊の隊長となれば、こんな見え透いた挑発には普通は乗らない。戦闘力は勿論の事、メンタル面でも強靭でないと黒騎士隊には入隊出来ないし、隊長には専らなれやしない。


「よくも我が槍を侮辱したな!なら、見せてしんぜよう。千年に一人の逸材と称された俺の槍捌きを」


 ベアードの雰囲気が変わった。リリーシアがピリピリと痛く感じる程、ベアードの威圧感や殺気が肌に伝わって来る。

 だが、ステータス上で上回っても冷静に判断出来ないと格下に負ける事だってある。まぁステータス上でもリリーシアの方が上だとはベアードは夢でも思わないだろう。


「ほぉ、面白い事を言うものじゃ。そんな粗悪品で負ける妾ではない」


 魔族の姫よりは悪女ぽくベアードを煽る。

 聖武器は勇者専用の武器なので、オリジナル一本しかない。だが、適性があれば誰でも使える魔武器には"聖気品ネオ・オリジナル"と呼ばれるオリジナルと近い性能を持つ物と明らかに性能が落ち壊れ安い"粗悪品デッド・ゴースト"がある。

 まぁ何も付与されてない武器よりは"粗悪品デッド・ゴーストの方が強い。

 因みにリリーシアの魔剣グラムは"聖気品ネオ・オリジナルであり、魔槍ゲイ・ボルグはリリーシアの推察通りというよりは鑑定通りに"粗悪品デッド・ゴースト"だ。


「そこまで死にたいらしいな。なら、お望み通りに死ねや」


 腐っても黒騎士隊の隊長だ。踏み込みだけで地面が陥没している。ただ、素直に真っ直ぐ突っ込んで来てはリリーシアにとって避けて下さいと言ってるものだ。

 それでも一般の魔族や人間だったなら、今の突きで串刺しになっていた。だけど、ステータス上格下な相手の場合だ。格上であるリリーシアには全て避けられるか魔剣グラムによって弾き返されるかのどちらかだ。

 魔剣グラムの刃と魔槍ゲイ・ボルグの矢尻が衝突する音は、けして小さいものでない。それなのに誰一人とて見に来る者は皆無で月明かりが二人の影を投影してるだけだ。


「ハァハァ、何故当たらない。俺は黒騎士隊隊長だぞ。こんな小娘なんかに遅れを取ってたまるか!」

「それはお前が弱いだけじゃないかのぉ」


 ビュンとリリーシアの斬撃がベアードの頬を掠める。微かに頬が切れたようでツーっと頬に赤い血が垂れる。

 格下と思ってるリリーシアにキズを付けられた事に、どうしても信じられず頬を触り指に血がこびりついたのを確認する。


「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 まるで某サスペンスドラマの殉職シーンみたく叫ぶベアード。もし、ここにカズトを含む勇者の誰かがいたなら大袈裟と笑いながら言い放っている。


「五月蝿いのぉ。そんなキズ一つで騒ぎ立てるな。妾の耳がおかしくなるわ」

「父様にだって殴られた事ないのに、良くも俺にキズをつけたな」


 リリーシアは相手を蔑む冷たい目になり察した。コイツは親のコネで黒騎士隊の隊長に成り上がったのだと。

 どうりで弱いはずだし、魔武器の"粗悪品デッド・ゴースト"を侮辱され怒る訳だ。精神がお子様なのだ。

 それでも、一般の魔族よりは強くしかも親のコネでコイツが不正をしても誰も止める者がいなかったのだろう。厄介きまわりない。


「…………(もっと楽しめると思ったのじゃが、そもそも実力が無かったとは…………詰まらんのぉ)」


 リリーシアには、この世で嫌いな事が二つある。一つ目は暇だ。魔王が死ぬまでは勇者を含め挑戦者が後をただなかった。それを密かに見るのが楽しみであった。

 今となれば、魔族領を脱出した後に魔王を倒した勇者にたどり着くまで一人での冒険を楽しむ積もりである。

 二つ目は、目の前のベアードのように実力に見合わない地位やそれらをあたかも自分の実力だと自慢する輩が嫌いだ。

 なので、最初はリリーシア自身も理由は解らなかったが、ベアードとの決闘を続ける度にイライラが積もって、今はもう爆発寸前だ。


「もう詰まらぬ…………詰まらぬぞ。いい加減、魔槍ゲイ・ボルグの技術スキルを使ったらどうなのだ?妾がそれを撃ち破って………それで勝負は決まりじゃ」

「何処までも俺をコケにしやがって。良いだろう、そこまで見たいなら見せてしんぜよう」


 リリーシアの挑発にまたもや乗るベアードの額には憤怒のパラメーターが振り切ったかのように血管が浮き出て今直ぐにでも噴火するみたく顔が真っ赤かに染まってる。


「貫け【絶対必中の一突き(ゲイ・ボルグ)】」


 "粗悪品デッド・ゴースト"ながらも超強烈な技術スキルは変わらない。ベアードが叫んだ通りに、どんな角度から放っても100%心臓に命中する。

 そんな技術スキルを今から放たれてようとしても、リリーシアは笑ってる。【絶対必中の一突き(ゲイ・ボルグ)】が決まった瞬間、死ぬというのに笑ってるのだ。


 【絶対必中の一突き(ゲイ・ボルグ)】が放たれた後も動かないリリーシアを見て勝ったと思ったベアードだが、血を吐いて倒れていたのは自分である。

 いつの間にか鎧下の体を切られており、ベアードが倒れた所には血黙りが出来ている。このままでは、ベアードは血の出し過ぎで死んでしまうだろう。

 そんなベアードを振り返らず、リリーシアは魔族領を後にする。ベアードが死んだのか生きてるのかリリーシアの耳には憎っくき勇者の下へたどり着く冒険の途中一切届かなかった。



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