241食目、ヘンテコな植物達
脱穀が終わった籾を袋に纏めて取り敢えずアイテムボックスに入れとく。後で籾殻を取るには、流石に人手が足らな過ぎる。
すり鉢で中身を潰さないようにするか水車でやるかの二択がある。前者は、人手が集まれば早い。後者は時間が掛かるが楽だ。
どちらにしろ、今はできない。
「よし、次に進むか」
次々に案内して貰い分かった事が3つある。1つ目は、ここには食用になる植物以外は生えてないこと。
2つ目は、魔物は愚か、動物や虫に至るまで一匹たりともいないこと。
3つ目は、地球や異世界以外の植物も生えてることだ。あれを植物と言うのか疑問だが。
「肉や魚が木から実ってる」
肉はステーキ状で枝から生えており、魚は今獲って来たのでは?と思う程の新鮮さで一匹一匹地面からニョキニョキとツクシのように生えてる。
「これは植物なのか?」
「食材の楽園に生えてる以上植物なのは間違いないはずなのですが……………」
「我々も見る度に困惑しています」
うん、とってもその気持ち良く分かる。もし地球上で見掛けたら何度見するだろうな。こんなの見付けたら絶対に全世界中へニュースが流れる大発見だ。
「食べた事あるのか?」
「いえ、我々は火が使えないもので」
森精族全域で料理が出来ないという呪いに近いデバフが種族レベルで掛けられてるから無理もない。
「そもそも植物以外の食べ物だと不快に感じるので」
「挑戦した若い森精族もいますが吐き出す始末でして」
地球でも日本人は生海苔を食べれるのに他の外国人が食べると消化不良を起こしてしまうのと同じ事か。
これは日本人には生海苔を消化出来る酵素を持っているからだと言われている。千年以上食べて来た中でDNAレベルで進化したとされる。
そもそも種族と一括りにしているが、生物学的には恐らく全然違う生物と言っても過言でないのだから仕方ないと言える。
だけど、一見見た目は植物とは違うが生え方が植物のそれである。ここにある物ならば、森精族達も案外平気かもしれない。
「焼いて見ますか?」
「いや、でも…………」
「ここにある以上、植物だと思うが…………」
今まで食べて来なかった物をいきなり食べろと言われても俺でさえ、躊躇する。
「まぁ無理にとは言いませんが、私はどんな物か味見しますので焼きます」
ブチッと生ってるステーキ肉を採取した。感触は肉そのもの、そのまま七輪の網に乗せ塩コショウを振り掛ける。
肉が焼ける匂いと音だけで食欲が湧いて来る。ジュワーと肉汁が炭の上に落ち、肉汁が焼き焦げる匂いもまた堪らない。
「いただきます」
フォークとナイフで切り分け口の中に放り込む。肉汁が溢れ溶けた。噛む感触なんてほぼ無かった。溶けたという表現しか思いつかない。
それに…………うっ…………美味い。これはA5ランクのサーロインステーキと比較しても何ら変わらない。
「ど、どうなのですか?」
「…………美味しいのですか?」
俺がサーロインステーキを食べてる姿を見ていた2人が今にでも食べたさそうに口が少し開きヨダレが垂れそうだ。
「食べて見るか?2人の分も焼いたからな」
皿に取り分け、2人に分け与える。もう我慢出来ない2人は、ガツガツとむさぼり食い数秒で皿を空にした。
「こんなに美味しいものだとは」
「不快感や吐き気もしない」
「体調は大丈夫か?」
植物の毒は時間差で表情が出るものが多い。ここには、そんな植物はないが、アレルギーは別だ。アレルギーも重篤になってくると命に関わる。
「はい、大丈夫なようです」
「むしろ、力が漲ってるような」
やはり、こんな見た目でも植物と認識してるのだろう。世の中には摩訶不思議な植物が存在するものだ。
「次は魚を試してみるか」
近くに生えてるのは、俺の目が確かなら鮭と鯵に見える。尻尾が根本のようで、ボキッと尻尾を掴み圧し折る。
先ずは鮭ぽい植物?魚?を試してみよう。包丁を腹に入れ、腹開きに内蔵と赤いイクラぽい卵を取り出す。
「本当に植物なのか?内蔵と卵が出て来た」
植物にしちゃ生臭い。ギューとドンの2人も鮭の生臭さに顔を顰めっ面になってる。魚を食べない彼らにとってはグロテスクに映るだろ。
近くに川が流れているので、そこで血合いと内蔵を洗い流す。シンプルで塩を少々振って焼いて見る事にした。




