SS1-94、帝国の三勇者~勤勉の天使サンダルフォン~
《笑っていられるのも今の内だ。天使の殲滅は、我ら魔族の悲願……………その第一歩として、お前を無惨に殺してやる》
どうして魔族が天使を殲滅しようとする理由は、最早時代が過ぎて行くに連れ忘れ去られ、タダ単に天使を殲滅というプログラムが本能として刻み込まれてるに過ぎない。
だが、神の配下である天使を殺すという事は全世界を敵に回す行為に等しい。
魔族以外の種族は神に信仰心があり、崇めている。それ故に、魔族は他種族に敵として認識されてしまっている。
「ふんっ、何が殲滅なのだ。こっちには狙われる理由に心当たりないぞ」
《うるさい。王に逆らうのなら………死…………あるのみ》
前魔王が、オーク・ロードの腕を操り戦鎚を横にふりかぶると柄が伸びると、それをココアに向かって振った。
ココアの距離が近づくに連れ頭も大きくなり、回避しようにもココアが逃げる方向に合わせて柄も伸びる。
《無駄じゃよ。お主の魔力の波形は覚えた。何処に逃げようにも追跡出来る》
「そうみたいだね。この大発明家であるボクが作ったジェットスーツでも逃げ切れないとなると、もう避ける理由はない。このまま受けることにするよ」
立ち止まったココアは、アイテムボックスから身長の3倍はありそうな盾を構えたというより、カメラの三脚みたいな脚が盾に設置されており、それで支えている。
《そんな盾で、ワシの一撃を止めらると思っているのか?そんな盾、粉砕してやる》
「やれるものなら、やってみる事だね。無理はしない方がいいよ」
《なによぉ》
「忠告はしたからね」
ガキィィィィィィン
《グぎゃぁぁぁぁ》
粉砕するどころかヒビ一つ入る事なく、逆に跳ね返して痛い目にあい複数の目から涙が、ポロリと溢れてる。
《なんだぁぁぁぁ!その盾はぁぁぁぁぁ》
「これ?これは、ボクが独自に開発した金属…………オメリルで作った盾だ。オメリルは、オリハルコンとミスリルの合金、割合は企業秘密」
効果は見ての通り。前魔王の攻撃を難なく受け止め跳ね返した。オリハルコンやミスリル単体の盾なら恐らく破壊されていた。
世界一の硬度を持つオリハルコンと絶妙な柔軟性と魔力伝導率が高いミスリルを合わせたのがオメリル。
ただ硬いだけだと、何時か割れてしまう。ダイヤモンドが典型的な例だろう。剣でさえ、ただ硬い剣と柔軟性を持たせた剣では後者の方が刃こぼれせず長持ちする。
このオメリルの盾も似たようなものだ。ただし、究極に硬度と柔軟性の共存を高めた最強の盾に仕上がっている。
それに加え、ミスリルの特性である魔力伝導率の高さも加わると、様々な付与や機能を追加する事が出来る。
《オリハルコンとミスリルの合金じゃと?!ウソを付くでない。完璧な金属であるオリハルコンが他の物質と混ざるなどあってはならぬ》
この世界の常識だとそうだろう。世界一の硬度を持つオリハルコンを加工する事が出来る職人は指で数える位しかいない。
だから、合金なんて不可能に近い。だが、それを可能にしてるのがサンダルフォンが持つ技術【大発明】。
名前の通りに、どんな物でも創造出来る。例えば、この世界の住人なら見た事のない拳銃や飛行機なども作れてしまう。
「そんな常識しるかっ。この大発明家サンダルフォン様の辞書に常識という文字はない。常識を打ち破ってこその発明だ」
《やはり天使は殲滅しなくてはならぬようじゃな》
「クスッ、そうなくちゃ面白くない」
天使も魔族程じゃないにしろ恨み辛みがある。それは長年争って来た歴史があるからだ。
だが、魔神教会に所属してる《吊るされた男》リザ・テミスに天使が住む都を襲撃され全滅させられた過去がある。
それ以降、天使は歴史から姿を消した。
「オメリルの盾よ、我が刃となりたまえ」
そう呟くと、オメリルの盾が半分に亀裂が入り十数cm離れると、盾の下部から剣がせせり出て来ると元通りに盾の両端はくっ付いた。
「よいっしょ…………うん、軽い軽い」
剣先を含めると、盾の全長は5mにもなり、右腕に装着するとサンダルフォンを完璧に隠してしまう。でも、見た目に反して重量は軽いようで軽くジャンプも出来る。
《そんな大盾で何が出来ると言うのか。動きの邪魔になるだけではないか》
「えっ?そんな事ないけど…………こんな風にね」
《なっ!は、早い》
ジェットスーツの出力を上げ接近すると、オメリルの盾から出てる剣で横へ薙ぎ払った。




