263食目、巨蟹宮の聖剣キャンサー
「チッ………外れたか」
どうやら俺を閉じ込めていた世界とやらは俺から見えていた《世界》と実際の位置と誤認させるような効力もあったみたいだ。
「まさか壊されるとは思ってもみませんでした。念の為に誤認させるようにして置いて正解でした」
「ほざけ。壊されるのも計算の内だったろ」
「まさか!世界を壊すなんて力業で成し遂げられるのは片手で数えられる程しかいません。自分の世界で書き換える方が、まだ現実味があります」
前者なら本当だろう。だが、後者なら少しウソをついてる。そんな事、1%も思ってないはずだ。何故なら、今の状態で俺は世界を作り出せないのを知ってるからだ。
世界を作るには、属性系以外の何かが必要だ。俺ならシリーズ系黄道十二宮の白羊宮で世界が作れる。
つまり、今風しか使えない俺は世界が作れない。その結果、強引に力業で破るしかなかった。
「でも、それもここまでのようです。【風龍王の加護】が薄れて行くのを感じます」
「チッ」
バレてる。
【嵐斬弾】一発でキレそうだ。ここまで燃費が悪いとは思ってもなかった。俺だけでは魔力を制御する事は叶わずに【風龍王の加護】内に秘められた魔力も使ってしまったらしい。
「どうやら【風龍王の加護】は無くなったようです。もう何も出来ませんね?」
本来なら絶望してもおかしくない場面だ。だが、忘れてる。【風龍王の加護】は俺のじゃなくてスサノオが俺に貸したものだ。
それが消えたという事は、スサノオは消えてるという事。それはスサノオという制限が無くなった。
まぁ奥義の1つのはずが逆に自分の首を絞めた形となってしまった形となったが、それはもうない。
「来い、聖剣エックスキャリバー」
カズトが、右手を握り胸の前へ突き出し叫ぶと光と共に塵が集合し1本の剣を形成されていく。
「なっ!それは」
「スサノオがいたから無理だったが、スサノオが帰って制限は無くなったから呼び戻せた訳だな」
まぁ成功するか半々と言ったところだったけど、本当に成功するとは思いもしなかった。
「くっ…………まだ転移するのに時間が掛かるというのに」
これはスサノオに今度ご馳走しないと怒られちゃうな。
「先ずは、この鬱陶しい【時間停止】だったか?それを解除するか」
【風龍王の加護】では、自分しか出来なかったが、これから出す聖剣で解除出来るだろう。
「巨蟹宮の聖剣キャンサー」
聖剣エックスキャリバーが、カズトの身長をゆうに超える巨大なハサミへと変貌した。
「巨大なハサミだと?!それで、どうする積もりだ」
「こうするのさ。【切取】」
シャキン…………シャキン
紙でも切るように巨大ハサミの開閉を繰り返す。そうすると、今まで灰色だった景色が色を取り戻したかのように次々へと時間が動き出す。
「ふぅ…………こんなものか」
「なっ!一体何をしたの?!」
「何って時間の停止を切り取ったのさ。この巨蟹宮の聖剣キャンサーの技術は、【切取】と【貼付】、様々な物を切り取り、それを違う物に貼り付ける事が出来る能力。切れ味だけなら全刃物の中でトップのはずだ」
もし聖武器に【不壊】が付与されてなかったら破壊出来るはずだ。
「でも、随分と使い難そうな形状をしてるように見えるわ」
「何か勘違いしてないかい?これは分離出来て、本来は二刀流として使うのさ」
互い違いに止めてあった金具が外れ、2本の剣というより刀に変わった。
「時間が動き出したから、援軍が来るのは時間の問題。潔く捕まるのなら良し。そうでないのなら」
「そうでないのなら?」
「死ぬより恐ろしい目にあって頂く事になる」
死より恐ろしい事で1番始めに思い付く事は、拷問で良くやる手だ。死なない程度まで痛め付けて回復魔法にて回復させる。
そして、また痛め付ける事を繰り返す。これにて、精神を心を壊す。
後、カズトが思い付く手段としては2つある。
1つ目は、幻覚を見せ相手が最も嫌う光景を強制的に見せる。そして、同じく精神を心を壊す訳だ。
2つ目は、おそらくカズトしか出来ない方法。今、展開してる巨蟹宮の聖剣キャンサーによる【切取】にて相手のステータスや魔法・技術を切り取る。
ステータスは、この異世界で最も生きる上で重要な要素である。それを切り取られ無くなるのだから死よりも残酷だ。




