240食目、弓と拳が再開を果たす
「兄さん遅かったですね」
「陛下から何かお話でも?」
「あぁ、お前らと別行動になる」
ニブル王陛下からの依頼を話す。リンカも一緒にと駄々を捏ねたが、残念ながら神樹に認められたのは俺だけだ。因みにフリーヘイムの勇者であるアシュリーは森精族というのも起因してるらしく神樹に選ばれている。
「なら、美味しいご飯を要求する」
「それなら良いぞ」
「やったぁ」
リンカから無理難題を要求された事はないからそこは不安はない。まぁそのほとんどが俺の作った料理なのだから、餌付けされた子犬みたいなものだ。
「ハァハァ、カズト先輩が来てるのって本当ですか!」
「そんなに急いでどうした?アシュリー」
「本当に来てる!もう少し遅いと思ってました」
「まぁとある自動車使ったしな」
「意味分かりませんが、そこにいるのは…………もしかして、リンカちゃん」
「アシュ姉だ。お久しぶり」
アシュリーが俺の後輩という事もあり、リンカとも顔見知りだ。本当の姉妹のように遊んだりもしていた。
「もう来てたなら言ってよ」
「それは無理です」
地球なら兎も角、異世界での連絡手段といったら手紙かギルドや王城にしかない魔道具のどちらかだ。
「そっちは…………もしかして、ココアちゃん?」
「ココアは私ですが?」
「マジで!本物のココアちゃんだ」
「あっ!そういえば、アシュリーはココアのファンだっけか?」
そうえば、日本にいた頃に良くココアの曲を聞かされてた。そして、有無を言わせずライブや物販に良く並ばされたものだ。
武術で無敵なリンカもココアヲタクなアシュリーに迫られる時には、ぐったりと天を仰ぐ。
「わーっ、感激。ねぇねぇ、何時までいるの?」
「それはカズトの依頼次第だわね」
「俺も依頼が何時まで掛かるか分からん」
ハッキリ言って期限は設けられていない。3つ目の依頼が達成すれば、後は定期的に訪れ1つ目と2つ目の依頼を熟す事も可能だろう。
「私達は陛下に冒険者ギルドの依頼を手伝って欲しいと直々に頼まれたの」
「それなら一緒にやらない?」
「良いわね。リンカとメグミも良いかしら」
「オレは良いぜ」
「リンカも良いよ?」
「帰って来たら、俺の料理を食わせてやる」
「「「やったー」」」
今日一番の歓声が挙がった。カズトの料理の美味しさを知ってると、それが一番のご褒美になる。
「あっ、ワタシちょっと用事があるから少し遅れるわ」
ごめんねと手を合わせると出て行ってしまった。
「さてと、俺は神樹の中に入りますか」
ニブル王陛下から好きに入っても良いと許可は取ってある。手っ取り早く何の食材があるのか確認しなくてはならない。
リンカ達も颯爽と冒険者ギルドへと行ってしまい、1人寂しく食材の楽園の入口に立っていた。
「お待ちしておりました」
「我々は、国王陛下より剣の勇者殿を手伝うようにと仰せつかりました」
「えっ?そうなの?」
聞いてないよぉ。
「私がギューとお呼びください」
「僕はドンとお呼びを」
「あぁよろしく」
まぁこの広さを1人で探索をするってのも骨だし、助かるっちゃ助かる。
「分かってる範囲で案内してもらいます」
「我々、森精族でも全貌を把握出来ていないのです」
えっ!そこまで広いのか!
「先ずはここです。小麦に似てるのですが、とても固くどう食べて良いものか分からないのです」
これは!お米だ!本当に異世界の食物があるのか!今まで【異世界通販】やお米モドキな植物があったが、こちらでお米を見つけるとは思いもしなかった。
「これは、お米…………稲ですね」
「オコメ?」
「オコメとは何ですか?」
「俺達の世界の食べ物の1つです。まさかあるとは」
もう感激だ。異世界産のお米、一体どんな味がするのか気になる。お米モドキな植物は最悪であった。食べられない事は無かったが、日本人からしたらパサパサしており味も数段落ちる。
「さぁ刈りましょう」
鎌を手渡し、稲の刈り方を実演していく。いやぁ、懐かしい。こうやって稲刈をするのは小学生以来か。
刈った後の稲は日光によって乾燥させるのだが、刈った直後に乾燥している!
3人で1俵分を刈り取った。その刈り取った箇所からもう生えて稲穂を付けてる。流石はファンタジーという事か。日本で生える竹よりも早い。
「次は脱穀、稲穂から籾を切り離します」
アイテムボックスから昔ながらの脱穀機を取り出し、次から次へと籾が弾き飛ばされ山となっていく。本当に懐かしい。手動で回す脱穀機なんて、今の日本でも使わない。




