SS1-66、帝国の三勇者~神樹の魔物暴走~
☆翌日☆
「これは和食?!」
「懐かしい」
「良い味噌の香り」
「先輩、良い仕事してるわぁ」
久し振りに和食を目の前にすると、ホッコリと田舎で炬燵にでも入ってるかのような感覚に陥る4人の勇者。
そんな様子にジャックとアクアは首を傾げるが、野菜のぬか漬けを1切れ食べた瞬間に同じ気持ちが芽生えた。
「これが野菜だと!」
「肉より美味しい?!」
ぬか漬けの程よい塩気が、白いご飯と良く合うと本能から理解出来る。
1回食べて見たら分かる。ぬか漬け→ご飯→ぬか漬け→ご飯→たまに味噌汁の無限ループが完成する。
この中に入ったら中々抜け出せない。気が付いた頃には、ご飯が空となっているという現象が起こる。
「ジャックとアクアも和食の魅力に取り憑かれちゃった」
「先輩の料理だからこそだと思うわ。他の市販品だと、絶対にこうはならないわよ」
「食べ過ぎちゃったかしら」
普段は、少食なココアが今回ばかりはご飯を6杯お代わりしてる。
それでも少ない方で、他の面々は軽く見積もっても10杯はお代わりをしており、1番小柄なリンカが1番食べている。
「リンカ、良く入るわね」
「うん?動けば、こんなのへっちゃら」
それにしても凄いのはカズトかもしれない。みんなの食事量を計算して、ご飯のおひつを用意してあり、みんなが食べ終わる頃には、もう空っぽでもう食べれないと、その場でへたれこんでる。
「もう行くか?」
「うん、さっさと片付けちゃおう」
「アシュリーさん、ご案内お願い出来るかしら」
「いいよ」
ここからは勇者らしく、ビシッと衣服を整え、そして強者にしか勇者だと判別出来る程度にオーラを微量身から溢れさせる。
これを感知出来ないと、みんな雑魚ということになる。まぁみんながみんなやってる訳ではない。
むしろ、リンカとメグミが強者と戦いがために編み出した強者探索法である。
「ここが最後オークキングとトレントクイーンの目撃情報があった場所よ」
門から出て勇者の足で10分、通常な冒険者の足で1時間ほどの森の奥地。
そこは周囲は木々に囲われてはいるが、夜営に最適な広場である。360度見渡せ何処から敵が来ても分かるような場所だ。
「これは罠だね」
「罠?リンカ、それはどういう」
アシュリーの言葉が最後まで続かなかった。何故なら、アシュリーの背後から矢が飛んで来て、それをリンカが寸止めで掴んだのである。
後、数mmで鏃がアシュリーの背中にブスリと刺さっていた。
「アシュ姉、危なかったね」
「あ、ありがとう。リンカ」
「そこかぁ。闇の聖槍ゲイ・ボルク奥義【絶対必中の魔槍】」
『ギャウ』
メグミが背後の茂みに向かって槍投げをした。見事命中したようで、不快な鳴き声と共にゲイ・ボルグが、くるくると回転しながら戻って来た。
「こいつはオークレンジャー、オークの上位種で弓や罠の設置や解除を得意としてるオーク」
「他にもいる。囲まれてる」
「確かにプンプンと臭ってくるぜ」
リンカに指摘されるまで全員気付かなかった。いや、それは無理もない。
魔物なのに【隠密】を器用に使っているからだ。
「ジャック」
「おうよ、リンカの姉御」
木陰から木のツルが矢の如く迫って来たのを叩き落とした。鉄の棒でも思わせる程に硬く、まるで矢のようであった。
「ちょっと待って!オークやトレントだけではないわ」
確認出来るだけで、オーク・トレント・ゴブリン・オーガ・ワーウルフ・リザードマンの上位種が見受けられる。
2種類だけでもありえないのに、これだけの種類の魔物が徒党を組むなど前代未聞だ。
「これは魔物暴走?」
魔物暴走なら複数の魔物が一斉に動き出す事に説明は付くが、だがしかし…………。
「いいえ、それなら神樹の外で起きてるわ」
そう、魔物暴走はダンジョンの容量がオーバーし外へ溢れ出す現象。
ここは神樹の森の中、つまりダンジョンの中だということ。それに魔物暴走の魔物達は自我を失っている。
「まるで知性を持ってるかのように我々の様子を伺ってるわ」
知性を持つ魔物が出現する条件は2つある。1つ目は、単独ではなく群れてる事。
2つ目は、バックに強力なボスがいる。それもSランク以上の強力な魔物が。




