266食目、魔法剣
「さて、次はこっちから行く」
【貯蔵】していた技術の中で、今回ピッタリな物があった。
「【消失】これをキャンサーに貼り付けてと」
淡い光が刃を包む。
「させん、【鉄弾霰】」
「さっきのを見てなかったのか?」
キャンサーを1振り、全ての銃弾が消失した。だが、それだけで終わらなかった。
「見つけた」
隠れてた《世界》の姿が顕になった。どうやら銃弾を消失したのと同時に隠れ蓑にしていた異空間も消失したようだ。
「チッ、ワタクシが銃だけかと思ったら大間違いです」
銃を投げ捨て、その代わりに取り出したのは刀身がない柄だけの魔道具。
「魔法剣か」
魔法剣は、魔力の刃を作り出す魔道具。一般的な刀剣類とは違って、好きな形にする事が出来る。
その性質上、物理では切れない幽霊系に有効で、しかも偶然かもしれないが【消失】との対抗手段の1つとなっている。
「そうよ、最近開発されたばかりの新モデル。まだ発売してない代物よ」
魔法剣は、隠れコレクターがいる程に密かなブームが来てる。1つ所持してれば、冒険者の箔が付く。
ただし、結構な値段がするそうで豪邸1軒は建つだろう。それに魔力は誰にでもあるもの、それは誰にでも扱える事を意味する。
「そんな物をどうして持っている?」
「教える訳ないでしょ。バカなの?」
まぁ凡その想像はつく。おそらく魔道具の世界一な生産国は帝国ブレインズしかない。
あそこは俺の妹を召喚した国で、他の2人の協力の下、脱出したらしい。妹の話では期間的には、まだ国全体で大規模な幻影に掛かってるはずだが?
「ふむ、森精族の元女王が、そんな物を使うとは。空間魔法以外の魔法はどうした?」
魔法大国マーリンで会った時からおかしかった。あの時は、まだ森精族の元女王だとはしらなかったが、女王を務めたとなると相当な魔法の使い手のはずだ。
精霊魔法を1番得意とするが、その他の属性魔法も十二分に宮廷魔導師並に扱えるはずなのだ。
「それは、今関係ないだろう。ここで死ぬ事には変わらないのだから」
「そうか。そっちこそ、死んでも文句はないな」
売り言葉に買い言葉、カチンと何かが切れるような音がしたような気がして買ってしまった。
「ワタクシの魔法剣はひと味違うぞ」
魔法剣の刃は特定な形を持たない。使い手のイメージで、どんな形状にでもなれる。
剣と名が付いてるが、別に剣として扱わなくても良い。実例では、戦鎚や戦斧として使用してた冒険者だっている。
《世界》はどんな風にして使うのか?少しワクワクしてる自分がいる。
「伸びた!それに、曲がった!これは、ムチか」
最も軌道が読み難い。手首の捻り方で簡単に打った後でも軌道を変えられる。
それにムチは音速を超える。武器の中では最速を誇る。それと、これは魔法剣という事を忘れてはいけない。
ムチの縦横無尽な軌道と音速に斬撃と収縮が加わる。これ程、厄介な武器は中々無い。本来なら手元に戻す際に隙が生じる。
だが、手元に戻す時に一旦魔力を切れば良い。そして、瞬時に構成すれば連続的に放つ事が出来る。それに何度も言うが、これは魔法剣だ。イメージ次第では、もっと厄介な事になる。
「どう?これを避け続けられるかしら【茨鞭】」
「ぐっ!」
銃なら弾を真っ直ぐに発射して、まだ読みやすかったけど、こうも軌道が縦横無尽に変化しては堪らない。
「流石は元女王なだけはある。どれだけ魔力を持っているんだ!」
名前の通り魔力を使い発動するが、ただ単に剣や斧等の形を固定すれば、それ程魔力消費は少ない。
だが、《世界》のようにON・OFF を繰り返し伸縮や途中から枝のように生やす行為は、魔力をバカ食いする。
「フッハハハハハハハハ、どうした?勇者とはこんな程度なのか?」
「しゃらくせぇ」
【消失】でも魔法剣によるムチが消えない。だけど、倒すために維持しないとしょうがない。
「仕方ない。これを使うか」
切り取れるのは別に技術やステータスだけじゃない。魔法も例外ではない。
「昔切り取った………………あった。炎魔法【火炎旋風】」
《世界》に向かって【火炎旋風】と記載されてる紙を掌底みたく掌で叩いた。




