SS1-84、帝国の三勇者~流星群~
「後、どれ位で負けを認めてくれるのかな?」
『ふんっ、死ぬまで負けを認めるものか』
だが、内心リザード・ロードは焦っていた。死ぬ事には全然恐れていない。我々を魔王種にしてくれた主に報いるため、命の1つや2つ掛ける事は雑作もない。
ないのだが、【超再生】を使ったため魔力と体力をガッポリ持っていかれた。
後、1回だけでも水の弾みたいな攻撃を食らったらお終いだ。
『これでも喰らえ【流星群】』
槍を天空の彼方へ投げると、目映い光に槍が光り数百の光へと分裂し落ちて来る。まるで隕石でも落ちてるように降り注いでいる。
「これは!やばくないか」
『ふんっ、これは使いたくなかったけど、取っておきの1つだ。避けられるものなら避けてみよ。ワレは逃げるのでな』
「あっ!てめぇ」
影で移動したのだろう。一瞬の内に目の前からリザード・ロードが消えた。
だが、呆けている暇はない。数百という光の玉が落ちて来きてるのだ。
一見、適当に落下してる風に見えるが俺の先程までいた場所に落下している。その威力は1つ1つが、軽く人が落ちることが出来る落とし穴程度のクレーターを作る事が出来ている。
「これを避け続けるって訳か!」
ほんの数秒、動きを止めただけで明らかに当たる。それにクレーターが出来る衝撃波もバカに出来ない。
ビリビリと肌に伝わり、鼓膜が破れそうになる。これを数百も避け続けるなんて、クソゲーにも程がある。
ドカーン
「くそっ!一体、何処に行きやがった」
避けるのに手一杯でリザード・ロードを探す暇がない。もし見つけたら殺さない程度にボコす。
「ちくしょー、何時まで続くんだ!」
一瞬でも足を止めたら命中してしまう。それに後ろを振り向く余裕がない。なぜなら、段々と降り注ぐ時間が短くなって来てるからだ。
「一かバチか【氷結走行】」
足裏に薄い氷の刃を生やし、まるでプロスケーターのように走ることに成功した。
「うほっ!これは良い。初めてやったが上手くいった」
隕石のように落下してくる光の玉は、最早ジャックの速さには追い付いていない。
「これなら楽勝だな」
後ろを振り向く余裕が出てきたジャックは、プロのフィギュアスケーターみたく光の玉を避けながらトリプルアクセルなどの技を披露した。
「あれで最後か」
ドーンと最後の光の玉を余裕で避け、スチャッと着地し自分の影を見詰める。
「おい、何時までそこに隠れてる積もりだ?」
自分の影に向かって、そう尋ねる。尋ねてから数秒後、ヌルっとジャックの影から人影が這い出て来た。
這い出て来たのは、逃げたはずのリザード・ロードだった。這い出た後、素早く距離を取り槍を構える。
『何故、バレた?』
「殺気が駄々漏れなんだよ」
最初の内は、近くに潜んでいると思った。だが、よくよく考えて見ると、あんな範囲が広い技を使って自分に飛び火してくる可能性も十二分にある。
そこで何処が一番安全なのかを考えると、影を利用して転移出来るのだから影へ潜れるのでは?と考えたら光の玉から逃げてる俺の影の中へ隠れるのが一番安全ではないかと思い至った訳だ。
そして、自分の影に意識を移したら殺気が漏れてるのに気付き確信へと変わったのだ。
「影に潜んでいたのなら、その間に攻撃を加えれば既に勝っていのではないか?」
『お前が死ねば、どうやって【流星群】から身を守れば良いのだ!【星影】は、死人の影には潜れないのだ。それに【流星群】発動中は星槍による攻撃が一切使えなくなってしまうデメリットがある』
こいつ、バカじゃないのか?光の玉に当たって俺が死ぬ可能性があるというのに、その先のことを考えてない。
「あぁー、早速出てきて悪いが死なない程度に倒させて貰う」
『はっ?星槍が使えるようになったワレを倒すと言ったのか?』
「あぁ言った。十二分に練習出来たからな。死ぬより辛いと思わせてやるよ」
扱いが難しい合成属性の1つ、氷属性を練習するには十二分時間があった。それに1つだけ使って行くに連れ気付いた事がある。
『しゃらくせい。【星影・鋭】』
ガキン
影を通して槍がジャックの懐へ突き刺さった。と、思いきや突き刺さって折らず、寸前で刃先が止まっていた。
『なにっ!』
「ふぅ、ようやく出来た。下手したら自分が凍死するからな。名付けて【氷鎧】だ」
自分の身体の表面に氷の膜を張った。頑丈さは見ての通り、槍は通さず止めている。肝心のジャックは、凍えていない。
氷属性の使い手は、使って行くに連れ普段の体温が下がり極寒な環境でも薄着で耐えられるようになる。




