SS1-78、帝国の三勇者~絶対必中の魔槍~
『来るところが分かっていれば、防ぐ事も容易や。土の型【畳返し】』
対象物に向かって真っ直ぐにしか飛んで来ないのなら、その前に障害物を置いて置けば良い。
刀で刺したところから次々に地面が捲り上がり、オーガ・ロードの目の前に分厚い土壁が出来ていた。
『これで……………』
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
『何の音や?まさか!』
「そんな壁程度で防げるものか」
『ぐっ!これは、ヤバい』
土壁を突き進んでる内に逃げるが勝ちと思ってるが、そう逃げ切るのは簡単ではない。
相手の心臓に突き刺さるまで止まらない。だが、例外がある。肉を絶って骨を断つ的な方法で、無理矢理に何らかの方法で軌道をズラし、多少なダメージ覚悟で心臓以外の部位を刺して貰う。
そうする事で、【絶対必中の魔槍】は止まる。
『逃げるが勝ちや。雷の型【雷光走り】』
「逃げたのか?くすくす、無駄な事を」
けして、そう簡単に【絶対必中の魔槍】から逃げ切る事は出来ない。いくら、雷の速度で移動しようにも無駄な事だ。
『所有者が死ねば、どうかや?』
メグミは気づいてない。オーガ・ロードが逃げたと思いきや、実はメグミに近寄り切り裂く事に全く反応出来ていなかった。
だが、オーガ・ロードは知らない。それが悪手な手段だという事に。
ブシュ
『ぐはっ!』
「そこにいたのか!」
オーガ・ロードがメグミを切り裂くより早く【絶対必中の魔槍】が戻って来て、オーガ・ロードの右腕をライキリと共に吹き飛ばしたのである。
「ふん、残念だったな。オレを直接狙おうとした作戦は見事だったぜ。だが、これはお前を追ってる事を忘れちゃ困るぜ」
『ぐっ』
右肩から先が見事に無くなっており、傷口から黒い煙みたい物体が血液みたく溢れている。
魔物は種族のように血液はない。その代わりに魔素と呼ばれる魔力の源みたいな物体が身体中を巡っている訳だ。
大量に血液を流し過ぎると出血死するように魔物は、魔素を失い過ぎる事でも死ぬ。
『態々近くに来てくれてサンキューな。これで、お前の心臓を直接貫けられる』
地面に刺さったゲイ・ボルグを抜き、くるくるとバトントワリングの様に回して、ビリヤードのようなつく構えを取り、オーガ・ロードに向かって突いた。
「死ね。【絶対必中の魔槍】」
『ワイを嘗めるなぁぁぁぁぁぁぁ』
物理法則を無視して、有り得ない軌道でオーガ・ロードの心臓に向かうのに対して、オーガ・ロードは、右肩から漏れ出てる魔素を操作し右腕らしき形状へと変化させた。
『心臓に向かって来るのだろ?なら、擬似的な心臓が目の前にあったなら、どっちに向かうのや?』
黒い右腕を胸辺りの高さで、ドクンドクンと脈動を打つ何かへと作り替えた。それは、黒い心臓だ。
ブスッ
【絶対必中の魔槍】が向かったのは、黒い心臓だ。突き刺さったが血は吹き出さず、刺さったままドクンドクンと、まだ動いている。
「なにっ!」
こんな事で回避出来るとは思いもしなかった。こんな弱点があるとはメグミ自身知らなかった。
『くっはははは、予想通りや。ほれ、ワイの心臓をくれてやる』
オーガ・ロードは呆けてるメグミの隙をつき、メグミから距離を取った。黒い擬似心臓は、ゲイ・ボルグに刺さったまま膨らみ、眩い光を放ちながら今にでも爆発しそう雰囲気を醸し出してる。
「し、しまった!」
ドカぁぁぁぁぁん
耳を劈く程の爆発が起き黒い煙が立ち上った。メグミは吹き飛んだか無惨にも肉塊になったのかは黒煙により確認出来ない。
『くっははははは、油断大敵とは良く言ったものよ。あれでは、どう足掻いても助かるまい』
勝利を確信したオーガ・ロードは、まだ晴れてない黒煙の中に入り戦利品として聖槍ゲイ・ボルグを探し始めた。
『あの勇者の槍を手に入れれば、《世界》様にお褒め頂けるに違いない』
「ほぉ、お前ら魔王種の黒幕は《世界》とやらがいるのか」
『なにっ!』
オーガ・ロードが声をする方へ振り向くと、そこには黒いドームが聳え立っていた。




