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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
5章神樹の森フリーヘイム

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262食目、やったら出来ちゃった

 ガキン…………ガキン


 切れないと分かってはいるが、何度も脱出の為に試したくなる。風の刃で切り付けてるが、時折腕がジーンと剣で何回も硬い岩を切り付けたような痛さが生じる。


「ぐっ…………」

「諦めが悪い子ね」

「俺の辞書には、諦めという文字はないんだ」


 誰もが努力してる、諦めないと口だけで言うが行動に移せる者は数少ないだろう。

 カズトは、魔神教会教祖であり実の姉であるカノンの実害で努力・諦めないという選択肢しかなかった。

 あそこで努力を放棄したり、諦めていたら…………おそらく廃人となり自殺を選んでいたかもしれない。

 まぁ自分1人だけだったならの話だ。実妹であるリンカと友達や先輩・後輩に恵まれて、今の俺がここにいる。


「クスッ、何で他の技術スキルを使わないのかしら?」


 分かってるくせに。


 使わないんじゃない、使えないんだ。《世界ザ・ワールド》による【時間停止タイマストップ】と俺を閉じ込めてる世界の2重拘束により他の技術スキルが使えないでいる。


時間停止タイムストップ】によりスサノオが今でも止まっており、聖剣の中へ戻せない状態である。

 スサノオも一緒に時間を切り裂けてれば上々だったんだが、そうも上手く行かず自分の時間しか切り裂け無かった。


 それに、今現在物理的に俺を閉じ込めてる世界は、俺の力全てを外に漏れ出さないように設計してあるようだ。

 スサノオがいれば、外と中から切り避けたものを…………いない者を今更嘆いても仕方ない。


「あらっ?諦めたのかしら?」

「うっうるさい」


 諦めた積もりは更々ない。


 もっと……………もっと身体周辺にある風属性の魔力を高密度に指先だけでも良い。

 圧縮して貫通力に特化した風の弾を精製するのだ。イメージは……………そう、弾丸を撃つ、拳銃のイメージをしろ。

 狙いを定めろ。集中しろ。これが、真面に使う初めての魔法だ。

 まただ、まだ魔力を貯めるんだ。そんなんじゃ、この世界は壊せない。


 今まで魔力を自発的に使ってないせいか、魔力を1箇所に溜めるのが随分と遅く感じる。

 魔力量はあるのに、これでは宝の持ち腐れだ。技術スキルで魔力を使う際は意識して使ってはいない。自動的に捻出される。

 これ程に魔力を使うのが難しいとは思わなかった。自動車のオートマとマニュアルみたいだ。


 ふと《世界ザ・ワールド》の方を見詰めると、呑気に本なんか読んでやがる。

 ふざけやがって!今に見てろ、これで脳天をぶち抜けてやる。


「何をやってるか分からないけど、何をやっても無駄よ」

「ほざけ、今に見てろよ。度肝を抜かしてやる」


 だが、そうは言ったものの……………やはり魔力を集めるのが遅い。遅過ぎる。実戦では、使い物にはならない。

 だから、今の状況に感謝してる。これが最初で最後の放つ魔法になるのだと。

 そして普段は感じる事のなかった体内にある魔力の減り具合が、今となって感じるとは皮肉なものだ。

 体内の中心から指先に向かって行く何かが魔力なのだろう。ミミが言うには、魔力を感じる事こそが魔法を使うための第1歩だと。正にその通りだ。


 簡単そうで難しい。頭から手足の指先までの血管を流れる血液を感じろと言われても到底無理な話だ。

 本来は魔法を使える者に魔力を身体に流して貰い、魔力が流れる感覚を掴む練習が必要となってくる。

 それに、魔力の扱いに慣れてないと魔力酔いを起こす。乗り物酔いを1段階強くしたような気分だ。


「うっぷ」


 気持ち悪い。吐きそうだ。だが、勇者には許されない。勇者には魔力酔いにも耐性があるようで、直ぐに治まる。が、また数分間置きに吐き気がぶり返して来る。


(こういう時に思いっきり吐いた方がスッキリするのに)


「はぁはぁ」


 だけど、今更止める訳には行かない。今で、およそ2割程指先に魔力をチャージが出来た。


「これで充分か?」


 勇者が持つ魔力量は、魔導師数千人単位とも数万人単位とも言われている。その2割としたら、誰が受け止めるのか?


「無駄だと何で分からないのかしら?」

「やってみないと分からないだろ?」


 指先を《世界ザ・ワールド》の眉間に合わせ、発射した。


「いけぇぇぇぇ【嵐斬弾テンペストショット】」


 一旦、世界の壁に阻まれ勢いは止まるが、回転は止まらず徐々に進んで行き、世界の壁にヒビが入った。


「そんな馬鹿な!」


 自分の作った世界に異変が生じて気が付かない程、鈍感ではない。再度、ヒビが入った箇所を修復しようとするが間に合わない。

 カズトを閉じ込めた世界は、ガラスが砕け散るみたいに見事粉々に粉砕された。

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