SS1-92、帝国の三勇者~慈愛の天使メタトロン
《七つの美徳?知らぬな》
「まぁそうでしょうね」
逆に知っていたら驚愕する。
「では、行くわよ。慈愛の聖優メタトロン」
天使ののような輪っかが頭上に浮かび、背中から天使のような羽根が生え、服装も慈愛に溢れるような優美なものに変わった。
《なぬ?!美しい…………いや、ワシは何を言ってるのだ!》
武器に褒められてもちっとも嬉しくない。むしろ、不快だ。もう、やっちゃおう。
「恥ずかしいけど【純愛たる我が下僕】」
両手でハートの形を作り、そこからピンク色のハート型のビームを打ち出した。ダメージはないが、これに当たった者は全員強制的にココアの下僕になる。
『ギャオギャオブヒ(ココア様、ばんざーい)』
『ギャオギャルルル(ココア様の敵殺す)』
『ギャオガルギャル(ココア様、なんて素敵な笑顔なんだ)』
『ギャオガルガル(ココア様の敵はどいつだ)』
身体の何処かにハートマークが付いたオーク共は、ココアの下僕となった。いくら自我を無くそうとしても心の奥底に潜んでいるもの。
これを防ぐ術はない。解く術は、ココアを殺すか掛かってる者を殺すしかない。
「愛って素晴らしいわ。愛があるからこそ、世界が豊かになるのよ。さぁお前達、愛のために敵を殺すのです」
『『『『ぎゃぉぉぉぉぉぉ』』』』
ココアの命令にオーク共は向き直り、前魔王へ刃を向けた。前魔王のオーラとココアの愛によりステータスが爆上がりしてるらしく、あの体型で良く俊敏に動け前魔王が後退りする程のパワーを見せてくれている。
《キサマ!お前ら良い加減しろ!【魔王の咆哮】》
ギャォォォォォォォ
またもやオーク・ロードが使ってた技術を使って来る。本来ならここで、ココアの【純愛たる我が下僕】の効力は切れるだろう。
だがしかし、そうならなかった。いや、むしろココア側へ有利になったといえよう。
《何故止まらぬ。彼奴の技術の効力をかし消したのだぞ。いや、むしろスピードとパワーが上がっておらぬか?!》
そう、前魔王のご指摘通り一層オーク共の攻撃が激しさを増している。
「ぷっくすくすくす、残念でーした。貴方ごときでは、私の愛は解けないのよ」
《なにっ?!どういう事だ》
でも、流石は前魔王だ。愛の奴隷と化したオーク共を相手にしながら喋る余裕があるのだから。
「格が違うのよ、格が。私の愛は何にでも負けないのよ。だから、不利な効力だけを打ち消したのよ」
デバフを打ち消す効力だけを打ち消し、バフを与える効力だけを逆に貰ったという事だ。
《巫山戯るな!そんな事あってたまるか。そうだ、この感覚何処かで覚えがあると思ったが…………お前、勇者なのか?》
えっ?いまさら?
「そうよ。私は歌の勇者」
《ワシはな、勇者パーティに殺られたのだ!》
「そういえば」
そうだ。魔王を倒したのは剣の勇者カズトが率いるパーティだ。その魔王の魂が、あの戦鎚に封じ込まれているとは何の因果なのだとココアは驚きしかない。
「カズトさんは、今神樹にいますわね」
《剣の勇者か!》
驚きで、思わず口を滑らした。だが、もう遅い。カズトの名を聞いた前魔王は、今まで苦戦を強いられていたオークの1人を自分自身で吹き飛ばした。
「あら?思わず口に出してました?今のは無しで」
《うるさい。いるのだな?なら、話が早い》
更に2匹3匹とオークを吹き飛ばし木っ端微塵にした後、ココアに向かって戦鎚を掲げ宣言する。
《歌の勇者と言ったな。なら、お前を倒しワシはここから出る》
まるで、こっちが悪者みたいじゃない。まぁ私も負ける積もりは毛頭ないのだけれど…………。
「それは私の愛に勝てたら言ってくれないかしら?ほら、お前達もし勝てたらご褒美をあげちゃうわよ?」
《《《《ギャォォォォォォォ》》》》
指揮を高めただけじゃなく、更にステータスが上昇している。
「【純愛たる高揚】、私の愛を与えた者のステータスを大幅に挙げるのよ」
《ワシの復讐が強いのか、お前の愛が強いのか勝負じゃ》
パワーアップする前よりは一撃で倒され無くなったものの、それでも前魔王は強かった。
パワーアップしたオーク共の動きを見切り、渾身の一撃を決めるため死角からクリーンヒットを叩き込んでいる。
《これを使ってみようかの【混沌なる貪食】》
オーク・ロードの身体から黒いオーラが溢れ、それが蛇状に変化しオーク共を喰らい尽くす。




