235食目、兄と妹の再会
どうにかしてドロシーを説得して、ニーニエをレストラン”カズト“で働く事を条件に住まわせる事になった。
まだまだカズトの嫁としては認められていない。そこは、こらからの頑張りに掛けると、ニーニエは息巻いている。
「そういえば、カズトが留守の間に妹ちゃんが来てるわよ」
「リンカが?」
「そうそうリンカちゃん、今はパーティーメンバーと一緒に依頼に行ってるわ」
そうか、リンカがここに来てるのか。会いたいような逃げたいような…………そんな複雑な気分だ。まぁ逃げても無駄なだと俺は知っている。
「ただいまぁぁぁ」
「噂をすれば何とやら」
何ともタイミングが良いのか悪いのか?足音が、ここへ一直線で近付いて来る。
バタン
「兄さんの声が聞こえた気がしました」
「やぁっ、リンカ」
「………!」
リンカに手を挙げると、一瞬驚いた顔から満面な笑みに変わり避ける間もなくリンカに抱き着かれた。
ミシミシ
「兄さん兄さん兄さん兄さん」
「リンカ、ギブギブ」
骨がミシミシと悲鳴を挙げてる。このままだと本当にシャレにならなくなる。
「あっ、ごめんなさい」
「いっててて………いや、俺もリンカに会えて嬉しいよ」
こうなる事が分かっていたから逃げたかった。だけど、どういう訳か?俺の居場所を探すのが上手い。的中率は9割は堅い。
「リンカ早いって」
「ハァハァ、リンカ何でそんなに急がなくても」
「ごめん、メグミ、ココア。でも、本物の兄さんに会えるかもと思ったら言っても立ってもいられなくて」
リンカの言葉に後から入って来た少女らの視線が俺に注がられる。
「うん?ココアって、あのアイドルの?」
「あっ、お兄さん私を推してた感じですか?」
「いや、名前だけな」
「そこはウソでも推してたと言うべきですよ」
「ちょっとココア!」
ガルルルと飼い主を守る忠犬みたいに威嚇するリンカ。友達が自分の兄と付き合っていたらイヤな想いするのと同じ。
「馬に蹴られる前に離れるわ」
「お前、態とだろ」
ココアとメグミの2人は、リンカがブラコンなのをご存知であり、たまに誂ってたりする。
ガルルル
「リンカ、大丈夫だから。君達が、リンカのパーティーメンバーなのか?」
「もう2人いますけど、そうですよ」
「リンカから聞いてるぜ。お兄さん、強いんだってな」
メグミが戦いたくてウズウズしている。まるで女狂戦士族みたいだ。
「メグミおすわり。兄さんは疲れてるんだから、今は休まなきゃ」
「オレは犬じゃねぇ」
メグミは、犬というよりトラの方がしっくり来る。リンカの方が犬と言った方がピッタリだ。今まさに尻尾を振ってるんじゃないかと思ってしまう。
「ねぇ、兄さん久し振りに添い寝しても良い?」
リンカの添い寝という言葉に、俺の嫁達は一斉にこちらへ振り向いた。
「子供じゃないんだからダメだ」
「ちぇー、残念。なら、一緒にお風呂」
「それもダメだ」
嫁達の視線が痛いんだ。まだ幼い時なら一緒に入った記憶はあるが、流石に大きくなってからはない。
だが、一緒に添い寝やお風呂に入ろうと画策してくるから厄介だ。俺にも恥じらいというものを持って欲しい。
「ミミ、俺の部屋に侵入防止の魔法を」
「もう既に掛けてある。リンカ以外にも入ろうとする輩がいるから」
ミミの発言にレイラとドロシーが、そっぽを向き口笛を吹いている。今までないと思ってたら、そういう訳か。
「リンカと兄さんは、実の妹。だから、もっと近くにいるべき」
「妹だからこそ、節度は保つべきだろ?」
「ぶぅっ、兄さんは頑固」
こっちに来てから少しは変わったかと思ったが、日本にいた頃のリンカのままだ。それは嬉しくもあり、怖い事でもある。そう、俺がリンカに襲われる可能性があるということ。
別に死ぬ訳ではないが、俺の貞操の危機かある。日本と違って、異世界は兄妹で結ばれても祝られる位で非難される事はない。近親姦なんて珍しくない。
でも、日本で育ったカズトらは近親姦には抵抗がある。
「この話は終わりだ。それよりもお腹空いてないかい?任務を終わらせて来たばかりだろ?」
ぐぅー
「に、兄さんお願い」
「ぷっ、了解した。何が食べたい」
「ふわトロオムライス」
「私もお願いします」
「オレも!」
「ボクも食べたい」
「妾も…………食べたいのじゃ」
「私達もお願いしようかしら」
「い、良いのでしょうか?」
「良いのよ。今夜は、ニーニエの歓迎会をしようと考えてたのだから」
ぽん
「カズト殿、儂は手伝うから元気をだせ」
「ミミも手伝う」
「獅子之助、ミミありがとう」
リンカら3人にだけ言った積りが、ほぼ全員ご所望となってしまった。




