SS1-67、帝国の三勇者~魔王種~
「ひぃふぅみぃ…………うん、数えられない位いる」
軽く周囲を探知したみたが、途中から数えるのを止めた。あまりにも多過ぎる。
態と、この広場に自分らのボスを目撃させ、ここへおびき出したというところだろう。
『ぶっひひひ、あの方の言う通りにおびき出せたぶひよ』
『相変わらず下品な鳴き声ね』
2つの影が、こちらへ近付いて来る。見ただけで分かる。この2人が、任務を受ける際に話に出て来たオークキングとトレントクイーン、両方共Sランク以上の化け物だ。
オークキングは以外にと、体脂肪が満載で太ってると思いきや筋肉モリモリで顔と身体が合ってない。
因みにトレントクイーンは、もっと巨大な大樹の魔物と思いきや人間サイズで貴族のご令嬢ように優雅な容姿であり、衣服も木々の皮で再現している。ただし、元々木々の魔物だからか、人間からしたら有り得ない肌色をしている。
『御機嫌よう。勇者の皆々様』
トレントクイーンが話し掛けて来る。知能を持つ魔物でもここまで流暢に話せるものではない。
「何が目的なの?」
『1回、勇者と呼ばれる者とお話がしたかっただけよ』
魔物が、お話だと!そんなこと、天地がひっくり返っても有り得ない。魔物が言葉を話す時、それは相手を油断させる時だけだと相場が決まってる。
意思疎通が出来る者程に倒し難い事はない。一瞬の躊躇いが大きな隙となる。
『後、勘違いしてるようだけど、ワタクシはトレントクイーンではないのよ?』
「トレントクイーンじゃない?」
『トレントクイーンから進化して……………そうねぇ、トレント・ロードとでも呼んで貰おうかしら』
なにっ!
トレントクイーンだと思ってた魔物からの暴露に目が点となるリンカ達。
それもそのはず、名前にロードが付く魔物は魔王種と呼ばれる各々の魔物の頂点に立つ個体だ。
それにこの世で同じロードは存在出来ず、ユニークな魔物となる。
『オデもオークキングじゃないぶひよ』
「まさか!」
『オーク・ロードぶひよ』
魔王種が2匹。かつて、カズトが率いる勇者パーティが倒した魔王は、魔族の王でまた別だが、それとも引けを取らない程に威圧感がある。
『ワタクシ2人だけではなくてよ。さぁ出てきなさいな』
トレント・ロードの合図で、ぞろぞろと数人の人影が前へと、トレント・ロードとオーク・ロードの隣へと歩み進んで来た。
そのどれもが、とてつもない威圧感を放っており目の前にいるだけでも冷や汗が額から頬に伝い落ちる感触がある。
『紹介致しますわ』
右からウルフ・ロード
『こいつらが勇者というやつか。早く手合わせをしたい』
オーガ・ロード
『早くワイと斬り合いしようや』
ゴブリン・ロード
『きっひひひひ、女がいる。早く犯してぇなぁ』
リザード・ロード
『種族なんて皆殺しだ』
以上が、ここにいる魔王種全員となる。
魔王種が6匹、ここで引き止めなければ恐らく国の何個かは滅亡する。もし、この任務をランク付けするならSSSは下らない。
「こっちも6人、あっちも6匹…………1人1匹?」
魔王種だけなら計算上そうなる。
だが、それ以外にも下級の魔物が羽虫の如く、ぞろぞろといる訳で、それらを片付けながら魔王種を相手するのは骨が折れる。
『ワタクシから1つ提案がございましてよ』
「提案?」
魔物が交渉を持ちかけるなんて意味不明だ。まして、戦力数に関して圧倒的にあちら側が上だ。
「魔物が、オレらと交渉だと?」
「あの方とやらと関係してるのかしら?」
オーク・ロードが、ポロとこぼしたあの方が誰か気になる。恐らく、魔王種をここに集め勇者を一網打尽を企んだ人物が裏で糸を引いているに違いない。
『……………何のことかしら』
明らかに動揺してる。何か悪い事したみたいで罪悪感が半端ないない。
「悪い事、聞いたわね」
『だから、何のことだと申し上げてるわよね?いい加減にしないと、この圧倒的な暴力の数で押し潰しても構いませんことよ』
「ごめんなさい」
今1番裂けたい事は、数え切れない魔物と戦う事。それこそトレント・ロードが言ったように数の暴力として押し寄せて来る。
だから、選択肢など最初から無かったようなもの。敵の交渉に乗るしか無かった。神樹の森を守るために。




