SS1-59、帝国の三勇者~森精族の冒険者ギルド~
朝・昼・晩、兄さんの料理を堪能してたら3日なんてあっという間だった。神樹の森への入口に到着し、兄さんのアイテムボックスへキャンピングカーを仕舞った。
入口から見ても神樹の森の広さが底が知れない。兄さんが自ら森精族の王から授かったという森の証というアイテムにより迷わないという。
意を決して神樹の森へ足を踏み入れた瞬間、冒険者なら慣れ親しんだ感覚に身体が支配される。
これは、ダンジョンに入った感覚。ダンジョンに値踏みされてるような、魔物に味見されてるような、そんな感覚が本能的に脳裏へと伝わってくる。
だけど、その感覚はほんの一瞬。数分で神樹の森フリーヘイムの門らしき場所に到着してしまったのだから。衛兵らしき男2人が立っている。初めて見たけど、やはり森精族って誰彼構わずに美男美女で、もう1つの見た目的特徴である耳も尖っている。
どうしようかと立っていると衛兵である森精族が、こちらに気付き既にリンカ達の事は聞いているようで、簡単に国内を説明・案内したくれた。
予想以上に神樹は巨大で、名前に神を冠するだけはある大きさだ。それに、そのもの自体が城という2度の驚きが待っていた。
城の入口に着いたら早速、森精族の王であるフレイ・ニブル王へ謁見をするという。
兄さんは1回、魔法大国マーリンで会っているから平気そうだが、リンカ達は粗相をやらないか緊張してしまっている。
「良く来てくれた、剣の勇者殿」
「お久しぶりです。ニブル王陛下」
「顔を上げておくれ。そちと余の仲ではないか」
「はっ!」
す、すごいっ!森精族の王が親しげに話し掛けて来てる。本来なら目下の者に親しげに話す事など許される事ではない。
リンカ達は、内心ドキドキしながらも兄さんが紹介してくれた。紹介が終わった後、王自ら任務を言い渡された。冒険者ギルドの手が足りず、任務が貯まる一方のようだ。
王の任務…………つまり、王命という扱いになり報酬が上乗せになるらしい。ただし、兄さんだけは他の任務に就くという。これも王命なためNOとは言えない。
「あーあっ、兄さんとは別々かぁ」
仕方ないとはいえ残念である。外から来たリンカ達で本来の神樹の中へ入れるのは兄さんだけなのだから。
「リンカ、そう落ち込むな。これから鬱憤を晴らすために暴れるんだからよ」
「暴れないで下さい。王命なのですよ」
「俺、王命を受けるなんて初めてでさ」
「オウメイ?それ食えるのか?」
話してる内に冒険者ギルドに着いた。扉を開けた瞬間に注目の的にされる。
それはそうだ。荒くれ者が多い冒険者に対して、ここは鎖国に近いフリーヘイム。外から冒険者が来るなんて稀で珍しい。
「ここが森精族のギルド」
「何か注目されってるけど?」
「珍しいのでしょう。神樹の森で、ここに辿り着ける者は普通はいません」
それはそうと、早速任務を受けるために受け付けを探す。この中にいる森精族の中で、優雅で可憐な目を惹く娘を見つけた。
きっと受付嬢に違いない。
「いらっしゃいませ」
「任務を受けたい。これを見せるように言われた」
城から出る際に兄さんと同じく森の証と小刀サイズの剣を渡してくれた。冒険者ギルドの受付嬢に見せれば良いと言われて見せたが、受付嬢の顔色が悪くなっているように見える。
「し、少々お待ちを!」
誰でも見ても分かるように焦った様子で立ち上がり、奥に引っ込んでしまった。予想以上に凄い効力だったようだ。
「ハァハァ、この人達です」
「こいつらが王剣を?」
何か偉そうな森精族の男性が出て来た。衣服も威厳を保つように貴族らしき出で立ちを醸し出しているようだ。
そして、他の森精族がイケメンやイケジョなら、目の前の男は、超イケメンというべき光を放っている。
「失礼ながらギルドカードを拝見しても?」
「んっ、これ」
リンカ1人だけギルドカードを偉そうな森精族に見せる。リンカのカードを見るやいなや驚愕な表情を浮かべ、カードを返して来た。
「君達、ちょっと部屋に来て話を聞かせて欲しい」
偉そう森精族の背後を着いて行くと、豪華絢爛という言葉が似合う部屋へと案内された。
「ここは僕の執務室、好きな所に座っても良いよ」
うわぁー、ソファがフカフカだ。




