SS1-96、帝国の三勇者~スタングレネード~
「これは…………やり過ぎたか?」
チリよりも細かく吹っ飛ばしてしまった。残っているのは、前魔王の魂が封印されてる戦鎚とそこに残ってる肉塊と化した指先だけ。
「回収でもするか」
サンダルフォンが、戦鎚に近付くと、ギロリと複数の瞳がサンダルフォンに向く。
《クッカカカカ、本当にチリになるとは思わんだ》
「ボクは殺ると言ったら殺るからね」
最早、この状態では何も出来ないだろう。使う者がいての武器だ。
「そうなっては何も出来いよね。だから、ボクの研究の材料になってよ」
《まだ終わっておらんぞ?》
「何を言ってるのさ?」
そんな状態で何が出来るというのだと、サンダルフォンは思っていた。だがしかし、サンダルフォンは忘れていた。
呪われし武器の下位互換であるはずの魔具である魔刀が主の身体を失ってもなお動き続けた事に。
《いでよ【召喚:豚王】》
『ブモォォォォォォ』
召喚された豚王の咆哮に後退を余儀なくされたサンダルフォン。
豚将軍とは、2ランク程に格が上だ。オーク・ロードの直ぐ下と言えばわかり易いか。
《オーク・ロードよりも格が下がるが致し方ないが、豚王も強力だからなぁ。充分じゃ》
「これが豚王?オーク・ロードよりも上じゃないか?」
前魔王のオーラにより強化され、それに自分で召喚したからか?オーク・ロードよりも操作能力が上がってる。そのせいで、オーラによる強化が増したようだ。
『ブモォォォォォォ』
《そぉじゃ。ワシを掴め》
豚王が、前魔王の柄を掴んだ事で益々オーラが増したように一際身体が膨らんだように見える。
「時間を掛けてはヤバそうだ。なら、これでも喰らえ。バズーカー砲だ」
ドカーァァァァァン
バズーカー砲を取り出し、豚王が叫んでるところに打ち込む。手応えはあった。命中はしたはずだ。
《フッハハハハハハハハ、効かんな》
「なにっ!」
多少焦げてるところはあるが、ほぼ無傷に近い。戦車も吹き飛ぶバズーカだぞ!
「チッ…………これならどうだ。スタングレネード」
安全ピンを抜き、前魔王へ投げる。サンダルフォンは急いで耳と目を塞ぐ。
ピカァァァァァ
物凄い音と光で相手を怯ませるのが本来のスタングレネード。だが、サンダルフォンが作ったスタングレネードは一味違う。
ここはファンタジーらしく、音と光に加え魔力の要素を加えてある。スタングレネードの範囲内にいた者は、一定の間、魔力は練れなくなり既に構築していた魔法は吹き飛ばす。
本来なら魔道具なんかは機能停止に追い込まれる。だが、前魔王の魂が宿る呪われし武器なら話が別となる。
《グハッ………何をした》
「やはり、完全には止まらないか。だが、弱点は分かった」
弱体化には成功した。これで豚王を強化してたオーラが弱まり、いくらか楽になるだろう。
それに魔力は戦鎚に憑依してる前魔王にとって生命線。物理や魔法による攻撃よりも効くはずだ。
《ワシに弱点だと?そんなものはない》
「いくら貴様が前魔王の魂を宿った武器でも、それは魔力の繋がりでしかない。魔力が無くなれば、魂が離れるだろうな」
《なぬっ?!》
前魔王も知らない事実だったようだ。それもそうだ、自分がこの姿になって初めて戦ったのだから、それは仕方ないこと。
《ワシが再び死ぬというのか?》
「もう既に死んでるじゃないか。タダ本来の場所へ戻るだけさ」
《認めぬ…………認めぬぞ》
ガタガタと頭が揺れている。怒ってるのか、怖がっているのか分からないが、何となく気持ちは分からんでもない。
《そうじゃ!お前を殺して、ここを出てやる。そうすれば、無問題じゃ》
「まだそんな事、言ってるの?ボクが相手だから到底無理な話だよ」
魔力を削り切るなら、そんなに難しい問題ではない。なにせ、そんな効力を持つ魔道具をいっぱい持っているのだから。
「色々試したいものがあるけど、手っ取り早いのは…………先ずはこれ!4連バズーカ砲車」
ほほ無傷で終わったドローンのミサイルとは違う。これには本来の威力を抑えた分、魔力を拡散させる効力がある。それもスタングレネードの比じゃない。
それが4つも連なっているのだ。どうなるか明確である。
《お前はバカなのか?それは効かなかったではないか》
「さっきのとは違うよ。これには、魔力無効を付与をしてある。発射」
もちろん追尾機能も搭載済だ。いくら逃げようとも何処までも追って行く。




