SS1-101、帝国の三勇者~闇の聖弓ガーンディーバ~
『どう見せてくれるか?楽しみだのぉ。殺れ』
《これでも喰らえ》
両手の指が、それぞれ鋭く鋭利に先端が尖った状態でアシュリーに向かって伸びた。
「止まって見えるわ」
《消えっ!》
「ふんっ、遅い」
ビリッと放電したような音を放った後、1秒しない内にアシュリーは背を低くしながらウッド・ゴーレムの足元まで一気に詰め寄った。
そして、アゴを蹴り上げ数m高く宙へ舞った後、すかさずアシュリーもそれを追うように高く跳躍し、ウッド・ゴーレムより上空へ舞い上がった。
「地面から十二分に離れてますし、これで効きますよね」
《このっ!》
ツル状の指をアシュリーに向かわせたが早すぎて当たらない。
「遅いと何度も言ったら分かるのよ。これでも喰らいなさい【双頭電龍】」
2本の矢がドラゴンの頭を摸し、ウッド・ゴーレムに向かって放った。
ツル状の指は燃え落ち、防ぐ術がなく雷の双頭龍は、ウッド・ゴーレムの身体に喰らいつき地面へ叩き落とした。
《ぐはっ!あ………あるじぃ》
『全くダラしないねぇ。折角、成長させてあげたんだから出来るはずだよ』
倒れてるウッド・ゴーレムは、左腕と右足がもげてる状態だ。トレント系の魔物なので血は出ないが苦しそうだ。
それに今まで可愛がってた風に見えたが、じたばたと苦しんでるウッド・ゴーレムを放置してトレント・ロードは動こうとしない。
「倒すなら今!喰らえ【双頭電龍】」
ウッド・ゴーレムの手足を引き千切った【双頭電龍】なら今度こそ跡形もなく焼失させられるはずだ。
『フッハハハハハハハハ』
「気でも狂った?何がおかしいの?」
『これが笑えずにいられようか。倒せると思っておる顔をしておるからのぉ』
「なにっ?」
ボコっと足元の地面がせり上がり何かが出て来ると、それがアシュリーの首元に巻きついた。
「ゲホッ、こ…………これは植物のツル?ぐっ」
締め付けられないように首とツルの間に右手の指先を差し込み、ツルを切ろうと指先で引っ張るが中々切れない。
《上手くいった》
倒れ込んできたはずのウッド・ゴーレムが足元から出て来た。
ツルの正体は、ウッド・ゴーレムの指先でアシュリーが放った二発目の【双頭電龍】が当たる瞬間に穴を掘り進め、今足元から這い出て来たということだろう。
《捕まえた捕まえた》
いつの間にかに左腕と右足は元通りになっており、アシュリーを宙ずりにしながら小躍りをしながら踊っている。
《ご主人、捕まえた》
『やれば出来るじゃない。良い子ねぇ』
《キャハハハ》
首を締められないように手の力を弱められない。だが、足は使える。一流の狩人は手が使えずとも足で弓矢を射る事が出来る。
(来て、ガーンディーバ)
聖武器は、他の武器と違って明確な意志を持ち自我を持ってる。それ故に、1回その主になったら見えない絆が形成され、手から離れ落ちても念じれば持ち主の元へ現れる。
ちょうど足元へ現れたガーンディーバを、左足親指と人差し指の間に弓柄を固定し、右足親指と人差し指で弦を引っ張る。
狙いを定めて
(闇の聖弓ガーンディーバ【絶対必中】)
放った。
放たれた矢は、何の迷いもなくトレント・ロードの顔面へと吸い込まれるように当たった。
これで倒せたと思いきや、多少後ろへよろめいただけで倒れない。
(チッ、引きが甘かったか)
どうやら当たったのは右目のようで風穴が空いている。普通なら即死でもおかしくない重症なのだが、平然と立っている。
『やりましたわね』
腕を治した時のように植物のツタが集まり、風穴を埋め目玉を形成している。ギロリと、こっちを見るや怒らせただけだったみたいだ。
圧迫感が凄い。
《ご主人、大丈夫?!》
『えぇ、大丈夫よぉ。流石は勇者、捕まえても油断も隙もない。タクト、近くによってらっしゃい』
テトテトとトレント・ロードの言う通りにウッド・ゴーレムは、アシュリーを揺らしながら歩いて近くに寄った。
トレント・ロードもそれに合わせて、前に歩き少し降ろすよう指示。息が届く距離まで顔を近寄らせる。
『ウフフフ、悪い子はどうしようかしらねぇ』
「ぐっ……………このっ」
残ってる右手で、目の前のトレント・ロードの首を掴みへし折ろうとするが力が足りない。




