242食目、魚の実を焼く
先ず、その食材の味を知るにはシンプルに焼く事が一番。身の質や脂ののり具合など色んな情報が分かる。
先程の肉みたいに鮭から脂が滴り落ちる。良い具合に焼けてきた。両面に焼色がついてきたら皿に取り出して味見だ。
「脂が乗ってて美味い」
口の中で解れ鮭特有な匂いと脂が拡がり日本で味わった事のある味だ。まさしく鮭の味に違いない。
「これは鮭という魚だ。試しにどうだ」
塩味に焼いた鮭を一欠片皿に取り分け渡した。
「……………」
「……………」
森精族からしたらグロテスクに見えるだろう。肉の方は、まだステーキ肉として加工済の状態で血も全然出なかった。
だが、地面から生えてる魚は、生きてる状態のままで内蔵を取り除く必要がある。まぁアニサキス等の寄生虫はいないのが救いか。
「肉が食えたから多分いけるぞ」
「……………私は食べるぞ」
「ギュー!」
「死なないさ」
パクっ…………モグモグ…………ゴクン
「ど、どうだ?美味いか?」
「うっ…………うまぁぁぁぁい!肉も美味かったが、私はこちらの方が舌に合う」
「どれどれ」
ドンもギューの様子に好奇心を持ち、鮭を口に放り込み咀嚼する。ゴクンと飲み込んだ瞬間、ドンが天を仰いだ。頬が落ちるとは正にこのことだろう。誰にも見せられない程にだらし無い顔となっている。
「二人共どうだ?」
「いやはや私の世界が変わる勢いです」
「肉と魚がこんなに美味しいとは」
喜んで貰えてなによりだ。
「だけど、本来の肉と魚は止めて置いた方良いかもな。あくまで、ここに生えてるもの限定でなら食べれるって事かもな」
例えば、人間に効く毒でも鳥に効かないというのもざらにある。それと同じように種族として同じ枠組みにいながら、食文化に違いが出てくる。
「さてと、また案内してくれるか?」
「「喜んで」」
ギューとドンに案内されてから、どれくらい経っただろうか?本当に予想以上に広大で、いくら先に進んでも端が見えて来ない。
一般的な人々や冒険者ならとっくに力尽きて、この大地の栄養になっているだろ。
「今回の収穫はこんなものか」
歩き回って発見した食材は次の通りである。
魚介数種・肉数種・小麦粉・果物数種・野菜数種・サトウキビである。
この中で大発見なのはサトウキビでなかろうか?異世界に来てから今までサトウキビを見た事も聞いた事もなかった。
砂糖は希少で、その作り方はグフィーラ王国にて国家機密になる程に極秘扱いで、砂糖を扱う商人も国が認めた者ではならない。もし、勝手に取り扱えば死刑も免れない程に厳しい。
だが、国で大体的に生産をすれば話は別だ。
「これが砂糖になるのですか?」
「にわかに信じ難い」
「俺の世界の砂糖だ。異世界の砂糖とは違うかもな」
「それでも大発見です。ほぼグフィーラ王国が独占してる状態でして」
「我々の国でも作れるとなると、財貨が潤います」
さぁ城へ戻って砂糖作りと料理をしなくては。砂糖作りに関しては知識はあっても初めてだ。むふふふ、あぁ楽しみだ。
「ただいま帰りました」
「おぉ帰ったか。そして、どうだった?」
「えぇ広大ですので、異変はまだ見つかりません」
「そうか」
そう簡単に見つかったら苦労はしない。どんな異変なのか不明なのに探せる確率は、砂漠に落とした米粒を探すくらいには難易度は高い。
「ですが、良い食材ばかりでして腕によりを掛けて作らせて頂きます」
「楽しみにしておる。して、フリーヘイムの名産が見つかったとギューとドンが申してたが、教えてくれなんだ」
「候補の1つでございます。出来上がりの楽しみという事で」
きっと驚くに違いない。サトウキビから作られる砂糖の1つであり最も簡単に作れる黒糖。
ただし、重労働で忍耐が必要になってくる。サトウキビから糖液を絞り出すのだが、絞り機を回すのが重労働なのと絞り出した糖液を煮詰めるのも地味に熱くて疲労が蓄積してくる。
まぁ重労働と忍耐が必要と言ったが、ここは魔法大国マーリンと同じく魔法を主な力とする国だ。
魔法で動かしたり、鍋の監視を行っているに違いない。そうでなきゃ、あんな軟腕では直ぐに倒れてしまう。
「では、調理に掛かりたいと思います」
「うむ、楽しみにしておるぞ」
折角の米が手に入ったんだ。米を使った料理が良い。それにフリーヘイム産の米を食べてみたいのが第一の本音だ。




