SS1-60、帝国の三勇者~フォルン~
「いやー、済まない。ここのギルドでは森精族以外の冒険者は珍しいから奇異な視線に晒されしまった。申し訳ない」
突然の謝罪に唖然するリンカ達。その中で口を開いたのは、ココアであった。
「頭を挙げて下さい。私達は何も思ってません」
「そうか…………勇者というのは器が大きいのだな。あっ、済まない。まだ自己紹介がまだだったな。我は、フリーヘイムの冒険者ギルドを任されておるフォルンだ。勇者様達とお会い出来て光栄だと思う」
ギルドを任されているという事は、ギルドマスターという事になる。ここでは一番偉いはずなのだが、何処か砕けた感じで拍子抜けと感じてしまう。
「国王陛下から聞いている。依頼を受けてくれるそうだな」
「えぇ、どんな依頼かは聞いてはいませんけど」
ただ単にギルドの依頼を受けてくらないかと頼まれただけだ。詳しい内容は聞いてない。
「なーに難しい事ではない。むしろ、冒険者なら良くある依頼だ。魔物の討伐だ」
「魔物の討伐?」
国王直々の依頼だから、どんな困難な依頼かと思いきや簡単にやれそうな気がした自分がいました。
「ただし、異常が発生していてな。その調査もお願いしたい」
「どんな異常ですか?」
交渉や説明を聞く役割はココアが担当。リンカやメグミがやるとややこしくなる。
「あぁ植物型と動物型が徒党を組んでるような動きをしていてな。今までこんな事は起こらなかった」
植物型の魔物は、文字通り植物が魔物化したもので、トレントや食人植物などが該当する。動物型は言わずもがな。
「厄介な事にオークキングやトレントクイーンなどの最上位種の目撃情報も挙がってきてる。唯一の救いは、国の中には入って来れないって事くらいだ」
どちらもSランクの魔物で、下位の同族種に命令出来、群れを組んでるから余計に厄介だ。それらが更に徒党を組むなど本来なら悪夢を見てるようで他ならない。
「楽しそう」
「うっひひひひ、久し振りに暴れるぜ」
「二人共静かに。もちろん受けさせて頂きます」
「あ、あぁ、助かる。国王陛下から色をつけるようにとも仰せ付かっている」
ギルドマスターの執務室から出ると、またガヤガヤザワザワと森精族の冒険者達が騒いでいた。
どうやら人間らの冒険者が、いきなりギルドマスターへ呼ばれた事が、どうしても信じられないでいるらしい。
「おい、あのガキンチョは何なんだ」
「オレが知るかよ」
「チラッと見えたがよ。王剣が見えたぜ」
1人だけではなく、複数人が目撃してたらしく更にざわめきが加速した。何者なんだと推測をするが答えは出ないところに1人の森精族が、リンカ達が出て来たところを叫んだ。
「おい、出て来たぞ」
その声により一斉にこちらへ視線が向く。もし、ちょっかい掛けられたら実力で大人しくさせるだけだ。
「こんなガキが勇者だと?」
「なに?文句あるの?」
リンカ達の目の前へ進み出た1人の森精族の男。他の森精族と同じく顔は整っておりイケメンであるが、ただ1つ違っているのが筋肉質でムキムキな体型だ。
他の森精族が痩せ型に対して、こいつだけがムキムキで目立ってる。
「アシュリーみたいに強いのなら文句はないさ。ただ、お前みたいなチビが本当に強いのか疑問なだけさ」
「なら、やってみる?」
バンっ
「ハァハァ、ちょっと待って」
「アシュリー!」
「アシュ姉!」
扉を蹴り破る勢いで入って来たのは、神樹の森フリーヘイム所属してる勇者であり弓の勇者であるアシュリー・ミラー、その人である。
「ジュラン、あなた何してるの?」
「いや、オレはだな。こいつらが、本当に勇者足り得るか確かめようと」
「ワタシは言ったわよね?カズト先輩の妹さんであって勇者だと?ワタシの言葉が信じられない?」
「いや、そんな事は」
「ごめんね、こいつはワタシのパーティメンバーなの。人間の勇者に会わせろとうるさくて」
やはりアシュ姉は変わらない。普段は怒らないけど、怒ると怖いところも変わらない。
「アシュ姉、それ位にしてあげて」
「リンカちゃん、このバカにはもっと言い聞かせないと」
「それで収めても周囲の奴らが納得しないと思う。だから、殺ろうよ」
リンカの見た目からでは想像出来ない程の殺気にアシュリーとジュランは言葉が出来なかった。




