SS1-77、帝国の三勇者~聖刀ライキリ~
バチッバチッ
オーガ・ロードが刀を鞘に納刀した当たりから電気が身体中を覆い、オーラぽく見える。
どんな技なのかは予想出来るが、今から止めようにも回避しようにも間に合わないとメグミの本能が告げる。
『雷の型居合【雷霆一閃】』
目の前からオーガ・ロードが消えた。いや、消えた訳ではない。速過ぎて消えたように見えただけ。そんな光景に思わず……………。
ニヤッ
思わずニヤついてしまう。見ただけで分かる。あれを受ければタダでは済まない事に。だけど、ゾクゾクと受けてみたいと思う気持ちが勝るが悩む。
勇者のステータスのお陰で喰らっても死ぬギリギリでの致命傷で済むだろう。
だが、それでは、これ以上楽しい戦いが続けられなくなる。だけど、受けてみたい。相反する気持ちを両立する方法があるとすれば、1つだけ。
「雷の聖槍ゼウス奥義【雷神の槍投げ】」
そう、こちらからも技を放ち受け止めれば良い。だが、速過ぎるのが問題だ。
いくら動体視力が優れてるメグミでも雷と同じ速さで動いてるであろうオーガ・ロードを追えてない。
そこでだ。本来なら投げて使う【雷神の槍投げ】を応用する。
この技術は相手を追尾する機能が備わっている。世界の反対側にいても追尾出来る優れものだ。
この追尾機能をオーガ・ロードを探るセンサーにしようとする作戦だ。
それにこちらは各系統の頂点に位置する奥義をしようしている。あちらが、奥義と匹敵する技を使おうともそう簡単には敗れないはずだ。
『何故、動かないのや?』
「動く必要はないからさ。来るところが分かっているからな。そこだぁぁぁぁぁ」
オーガ・ロードが鞘から雷速の抜刀を放った。それに対してメグミは、ただ【雷神の槍投げ】に身体を預けるだけ。
雷と雷のぶつかり合い。周囲に電気が迸り、地面に小さな穴が無数にあいた。刃が矛先に捉えられ止まっていた。
『なにっ!これを受け止めたやと』
「それは、こっちのセリフだ。この技術に耐えられなんて、どんな武器なんだ?」
そもそも複数の属性を使える武器なんて、この世界では勇者専用の武器である聖武器しかないはず。って、まさか!
「おい、まさか!その武器は」
問ださそうとした瞬間、キーーーーンっとメグミにだけ久し振りに聞く高い音が鳴り響いた。本当に久し振りに聞いた。聖槍ゲイ・ボルグの声を
『あの方に渡された武器やさかい。出処は知らん』
「いや、間違いないってさ。それは、お前ら魔物共が触って良いものじゃない。返して貰うぞ。聖刀ライキリを」
聖刀ライキリ、刀の勇者というより侍の勇者と言った方が、あの容姿に誰もが納得出来る。
侍の勇者専用の聖武器が聖刀ライキリであり、片刃でいくらか曲線を描く刃が特徴である。鞘とはセットで、侍の勇者が1回鞘に納めて放つ居合切りは音速をも超えるとされる。
『聖刀ライキリ?その名が、この刀とやらの本来の名なのかや?しかも、名からして勇者の武器という事なのかや?』
「それがどうした?」
ニヒッ
『そう聞くと、益々返したくなくなって来たわい』
聖刀ライキリに頬擦りする様に、オーガ・ロードは気持ち悪く笑みを零し舌先で舐めた。
『これはワイの物や。返して欲しくば、殺して奪い去る事や』
「おめぇー!よし、ギルティー確定だ。惨たらしく殺してやる」
メグミは相当オカンムリな様子で額に血管が浮き出ており、右親指を立て、首を横に切るように動かす。
他の勇者の聖武器でもバカにされれば、プライドが傷付き、まるで自分の物ように怒りが湧き出て来る。
『ふんっ、殺ってみろや。お前を殺して、そいつも貰うぜぇ』
もう楽しく戦いたいとは思わない。こいつは…………コイツだけは確実に殺さないと気が済まない。
「なら、少し本気を出してみるか。久し振りに使うが、まぁいけるだろ。闇の聖槍ゲイ・ボルグ」
『何とも禍々しいオーラ、ワイより魔王種ぽい』
属性系の中でも異質と称されるのが闇属性。光属性と対に数えられるが、光属性とは別の意味で使い手が少ない属性である。
「行くぞぉぉぉぉぉ、おぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ奥義【絶対必中の魔槍】」
禍々しい黒く染まった槍を、槍投げ選手も顔真っ青になる程の速度で投擲した。
『タダ投げただけ……………いや、違うがや!追って来てる!』
弧を描いていなかった。物理法則を無視した動きで、オーガ・ロードに向けて魔槍ゲイ・ボルグが迫って来ていた。




