246食目、業務用アイス再び
ニブル王が寿司を平らげた後に王妃と王女であるフゥ、王子であるフルーイその妃であるアテナが食べる。これは王自ら毒味役として王妃と自分の子供を護るため、建国からの習わしである。
最初はニブル王と同じく警戒しまくっていたが、1回口に含むと頬が蕩けたような表情となり手が止まらなくなっていた。
「余と同じく気に入ったようだな。この調子で頼むぞ」
「お任せ下さいませ」
これで取り敢えずは一安心だ。下手したら不敬になりえないところであった。ただまぁ肉と魚に関しては食材の楽園で採取されたものしか受け付けられないだろう。
それ以外の場所で採取された肉と魚は、今まで通りに食べれないはずだ。確かめる術がないので、何ともいえないが。
「お兄様、美味しいです」
「あぁ魚が、こんなに美味しいとは初めての感覚だ」
「それは神樹の中で採れたものですので食べれるのだと思います。けして、他の場所で採れたものを口にせぬようお気をつけを」
1回検証出来れば良いのだが、人体実験をする訳にもいくまい。
「それは分かっておる。だが、【異世界料理の実】より美味しいとは、やはり勇者の力か元々の力なのか分からんが、こうも美味しいと試してみたいのぉ」
「「それはダメです」」
王妃とフゥからダメ出しがきた。まぁ料理を提供してる俺からしてもそれはダメだ。昔の日本でフグを食べる様なものだ。
何処に毒があるのか分からずに食し、不幸にも亡くなられた武士など数え切れないくらいいると聞いた事がある。
それでも美味だからと食べる人が後を絶たなかった。それ故に長い間、フグを食べる事を禁じた歴史がある。
「殿下2人の言う通りでございます。それだけはお止め下さい」
「そうか、勇者殿が言うなら従おう」
ふぅ良かった。本当に止めてくれ。心臓に悪い。
異世界には食中毒という概念はないが、1回当たれば助かる見込みはゼロに近い。いくら治癒魔法やポーションがあれど、原因になってる物質が分からなければ効力は低い。
それ故に魔法や魔物による異常状態よりも食べ物由来の食中毒の方が、まだ致死性が高い。
「翌日の朝食もお任せくださいませ」
「うむ、期待しておるぞ」
「"剣の勇者"様、美味しかったです」
「"剣の勇者"殿、堪能させて頂いた」
「フゥ王女殿下、フルーイ殿下有り難き幸せ」
膝を付き頭を垂れる。その際に、こっそりとフルーイ殿下から耳打ちで、『後で部屋に』と招待された。
俺は、リンカ達が泊まる部屋に書き置きと俺が作った寿司
が入ったアイテムバックを置いて、フルーイ殿下がいる部屋に颯爽と向かった。
コンコン
『入ってくれ』
「失礼致します」
「良く来てくれた」
「フルーイ殿下の頼みであれば」
「フルーイで構わない。ここには父上はいないのだから」
「分かった。フルーイ」
王族で唯一の男友達として接してくれる。そんな気持ちに俺は応えてやりたいと思ってる。
「それで頼みなのだが……………また…………食べて見たいのだ」
「何をでしょう?」
「その……………アイスを……………また頂けないでしょうか?その……………あまりにの美味しさに……………感動したのだ」
魔法大国マーリンで買い与えた業務用の箱に入ったアイスを、全員相当気に入っていたからな。その中にはフルーイ殿下も入っている。
「それで、ぶっしつけな事で申し訳ないのだが妹の―――――フゥの分もお願い出来ないだろうか?」
「えぇよろしいですよ」
けして俺は、ロリコンでないがフゥの笑顔は、まるで天使のようだからな。その買って上げて喜んだ姿をみたい気持ちは、俺にも妹がいるから、ものすごく分かる。
だが、リンカの場合、喜んでくれるのは嬉しいが、その嬉しさの余りに抱き着くのは止めて欲しいものだ。
周囲の視線に恥ずかしいとかじゃない。物理的に腕力が強くて、俺の背骨がボキバキと折れそうになるのだ。
「何味が良い?」
「そうだな。チョコ味を頼む。フゥには、イチゴ味を。これが代金だ」
「毎度あり」
【異世界通販】から頼まれた業務用アイス、チョコ味とイチゴ味をカートに入れ注文ボタンを押すと何もない空間からゴトッと音を立てて出現した。




