SS1-100、帝国の三勇者~悪戯好きな妖精~
【悪戯好きな妖精】で誤認させないと、【黒点】は黒く焦げ今にでも朽ち果てそうな矢に見える。
ただし、見た目で判断したらダメだ。超高温を矢という形に集中させた。それ故に命中すれば瞬く間に超高温が解放され破壊する。
『良くもやってくれたわね』
やはり魔王種の一角。全ての植物を支配するトレント・ロードは、瞬時に根や枝を生やすように両腕を再生した。
『タクト、今治してあげるわ』
トレント・ロードが1握りの種を消し飛んで残ってるウッド・ゴーレムの半身に振り掛けると、瞬く間に芽が芽吹き、それらが身体を構築し戦う前に戻ったかのように目の前でピンピンと跳ねている。
「くっ……………やっと倒したと思ったのに」
『オッホホホホ…………ワタクシがいる限り、タクトは永遠に復活し続けるわぁ』
先程の復活を阻止出来る距離であったが、奥義を放った直後だったため反動で、直ぐに動けずに復活を余儀なくされた。
『今度こそ捕まえなさい。そして、ワタクシに傷を負わせた事を後悔する程に遊んであげるわぁ』
《~~~~~》
「そんなの嫌よ」
ウッド・ゴーレムの両腕から突起が銃数個ニョキニョキ生え、こちらを狙っているように見える。
『手足の1、2本は千切れても構いませんわぁ』
《~~~~~》
突起がミサイルのように発射された。飛び道具で、この弓の勇者であるアシュリーに挑むとは良い度胸だ。
「ふぅっ、ワタシも舐められたものですね。そんなの全部撃ち落として差し上げるわよ。雷の聖弓インドラ【雷鳴】」
弓の弦を1回引き軽く弾いただけで物凄い轟音と光の道筋が四方八方に走り抜け、種のミサイルを撃ち落とした後、更にはウッド・ゴーレムとトレント・ロードの順に心臓近くを撃ち抜いた。
『ガハッ』
《✕✕✕✕》
少し宙に浮いた後に地面へ倒れ込んだ。一般的には絶縁体の木材でも電圧を極力上げると焦げ、貫通する事でさえある。
下手な炎よりも雷が落ちた箇所は火事になる可能性は十二分にある。
『なにっ!この痛みは!雷がワタクシに効く訳が』
「知らないの?ただ効き難いだけで、けして効かない訳じゃないわ。一般的な雷魔法だと確かに効き目はないに等しいけどね、勇者が放つ雷はそんなにヤワじゃいわ」
一般的な雷魔法は、雷というより電気と言った方が良いだろう。個人が作る電気なんてタカが知れている。自然に落ちる雷の方が数万倍強い。
だが、勇者は自然の雷を使役し扱う事が出来る。まぁ勇者本人には自覚はなく、ただ他の雷魔法使いや雷使いの冒険者より強いと思っているだけ。
『甘くみてたわ。タクト、これを飲みなさい』
《~~~~~》
何やらトレント・ロードが、ウッド・ゴーレムに向けてビー玉状の物体を投げ、それがウッドゴーレムに当たると風船が弾けるように割れ中の液体が掛かった。
《我が主、ありがとうございます》
「し、喋った!」
いや、言葉を発しただけではない。ウッド・ゴーレムの身体が眩い光に包まれると、瞬く間に変化が起こった。
ずんぐりむっくりしてた体型から10代の背丈まで伸び、ポッチャリ系からスリムになった。ショタコンが好きな腐女子がいたら絶叫してるだろう。
ただ、人間と違うところは体色が緑色という点と髪の毛部分が植物の葉という点で、外見だけ見れば人間とそんなに大差ない。
「なっ!か、可愛い…………いやいや、何を言ってるのワタシ」
ブンブンと首を横に振りながら相手は魔物、相手は魔物で敵と自分に言い聞かせ矢の標準を合わせる。
「もう1回行くわよ【雷鳴】」
《我が主を傷付ける者、ボクの敵【避雷樹】》
トレント・ロードにも狙ったが、全ての電撃はウッド・ゴーレムに集まり自ら喰らったはずだった。
「えっ?無傷?」
《全て地中に流した。だから、もうそれは効かない》
『タクト、偉いわぁ』
《えっへへへへ》
まさか、あれ程の電力を受け流したと言うのか!信じられないが目の前で起こった事が事実だ。
だが、その逆に欠点もある。それは、地面に足が着いてないと受け流せないことだ。その事を、化学が発展してない異世界の住人には知りようがない知識。
「それならば【充電】」
バチバチ
『バカめ、気が狂ったか?自分の体に雷を流しておる』
トレント・ロードからは自らダメージを負っているように見える。
「体を動かしてるのは脳から来る電気信号。それを高速に行う事が出来たら、どうなるか見せてあげるわ」
何を言ってるのか、トレント・ロードとウッド・ゴーレムには分からないだろう。