SS1-80、帝国の三勇者~暴食の槍グラトニー~
『き、聞き間違いじゃなければ、それ喋ってなかったか!』
「知らないのか?聖武器は、意思を持つ武器インテリジェンスウエポンの1つだ」
珍しくはあるが、聖武器以外にも意思を持つ武器インテリジェンスウエポンは存在するが、けして意思を持ってるからと言って強いかどうかは別問題。
《久し振りのシャバだ。やっほー》
「相変わらずのお喋りだ」
《話せるのに話さないのはバカのする事さ》
鏃の真ん中で亀裂が入り、そこを起点てして人間の口のようにパクパクと柔らかく動き言葉を発している。
『ふん、珍しいがタダそれだけの事や。見掛け倒しも良い事や』
「なんか言われてるぞ」
《クッククククッ、見掛け倒しかどうか試して見るか?ご主人、今度のエサはアレで良いんだよな?》
「あぁ、アソコにいる間抜けな虫けらだ」
虫けらと呼ばれ、コメカミに血管浮き出るオーガ・ロード。怒りから雰囲気が変わった。
『良かろう。そこまで死にたいのなら死に晒せ。光の型【光輪】』
シャク…………モグモグ
『はっ?』
最初だけ眩しかったが、タダそれだけ。どんな攻撃は不明だ。何故なら、放たれる前にグラトニーが食べてしまったのだから。
「グラトニーの唯一にして最強の技【悪食】。味の方は如何かな?」
《魔力は申し分ないのじゃが、なんかチクチクする感じがする。まぁ美味しかったから問題なし》
「それは良かった。わっハハハ」
魔王種だから問題無いと踏んだが、予想通りに問題無かった。相手が弱過ぎたりすると、グラトニー曰く不味いらしくヤル気が起こらないらしい。
『何が起こったのだ!』
数分間フリーズしてたようで、オーガ・ロードがやっと口を開いた。
「何って、こいつが食ったんだよ」
《さっきのもう1回食わしてくれぬか?》
『巫山戯おって』
オーガ・ロードが目の前から消えた!
『これならどうだ?雷の型居合【雷霆一閃】』
シャク…………モグモグ
メグミの死角から神速の斬撃が放たれたが、メグミには命中しなかった。
シャク…………:モグモグ
《ピリピリして、これはこれでアリやな》
雷の斬撃もグラトニーの前では、タダのエサでしかない。グラトニーに例外を除いて食えないものなぞない。
『なにっ!これも食ったのか!』
自慢の斬撃でさえ食われ茫然自失にならない方がおかしい。
『くっ!ならば!闇の型【時空切り】』
闇色と申したい程に暗黒な色に染まった刀で空中を切ると何もないはずのところに亀裂が入り、まるで縦長のブラックホールみたいに亀裂の中は真っ暗で何も見えない。
「あれはヤバいね。あれも食えるかい?」
《ご主人の命令ならば》
シャク………………モグモグ
『それならば、【時空乱舞】』
シャク……………シャク……………シャク……………シャク………モグモグモグモグ
「おっと危ない危ない」
グラトニーが取りこぼした斬撃が、顔面スレスレで躱した。喰らったら恐らく大変な事になっていたに違いない。
《ゲップ、ご主人悪い悪い。1つ見逃した》
「態とじゃないよな」
《そ、そんな訳ないよ》
「そうだよな。そんな訳ないよな」
《そ、そうそう》
無機質なのに冷や汗を掻いてるように見える。比喩じゃなく本当に掻いている。
『チクショウ、これでもダメなのか!』
《あっ、そうだ。ご主人、あれ…………もう食べても良い?》
「話を逸らそうとした事は、後で聞くとして……………そうだな。もうつまらないし、食べても良いぞ」
《ジュルリ》
口周りと言ったら良いのか?舌で口周りを舐め回しながらヨダレを垂らすシュールな光景となっている。
《では、いただきまーす》
シャク……………モグモグ
『えっ?ぎゃぁぁぁぁぁ、ワイの腕がぁぁぁぁぁぁ』
《ゴクン、うーん美味で美味いであります》
ライキリを持ってる反対側、左腕が無くなった。腹の中にと言えば良いのか?グラトニーが食ったので消滅したと同義。
切られた腕をくっ着かせる事は出来ても生やす事は出来ないらしい。
「聖刀ライキリは食うなよ?」
《食ったら腹を壊す》
聖武器は、どんな事があっても壊れない。それが同じ聖武器であっても。
シャク…………モグモグ…………シャク…………モグモグ
今思ったが、グラトニーの食べる範囲が広過ぎる。オレが近寄らなくてもグラトニーが口を動かすだけで狙ったところの空間ごと食らう。
そして、あっという間にライキリを残してオーガ・ロードを完食したのである。
《ゲップ、ご馳走様です》
消滅したオーガ・ロードがいた場所にはライキリが地面に刺さっていた。それをアイテムボックスに仕舞うと、ドサッと大の字に寝転んだ。
「あぁ、お腹空いたぁぁぁぁぁ」




