256食目、スサノオ
さてと、どうするか。普通に技を放っては転移させられ跳ね返って来る。
あれを破る話は簡単だ。方法は3つある。先ず1つ転移の穴で転移出来ない程の物量を放つ方法。
2つ目、転移の穴の属性と反対の属性技を放ち無効化させる方法。
3つ目、前記の2つ以外の方法で破る方法。
1つ目は、現実的ではない。あれを打ち破る物量となると、おそらくここら辺一帯を覆い尽くす程の量となる。
2つ目は、勇者が魔法を得意とするならアリだった。だが、現実的は魔法は不得意でカズトも例外ではない。よって、不可。
3つ目、それ以外の方法となる訳だが……………実は可能性があるものがある。それは、奥義又は裏技術かシリーズ系の3つだ。
「試してみるか」
「何をやる気か知らないけど、それをさせる程ワタクシは甘くない」
《世界》が二丁拳銃を構え、ぶっぱなした。まだ拳銃だから助かってる。これがガトリングガンなら風穴を通り越してチリになっていたかもそれない。
「防御技【風流壁】」
カズトは、スサノオの刃に風の渦を纏わせ、それを何もない空間へと斬り付けるように振るった。
そうすると、スサノオの刃が通った箇所には風の渦が発生し、本当に空間が斬り付けられた状況になっている。
それを幾重にも重ね、前方からはカズトの姿は確認しづらくなっている。
「それが切り札って言う訳?」
《世界》が放った銃弾は、【風流壁】に阻まれカズトには届かない。
風の渦に銃弾が吸い込まれ、渦の中で銃弾は粉々にチリへと変わった。
「これが切り札と思うか?もちろん違うが?今から見せるのが切り札の1つだ」
カズトは、スサノオを目線と同じ高さで平行に構え、刀身を右手の人差し指と中指で触り、スーッと拭くようになぞった。
「カズトの名が命じる。風の聖剣よ、真の姿を我が前へ顕現せよ【何事も斬り裂く風の龍の王】」
そう詠唱を唱えると、カズトを中心に神殿の天井まで届きそうな竜巻が吹き荒れた。
「勇者殿!」
「一体何をやる積もり?!これ程、魔力を宿した竜巻は見た事ないわ」
カズトの後ろにいるドンとその反対側にいる《世界》は、カズトが発生させた竜巻に吹き飛ばされないよう踏ん張るのに精一杯だ。
「久々だな。スサノオ」
『勇者、たまに呼んでくれと言ってるではないか』
「ごめんって、後で美味しい料理をご馳走してやるから」
『楽しみにしてるぞ』
竜巻の中からカズトともう1人、別の男性の声が聞こえる。だが、不思議な聞こえ方がする。何やら生物の頂点に君臨してる者の前にいるような…………そんな感じだ。
一体カズトは何を呼び寄せたのか?ドンはもちろんの事、《世界》でさえ、冷や汗が額から零れ落ちている。
「では、行くか」
『おぉ』
竜巻が止み、中から2つの影が出てきた。1人は、竜巻を発生させた張本人であるカズト。もう1人というより1匹は、正に生物の頂点にして捕食者であるドラゴンである。
「正確には龍種だけど、まぁそこは良い。今回の敵はアレだ」
『ほぉ、何とも懐かしい面だ』
「なっ!き、貴様は風龍王様!」
『あの小童が、ワシの事を貴様だとな?偉くなったものだな』
おや?知り合いなのか?世界は広い様でいて狭いものだ。別に《世界》と世界を掛けた訳ではない。
「スサノオ、知り合いなのか?」
『あぁ昔、聖剣に封印する前に、この小童に稽古をつけてやったのよ』
つまりは、スサノオは《世界》の師匠ってこと?マジかぁ。
「風龍王様、何故聖剣に封印されてるのですか?!貴方様というお方が」
『ワシが選んだことよ。強過ぎる力は、時に世界を壊す』
風龍王が本当に封印されていると知った時は、俺も驚愕した。
それぞれの聖剣の名前や技術は、俺が強くなるに連れ聖剣から流れて来るように情報が頭に直接インプットされる。
それは他の勇者と聖武器も同じ事。まだまだ引き出せてない能力があるはずだ。
他に風龍王みたいな者が封印されてるかもしれない。いつかは友として封印を解いてやりたいと思うが、今の実力ではまだまだ解く未来が見えないままである。