SS-103、帝国の三勇者~雨の聖弓ミヅハノメ~
『どう?その身体には慣れた?』
「まだ違和感があるが問題ない」
(こらっ!何処を触っているのよ)
「うっ…………」
また、頭内にアシュリーの声が響いて頭を押さえる。元々【念話】を習得してれば、何ら問題なく違和感を感じないが、本来は頭痛みたいにズキズキとするらしい。
《大丈夫?》
ウッド・ゴーレムが腕を伸ばし、寄生植物の頭を良い子良い子と撫でた。
「タクトだっけ?」
《うん、タクトはタクト》
同じ植物系という事もあり何処か親近感が湧き、この笑顔に癒されアシュリーによる頭痛は何処かいってそまった。
ポンポン
「可愛いな!」
(可愛い)
《???》
「いや、何でもない」
アシュリーと同じ意見になったのが気に食わないのかキメラは即座に頭を振った。
『して、キメラよ。お主、勇者の身体を手に入れた訳じゃが聖弓は使えんのか?』
《それ、タクトも思ったの》
「キメラ?」
『お主の名前じゃ。気に入らんかったか?』
キメラプラントだからキメラという安易な名前だが、名前を貰えるとは思わなかった側からすれば、こんなに嬉しいプレゼントはないだろう。
「いや、気に入った。それよりも使ってみようか」
地面に転がってるままになってる聖弓ガーンディーバに目がいく。勇者しか使えないとされない武器である聖武器の1つが目の前にある。
本来なら持つ事であえ許されない武器であって、普通ならキメラにも持てないはすだ。
だが、キメラはアシュリーの身体を寄生している。よって、手に持つ事は可能になるやもしれない打算がある。
バチッ
「持てたぞ」
一瞬反発されたが、その後はすんなり待てた。重くも無く、今までずっと使ってたみたいにフィットする。
『流石ですわぁ。なら、使ってくださいな』
「分かった」
ツルを引くと、1本の矢が出現し上空斜め45度へ放った。初心者では放つ事が難しいとされる矢を射る行為が、聖弓ガーンディーバの自動補正により上手く発射出来たのだ。
『上手いものですわぁ』
《スゴイスゴイ》
褒められて悪い気がしない。
「それで、これからどうするんだ?ここから出るのか?」
『どちらかが負けを認めれば出れますわ』
「そうか、それは安心…………ぐっ……………がっ」
頭が痛い…………意識が失いそうだ。持ち主と念話で話してるようでもなく。意味もない言葉を叫んでる訳でもない。
まるで爆音を放つスピーカを四方八方から音量MAXで聞かされてるかのような…………そう、音による光線でも浴びてるような感覚だ。
『どうしたのですの?』
「頭が割れるようだ。ボ…………ボクから……………離れろ」
キメラの持つ聖弓ガーンディーバから眩い光が放たれ、3人を見下ろせる程まで浮かび上がった。
~我が主に酷い事をしたな~
『何ですの?何処から声が?』
「ハァハァ、アレだ。あの弓から直接頭に声を響かせている」
『そんな!武器に意思があるとても!』
自我がない魔物を除いて、種族と意思疎通出来る魔物は聖武器には自我がないと信じてる。
「意思がないとしたら、勇者以外にも扱えるはずだ」
『それは…………そういう魔法が付与されてるのですわ』
「そんな事して何の意味がある?勇者しか扱えない武器なんて売れる訳ないだろう」
ゲームでレベルや職業・ステータスによる制限は良くあるが、現実では違う。それでは鍛冶師や武器屋が食い潰れてしまう。
お金や希少性の問題はあるが、それでも誰にでも使えなきゃ売れない。売れなきゃ生きて行けない。
~その我が主の中にいるお前、正解だ~
また、頭に直接声が響いてきた。これは何度も繰り返しても慣れない。
(ガーンディーバですの?!)
~我が主、久し振りでございます~
(えぇ、久し振りに話すわ。この状態、どうにか出来ます?)
~おまかせを~
ガーンディーバが僅かに上下に揺れた。そこから数秒後に姿・形が変わり何処と無く威圧感を放っている。
「おい、あれヤバいんじゃないか?」
『ワタクシに聞かれても分かりませんわ』
《タクトもわかんない》
~我が主の恨み。天気シリーズ系、雨の聖弓ミヅハノメ【天弓の慈雨】~
ガーンディーバが自らの意思で技術を使用としている。




