SS12-9、盾の勇者=教祖〜総本山に帰宅〜
「みんな無事ね」
ここは魔神教会の総本山。誰も場所が分からない場所。特殊な転移しか行き来出来ない場所。故に、異世界にて一番安全な場所といえる。
「ここが魔神教会総本山、本当に実在するとは」
ここまで巨大な空間とは本の勇者もとい《魔術師》は思いもしなかったようだ。
「《魔術師》けして教祖様を裏切らない事ね」
「《隠者》何を言ってる?僕が裏切る訳ないだろ?それとも君は今ここで死にたいのか?」
「はいはい、ケンカしない。《世界》、《魔術師》を案内してちょうだい。《魔術師》は、案内して貰ったら私のところに来てちょうだいね。後は、解散。みんな、ゆっくりと休んでちょうだいね」
私は、解散を宣言した後に自分の部屋へと戻る。今日は、疲れた。当分は、部下に任せてゆっくりとしたい。そもそも私の性格から国1つなんか放置しても良かった。
ほぼ精神力を賭けて守る必要は無かった。あそこにカズトがいなかったら放置していた。
《世界》に任せて置けば、万事解決であった。だが、自弟であるカズトには1回顔を見せるべきかとピーンと感じた。
だって、その方が面白そうだったし、久々に顔を見たかったというのもある。
「ふぅ、寝る前にケンちゃんを出さなきゃ」
【鏡世界】からケンゴを出した。もう魔法大国マーリンにいた時よりは大人しくなってる。いや、どうやら正気を取り戻してるようだ。
「ケンちゃん、ごきげんよう」
「俺を殺せ」
出して開幕早々、殺せとは穏やかではない。まぁ捕まってる時点で、そう思っちゃうのはある意味仕方ない。
「ケンちゃん、物騒な事を言わないの」
「うるせぇ。みんなの迷惑になって、敵に回るのなら喜んで死ぬさ」
「うんうん、ケンちゃんの気持ちは良く分かった」
「なら」
「でも、断る。何で私がケンちゃんを殺さなきゃならないの?」
態々何で殺さなきゃならないのか首を傾げる。そんな面倒臭い事、戦う時以外は断固お断りだ。
自分は地球で大犯罪者だが、自分から他人を殺した事は指の数で事足りる。
むしろ、精神を崩壊さた方が楽しい。崩壊して自殺に追い込んだ事なら多々あるが、それは私が感知する事ではない。
「折角、私の部下にするのに殺しちゃ勿体無いでしょ?」
「お前の下に就く位なら死んだ方がマシだ」
「なら、死ねば?まぁ出来ないでしょうけど」
「くっ…………」
勇者は自害が出来ない。敵に拷問を受けたり、辛い修羅場に陥っても自殺出来ない。ある意味、呪いと揶揄される技術である【女神の抱擁】。
「さてと、早く済まそうか。他の子なら耐えられないけど、ケンちゃんなら耐えられるかもね」
「な、何をする気だ?!」
「これが何だか分かる?」
教祖カノンが懐から1枚のカードを取り出した。そこにはローマ数字の16と塔の絵に文字が書かれている。
「それは!まさか、それがお前のシリーズ系」
「そっ、これが私のシリーズ系のタロットカード。他のシリーズ系と違ってね。他の人にも分け与える事が出来るんだぁ」
「絶対服従の下僕を作るの間違いじゃないか?」
「そうとも言うわね」
力を分け与える引き換えに絶対服従を誓わせるって間違ってる?私は間違ってないと思ってる。
お金を与えて仕事をさせるのと、どう大差がある?私はないと思ってる。
「ここは魔神教会の総本山。逃げ場はないけど、断る?」
「くっ…………それを渡せ。受け入れる」
「はい、どうぞ」
塔のカードを受け取り、ケンゴは自分の身体に突き立てた。みるみる内に吸収され、数秒の内にのた打ち回る程の激痛と頭痛に襲われる。
「ギャァァァァァ」
「我慢してちょうだいね。カードによって身体が作り替えられてるのだから」
数分しない内に大人しくなった。深く息を吸いながら、ぐったりと寝そべってる。
「成功したようね」
「ハァハァ、生まれ変わった気分だぜ」
「どう?まだ私に逆らう気はあるかしら?」
意地悪な質問をする。カードを受け入れ適応した時点で絶対服従を誓ったも同然。
「アッハハハ、そんな訳ないですよ。一生、あなたに着いていきます」
「そう、これからよろしくね。No16《塔》」
これで、勇者の1人は完全に敵側に寝返ったのである。




